第4話

 俺は、学校一可愛いギャルとデートすることになった。まるで夢を見ているようだ。


「デートの前に一回家に帰ってもいい?」


「いいけどなんで?」


「昨日から着替えてないから着替えたい」


「わかった」


 俺と米村さんは、アパートに向かった。帰りは、なぜか行きよりも時の流れが早く感じた。信号が赤の時、米村さんはジャンパーを脱いだ。


「これありがとう」


「どういたしまして」


 俺は、ジャンパーを着た。そのジャンパーは、米村さんの温もりを感じた。さっき、「包まれてるみたい」と言われた意味が少しわかった。


 そんなことを思っていると、信号が青に変わり再び歩き始めた。


「鈴木くんって誰と仲良いの?」


「葛西とかかな」


「そーなんだ」


「米村さんはいつも松山さんと一緒にいるよね」


「菜々子とは中学から一緒だからね」


「そうなんだ」


 同じ中学の友達がいない俺は少し羨ましいと思った。まあ、中学の同級生のいない高校を選んだんだけど。


 たわいのない話をしていたら、アパートに着いた。


「じゃあ、着替えてくるね」


「わかった」


 米村さんは、部屋に入っていった。俺は、二〇一号室の前でスマホをいじって待っていた。SNSを見ていると、誠からメッセージが届いていた。


「米村さんとどうだった?」


「別に何もないけど」


「本当は?」


 こいつは、何を考えてるんだか。まあ、健全な男だったら当然の思考なのかもしれない。


「だから何もないって」


「そっかー。まあ、これからだな」


 葛西と女子について話すとこんなことばかりだ。まあ、一年五組の男子なんてこんな奴ばかりいる。だから、男女仲が悪いのだろう。そんなことを考えていると


「お待たせ」


 そう言って、米村さんが部屋から出てきた。十分くらいしか待ってないが、髪と化粧をしっかりと決めている。服装は、さっきより厚手のものになったが相変わらずズボンは短い。


「じゃあ、いこっか」


 そう言って、米村さんは足早にアパートの階段を降りていく。俺は、その後ろを慌ててついて行った。そういえば、デートってどこにいくのだろう。


「米村さん、どこにいくの?」


「ショッピングモールにいこ」


 電車に乗って、一つ隣の駅にあるショッピングモールに行くことになった。この頃、日曜日はバイトのシフトが入っているからショッピングモールなんて久しぶりだ。


 駅に着くと、俺と米村さんが通う私立東第一高校の制服を着ている人がいた。私立東第一高校は、この駅が最寄りの駅だ。だから、部活がある人は駅周辺にいる。もしかしたら、俺と米村さんが一緒にいるところを誰かに見られてるかもしれない。そう思うと、周りを気にしてしまう。


「チャージしてもいい?」

と聞いてきた


「いいよ」


 そう言うと、米村さんは券売機に行った。俺は、米村さんがチャージをしている間も同じ高校の人がいないかあたりを見渡していた。


「お待たせ」


「じゃあ行こうか」


 改札を通って、ホームに降りるとちょうど電車が止まっていた。俺と米村さんは、その電車に乗り込んだ。人があまりいなかったから座ることができた。


 電車の中でも、周りに同じ高校の人がいないか見渡していたら


「そんなにキョロキョロしてどうしたの?」

と聞いてきた。


「同じ高校の人に見られてないかなって」


「なんか見られたら困るの?」


「だって、米村さんと俺が一緒にいるって変じゃん」


 俺は、思っていることをストレートに米村さんに伝えた。同じクラスの人に見られていたら、次の日にはもう話が広がっているだろう。俺はいいが、米村さんに迷惑をかけることになる。


「そんなことないよ」


「なんで?」


「だって同じアパートの住人じゃん」


「確かに」


 なぜか、その言葉が腑に落ちた。


「だからそんなに難しく考えないでよ」


 そんなことを話していたら、あっという間に駅に着いた。電車から降りて、改札を出た。


 ショッピングモールは、駅から歩いて十分くらいのところにある。バスロータリーには、ショッピングモールまでいくシャトルバスが止まっていた。バスに乗れば、三分くらいで着く。


「バスに乗る?」


「そんなに距離ないから歩こうよ」


 結局、ショッピングモールまで歩いていくことになった。普段、運動をしない俺はもう足がクタクタだ。


「ショッピングモールで何するの?」


「冬物が欲しい」


「なるほど」


「あと、鈴木くんの服を選んであげる」


「自分で選んでるからいいよ」


「でもちょっと地味じゃない?」


 まあ、確かにイけてはないかもしれないけど特別変な服装というわけではないと思う。


「そうかな」


「とにかく選んであげる」


 米村さんに服を選んでもらうことになった。


 そんな話をしていたら、ショッピングモールに着いた。時計を見るとちょうど十二時になったくらいだった。朝食を食べていない俺は、少しお腹が空いている。


「十二時回ったからご飯食べない?」


「私も同じこと考えてた」


 俺と米村さんは、レストラン街にあるイタリアンレストランに入った。席に座り、俺と米村さんは、メニューを見つめた。


「鈴木くんはどれにする?」


「そうだなー、Aランチかな」


「じゃあ、Bランチにしよう」


 店員を呼んで、注文をした。料理を待っている間、


「そういえば、鈴木くんはどこでバイトしてるの?」

と聞いてきた。


「駅前のコンビニでやってる」


「そーなんだ、私もバイトしようかな」


「どんなバイトするの?」


「どんなバイトがいいと思う?」


 米村さんは、質問を質問で返してきた。


「接客業とか向いてるんじゃないかな」


「たとえば?」


「ファミレスとか」


「アリかも」


 そんな話をいていたら、料理が届いた。俺と米村さんは、一緒に食べ始めた。





 




 




 


  

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る