ハニー・ネスト・ハウス

主道 学

第1話

 公園のベンチは座り心地が良かった。さんさんと降る日光。ちょっとした日向ぼっこのつもりで、いつの間にかウトウトとしていた。会社と複数の取引先の中間点にあるこの公園には、いつも仕事の合間に座っている。

 周囲のこの時間帯。ベンチに座るカップルの人たちの顔を見ては、ため息を漏らした。今年で28歳という若さもあるが、未だかつて恋人を作らずにいた。


 何故だろう?

 たんに縁がなかったのだろう。そう自分にいつも言い聞かせていた。顔。背。財布の中身などは平均並みだからだ。

 

 どこかうだつが上がらないところでもあるのだろうか?

 高校時代も好きな人はいたが、すでに彼氏持ちであった。

 大学では彼女を探すという使命に燃えたが、何故か轟沈の連続のラブアタック。

 どこか悪い。

 そんな気持ちにもなるが、それほどでもないよと高校時代から取り分け親しかったユリが言っていた。

 当然、ユリにも仲良くなり過ぎて、告白。なんてことは考えられない。何故ならすでにユリには恋人がいた。

 

 いけない。

 もうこんな時間だ。

 

 俺は様々な書類が入ったショルダーバッグを肩に掛け。取引先へ赴いた。

 林立のビルディングを歩く途中、コンビニと喫茶店の間に「ハニーネストハウス」という落ち着いた店を見た。

 その時点で、会社から連絡があったので、メールを見て。

 俺は運命を信じて、その店に入ることにした。

 どうやら、男性だけが入れるようだ。立て看板がある。

 料金は一人につき5千円。

 怪しいとは思うが、何故か健康的な店のような雰囲気がした。

 メールの中身は他の営業を回すので、今日はいかなくていい。今のうちに英気を養えだった。


 戻らなくていいとは書かれていないが、同じ意味だろう。

「いらっしゃいませーー」

 レジの女性は、地味な格好の若いお姉さんだった。痩せすぎて薄いメガネを掛けていた。店内を見回すと、年が20代から30代のこれまた若い女性がだいたい20名はいる。それぞれのソファからこちらを真剣に見つめていた。

 雑誌を持っている人や、コカコーラなどの炭酸飲料の柄を持つ人。カップアイスを持つ人。 

 茶髪の軽そうな人はごく少数で、落ち着いた人が多かった。

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