第14話

「もうスポーツはできない」


その言葉にショックを受けていたのは二郎だ。


彼は一位を取ろうと決めたあの時から今日まで努力をしてきた。


その中での思いがけぬけが。


それもかなりの重症のようだから大変だ。


彼は医師に一言発した。


「わかりました。俺、スポーツ辞めます。ただ、一つだけお願いがあります。最後にマラソンの大会に出させてください。それに出られたらもう悔いはないです。どうでしょうか」


医師はため息をついて返事をした。


「わかった。一つ覚えておけ。俺は二つ返事で返したわけではない。無理をしない程度で頑張れ」


なんと医師からはOKの返事が来たのだ。


これには二郎も


「ありがとうございます」


としか返せなかった。


それだけ嬉しかったのだろう。


ちなみに医師に交渉しているときも死ぬほど腰が痛い。


そんな時でも一位を目指す気持ちは変わらないようだ。


流石スポーツ選手だ。


もしも自分ならすぐに諦めてしまうだろう。


メンタルの強さも世界で高い位置にいるだろう。


ここから腰をかばいながらのマラソンの練習が始まる。


そもそも腰が痛くても走れるのか疑問に思っていた医師だが彼なら気持ち


でどうにかできると思ったようだ。


なぜOKが出されたかわかっていない彼も理由がわかれば納得するかもし


れない。


だが、言わないのには理由がある。


それは言ってしまうと調子に乗って普通に運動してしまいそうだからだ。


努力を重ねた体を無駄にしないためにもその判断をした。


頑張って走り切ることを目標に努力をするようだ。


湿布とコルセットを酷使して走るのだが、かなり走りずらそうだ。


体の可動域が狭まり、思うような走りができない。


もちろん出るからには上位には入りたいと思っている。


そのための努力でもある。


今回はスタートはそれほど関係ない。


だが、並び順は先頭のようだ。


マラソン大会本番はまだ先。


それまでに少しでもマシになれるようにしたい。


コーチはもういらない。


一人でできるようになったから。


今までの悲しかった思い出に浸っていた。


それだけ覚悟は決めているようだ。


大会本番までこの覚悟を続かせられるのだろうか。

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