SIDE B

 私は、鈴木くんと別れた後、家の中に入った。初めて私からデートに誘った。鈴木くんは、嫌じゃなかったかな。少し強引すぎたデートだったかもしれない。


 そんなことを考えていたら、菜々子から電話が来た。


「もしもし、麻里奈?」


「そうだけど、どうした?」


「どうしたじゃないよ、鍵無くしたって聞いて心配してたのになんで連絡返してくれないの?」


 そう言われて、菜々子のトーク画面を見るとメッセージが十件も溜まっていた。


「ごめん」


「まあ、無事で良かったよ」


 菜々子の安心したような声を聞いて心配をかけてしまって申し訳ないと思った。


「それで鍵は、見つかったの?」


「今日、不動産屋に行ってもらってきた」


「今日!?昨日は、どこで寝たの?」


「隣の部屋の人」


「マジ!?」


「そんな大きな声で言わないでよ」


「だって、知らない人と一夜を共にしたんでしょ?」


「知らない人っていうか、鈴木くんなんだけど・・・」


「鈴木って、同じクラスの鈴木直人?」


「そう」


「何かされた?」


 菜々子は、すぐに何かなかったか疑ってくる。まあ、世話焼きな菜々子だから仕方がない。


「何もされてないよー」


「あーし、心配なんだよね」


「なんでー?」


「だって麻里奈、あんなことがあったじゃん」


「まあね、でも鈴木くんはあの人とは違うから」


「そうかもしれないけど、気をつけてよ」


「うん、それでこのことは二人だけの秘密にしてね」


「わかった、じゃあまたね」


「バイバイ」


 菜々子からの電話を切り、私は明日の支度をした。本当に鈴木くんは、優しかったな。あんなに優しい人は、初めてかもしれない。




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