第92話
ようやく、5本の槍を捕えることが出来た。
この槍は、私を貫通したお陰で5本ともが血塗れである。つまり私の魔力で覆われていることになるのだ。となれば…
私は植物に抑えられて身動きが取れなくなり、5本の束となった槍をまとめて掴む。
「この槍、悪いですが、いただきますね」
「何を言っている!その槍は我が一族以外の命令を受けないように出来ているのだ!これだから人上がりの無能は愚かなのだよ!」
アストロシティはまだ、石化が解けないらしく、再生には手間取っているようだ。だが減らず口は衰えていない。むしろ身体が動かないから口が動くのだろうか?
その間に私はこの槍を…頂く!1回奪ってしまうとネタがバレそうなので、5本まとめて頂くチャンスをうかがっていたのだ。
もちろん頂くとは私が使うという訳ではない。私の神力の足しにさせてもらう、ということだ。アストロシティはわかっていないようで安心した。
「さすがは神器!素晴らしい魔力です!」
この槍、手に取ると槍の素人である私でもよくわかった。これはかなりの名工によって丁寧に造られた逸品であることが…。
「手に取ったところでお前のものになどならぬ!だから早く、その汚い手を早くどけよ!私の神槍に薄汚い人上がりが触れるな!!」
「いやはや、このような立派な槍、2つとは作れないでしょうねぇ」
しかし、今、私を脅かしている存在である以上、いくら素晴らしい槍と言えど、情を加えるわけにもいかない。私だけでなく、恋人たちの命までかかっているとなれば尚更だ。
私が槍の神力を吸い取ることで、サイズがみるみる小さくなっていく。ここにきて、アストロシティもなにか異常事態が起きてることに気がついた。
「貴様!何をしているっ!その手を離せ!」
「この槍の魔力…いえ、神力を頂いています」
「ふざけるな!
槍に戻る命令を出そうとしたので、「
それより、槍の吸収を急ぐ。魔法を連打しながらでは吸収のスピードも落ちてしまうからな。
「素晴らしい!!!素晴らしい!!!この魔力!制御が難しいほどの魔力の奔流!」
恐らくこの槍が持つのは
神槍がついには爪楊枝ほどの大きさになったとき、私の神力は、
さすがは神槍としか言いようがない。
私が
だがそれでも、
「あーはっはっはっ!!!来ました!来ましたよ!この魔力!ふふふふ!!!くくくくく!!!!貴方と互角の神格になってしまったみたいです」
「な、な、な、我が家の家宝を…貴様…なんてことをしてくれたのだ!」
「仕方ないでしょう?私もあれだけの逸品をなくしてしまうことには心苦しさもありました。しかし私たちを害する武器である以上、こればっかりはしょうがないことです。ええ」
最後に残ったまち針みたいな神槍を、私は手で握りつぶした。針みたいな大きさでも、一般的なモンスターが内包する魔力の総量よりも多い。どれだけ濃厚な魔力なのかわかる。
「貴様ッッッッッ!か、返せいっ!?」
「うるさいですね」
軽く手を払うと、アストロシティの上半身が吹き飛んでしまう。同じ格になってしまうと魔法による強化が強すぎて、差が出てしまうようだ。
もちろん腐ってもアストロシティは神。上半身を失ったくらいでは死なないだろうが、大ダメージであることには変わりない。
もこもこと下半身の傷口が盛り上がり、あっという間に上半身が再生する。
「き、貴様!」
「お、再生するの早いですね」
頭を殴って吹き飛ばす。
アストロシティの頭が再生するのを見て、今度は右腕を吹き飛ばす。
再生させて、吹き飛ばす、再生させて、吹き飛ばす、再生、吹き飛ばす、再生、吹き飛ばす、再生、吹き飛ばす、再生、吹き飛ばす、再生、吹き飛ばす、再生、吹き飛ばす、再生、吹き飛ばす、再生、吹き飛ばす、再生、吹き飛ばす、再生、吹き飛ばす、再生、吹き飛ばす、再生、吹き飛ばす、再生、吹き飛ばす、再生、吹き飛ばす、再生、吹き飛ばす、再生、吹き飛ばす、再生、吹き飛ばす、再生、吹き飛ばす、再生、吹き飛ばす、再生、吹き飛ばす、再生、吹き飛ばす、再生、吹き飛ばす、再生、吹き飛ばす、再生、吹き飛ばす、再生、吹き飛ばす、再生、吹き飛ばす、再生、吹き飛ばす、再生、吹き飛ばす、再生、吹き飛ばす。
何回繰り返したことだろう。最後に右腕を吹き飛ばしたあとの再生速度が明らかに落ちていた。たっぷり10秒ほど待ってようやく再生した右腕を抑えているアストロシティは、すでに肩で息をしている。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
「再生が遅くなってきましたね…神力も底が尽きてきたようですし…そろそろ潮時ですか…」
「な、何度でも再生しぶごわッッッッッ」
回し蹴りで再び上半身を吹き飛ばすと、最初のころに比べて再生が遅い。ここまで弱れば魔法も簡単に通るだろう。
「第4門、5門混交魔法・
カチコチという音がして、アストロシティの下半身がまるまる石になった。
やはり弱っているようだ。下半身全体へあっさりと石化の魔法がかかった。…下半身だけの石像というのもだいぶシュールではあるが、仕方あるまい。
これで当面はアストロシティも再生ができないだろう。いかようにでも料理できるが…。
「復讐も、終わってみればあっさりとしたものでしたね…あとはこいつの処分ですが…どうしましょうかね」
最初は、このアストロシティを吸収して殺すつもりだった。しかし、この従神、魔力が汚すぎて吸う効率が悪い。大して足しにもならないまずい魔力をどうも積極的に吸うに気にはなれないのだ。
「ここまで来たら仕方ないですね…どうやら神力も足りてきたので…神界への門を開きましょうか」
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