第8話
「お前とは一緒にいることができない」
二郎はそう言って断った。
「じゃあ何ならいいんだよ、何かさせてくれよ」
「だから、これから一生会うことがないようにしてくれ」
「そこまで言うならもういいよ、じゃあな。忘れないでくれよ。頑張れ」
「さようなら」
「さようなら」
こうして兄の一浪とは別れを告げた。
この会話は無駄ではない、のちに役に立つかもしれないと思ってはいた。
その後は一週間家にこもった。
ニートになってしまう危機感を感じた二郎は取材を受けることにした。
『特集 失踪からの復活へ 二宮二郎!』
世界選手権後山の奥に失踪していた二宮二郎が取材を受けてくれました。
その真相と今後について聞いてきました。
「Q.世界選手権二位おめでとうございm...」
「A.その話はいいです」
「Q.すみません。では早速、なぜ引っ越したのですか」
「A.それは気持ちの整理と切り替えをしようとしていました」
「Q.なぜ山の奥なのですか」
「A.それは...人から逃げてしまいました」
「Q.今後はスポーツは続けますか」
「A.はい」
「Q.次は何の競技に出ますか」
「A.出られそうな競技に出ます」
「Q.最後にファンの皆さんへ一言」
「A.本当に申し訳ありませんでした。これからはより良い結果を目指していきますので応援お願いします。いつ復帰するかは言いませんが、復帰したときはよろしくお願いします。」
二郎は世間に人から逃げたことをさらした。
おめでとうの言葉ももらわなかった。
復帰する予定はあるようだ。
彼はその帰り道雨に打たれていた。
世間の目も厳しくなっていて心の痛みをえぐることも増えていた。
そんなこともあって復帰はまだ先になりそうだ。
ただ、彼は誰にも見られていないところで筋力トレーニングをしていた。
ここまで来ると彼も巨漢の部類かもしれない。
それでいて世界二位の足の速さである。
彼はもともと努力をしない天才的なものだったのだが、今となっては努力
を惜しまない秀才になっていた。
速く彼の出る大会を見たい。
そう思う人はたくさんいる。
ファンのためにもそろそろ復帰してほしい。
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