第2話

「誰になるか。まだ今ではわからないわよ。さあ、ここへ入ったのなら勇気を持って女の子を探しなさい」

「はあ? すみませんが、この店は一体どんな店なのですか?」

 レジの女性のメガネの奥が真摯に俺の顔を穿つ。

「さあ、勇気を持って探しなさい。きっといるはずです」


「はあ?」


 俺はカラフルなソファと色々なタイプの女性を眺めながら緩やかな階段付近に、ユリを見つけた。

「ユリ? この店で働いているの? 金なんて稼げる楽しい仕事は多いんだ。何も考えずに簡単に体を使っちゃダメだと思うぞ」

 ユリは首を傾げて、さも意味がわからないといった顔だった。

 雑誌を脇に避けてユリは隣に俺を誘った。

「何かの運命? 功一って確か会ってない月日が4年はするよね?」

「そんなこと聞いてない」

「ねえ、恋人がいないでしょ。ここへ来る人って、何ていうか本能なのよね。恋人募集中の人しか来ないのよ」

「?」

 ユリの脇に置いた雑誌に目をやると、立派な一戸建ての表紙で、その周りにパスタやカレー、炊き込みごはんなどの料理が宙に舞っていた。

「ここって?」

「うーん……。好きな人を見つけて恋人になるところよ……。最終的にはお互い気があるのなら、そして、経済的……お財布ね。それで結婚まで辿り着く。そんな店よ」


 

 一か月間も俺とユリは付き合った。


 俺にとって初めての体験で、新鮮で、楽しかった。

 あっという間の時間だったようにも思うが、思い出はたくさんできては忘れられない。


 デートで一緒にアイスクリーム片手で、お気に入りの公園のベンチで日向ぼっこ。映画館。水族館。会社での取引先でうまくいっていないことを話したり。会社の上司はそんな俺に父親のように接してくれていたこと。大人の映画館も二人で行ったこともあった。

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