第15話
部屋に戻り、制服から私服に着替えていると、スマホの通知音が部屋中に響き渡った。通知を見ると、葛西からだった。
「(誠)今、電話できる」
「(直人)できるけど」
メッセージを送ると、すぐに電話がかかってきた。
「もしもし」
「どうしたの?」
「なんとなく電話してみた」
正直、要件がないなら電話をかけないで欲しかった。俺は、早くシャワーを浴びて寝たい。
「そういえば、今日の図書室での勉強会はどうだったの?」
「まあ、普通だったよ」
「普通ってなんだよ」
葛西は、どんな感想を求めていたのだろうか。
「昨日より、勉強が捗ったよ」
「それはよかった」
「それがどうしたの?」
「あんまり、行きたくなさような雰囲気だったからどうだったのかなーって」
そんなに行きたくないオーラが出ていたのか?
「なんで、そんな雰囲気だったの?」
多分、米村さんと一緒にいるところを見られたくないと思っていたからだろう。
「もし、他の人に一緒にいるところを見られたらどうしようかなーって考えてたから」
「そんなに見られたくないの?」
「もしかしたら、米村さんに迷惑かけるかもしれないから・・・」
「そうかな?」
葛西は、いつもの調子でそう言った。葛西は何もわかっていない。俺が米村さんと一緒に勉強をしていたら、側から見た人は変に思うだろう。そして、面白おかしくありもしない噂話を流されたりするだろう。俺のせいで米村さんに傷ついてもらいたいくない。
「変な噂を流されて、米村さんに傷ついてもらいたくないんだ」
「そういうことか」
葛西は、この言葉で全てを理解した様子だった。
「でも、米村さんは直人と一緒にいることを迷惑だとは思ってないと思うよ」
「なんでそう言えるの?」
「だって、迷惑だと思ってたら勉強会に誘ってくれないだろ?」
確かにそうかもしれない。俺は、少し難しく考え過ぎていたかもしれない。
「そうだね」
「まあ、そんなに難しく考えるなって」
葛西は、俺を慰めるように言葉をかけた。
「あとさ・・・」
「なんだよ?」
「英語のプリントってやった?」
「やったけど・・・どうした?」
「写真で送ってくれない?」
葛西は、いつも課題を自分でやらないで他人から答えを見せてもらっている。
「自分でやれよー」
「マジで無理だからお願い」
「わかったよ」
「マジでありがとう」
「ちゃんとやれよ」
葛西は、答えを送っても課題をやらないこともある。やらないことの方が多いかもしれない。
「やるに決まってるじゃん、平常点のために」
そんな話をしていたら、午後九時になるところだった。
「夜遅くなっていたから、そろそろ切るか?」
「そうだな」
「じゃあ、また明日な」
「おう、またな」
そう言って、葛西との電話を終わらせた。
電話を切った後、俺は米村さんにお弁当箱を返していないことに気がついた。俺は、慌てて外に出て米村さんの部屋のインターホンを押した。すると、寝巻き姿でボストン型のメガネをかけた米村さんが出てきた。
「どーしたー?」
「お弁当箱返すの忘れてた」
「あー、後で取りに行こうと思ってたのにー」
「今日も美味しかったです」
俺は、米村さんにお弁当箱を渡した。
「米村さんって、目悪いの?」
「そーだよー、いつもコンタクトだから気づかれないけど」
「そうなんだ」
普段見ない姿だから、俺はいつも以上に米村さんのことを見つめてしまった。
「そ、そんなに見ないでよ」
米村さんは、顔を手で隠しながらそう言った。
「普段と違うからつい・・・」
「そんなに変だった?」
「変じゃないよ、メガネ姿も似合ってるよ」
「あ、ありがとう」
米村さんは、少し照れた様子だった。すると、米村さんのポケットからスマホの通知音がなった。
「あ、菜々子からだ」
「じゃあ、部屋に戻ってる」
「うん、また明日ね」
そう言って、米村さんは部屋のドアを閉めた。俺も部屋に戻った。
部屋に戻り、リュックの中から英語の課題プリントを探した。そして、葛西に英語の課題プリントを写真で送った。このプリントは、実質、米村さんに答えを教えてもらったようなものだ、そんなことを思っていると、葛西からすぐにスタンプで返信が返ってきた。続けて、
「(誠)明日って暇?」
「(直人)暇だけど」
「(誠)一緒に勉強会やらない?」
本当に葛西は、勉強をするのだろうか。
「(直人)いいけど、ちゃんと勉強するのか?」
「(誠)やるに決まってるじゃん」
「(直人)どこでやるの?」
「(誠)放課後の空き教室でやろう」
学校でならちゃんと勉強をしそうだ。
「(直人)わかった」
「(誠)じゃあ、また明日」
今回は、葛西と勉強することが多そうだ。
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