第15話

「もう覚悟は決めた。これで終わりだ。最後、本気出すぞ」


そう気合を入れていたのは二郎だ。


腰のけががある中でマラソン大会に出る強者だ。


体格にも恵まれ、今まであまり大きなけがはしてこなかったが、思いがけ


ずにしてしまった。


そこからも努力を重ね、大会当日に至る。


一列目からのスタート。


そこにいる全員が緊張感をもって並んでいる。


「よーい パンッ!!」


スタートの合図とともに全員走り出した。


彼の選手人生の終わりへのカウントダウンでもある。


スタートは混乱も少なくいい位置についている。


腰はかばっているが、遅いとは言えない。


彼は心のなかで考えていることがあった。


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コーチと会話をしているときのことを考えていた。


いつの会話かというと100メートルのタイムを計った後のことだ。


「お前は大事な時に調子が出ない」


「わかるんですか?」


「コーチングをしていればわかるよ。今回は参考記録ぴったりだったが本番でやらかさないようにな」


「そうですね。気を抜かずに頑張ります」


「心意気はいいな。俺もそのくらいの覚悟が欲しい」


「そんなっ!ありがとうございます」


「そんなお前ならけがをしてでも出てしまうことがあるだろう」


「は、はい」


「その時は俺は止めない。お前の頑張りを知っていればだれも止めることはないだろう。そこで約束してほしいことがある。

1.無理をしない 2.感謝しながら出る 3.全力を出す

この三つを守ってほしい、いいか?」


「わかりました」

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

コーチが言っていたことがドンピシャで起こっている。


コーチ、凄い。


そんなことを思い出していた二郎。


無理をしない程度にこのことを教えてくれたコーチに感謝しながら出せる


全力で走っている。


特に感謝は重んじている。


コーチはもちろん応援してくれるファン、そして兄の一浪にも感謝をす


る。


しかし、反省の意も込めて走っている。


ファンの人々へ心配をかけたり、スタートが遅れたりしてしまったから


だ。


様々な思いを胸に走り続ける。

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