第45話 ムッチリーナの誤解
俺達が大浴場へ向かう途中、ナイスバディな女性兵士に遭遇した
「ちょうどよかったムッチリーナ、大罪人様のお世話をしてくれ」
「えっ!なんで私がこんな貧相な罪人のお世話をしないといけないのよ」
ドーナットは女性兵士に命令を出す。しかし、事情をよく知らないムッチリーナは怪訝な顔をする。
「人を見た目で判断すると痛い目にあうぞ。心の目でしっかりと大罪人様を見ろ。内側から発せられるおぞましいほどのパワーをお前は感じないのか」
ムッチリーナは俺の姿をまじまじと見る。
「ただの貧相な罪人にしか見えないわ」
ムッチリーナの意見は正しい。
「これだから素人は困るのだ。仕方がない。俺が一から説明してやる」
ドーナットはムッチリーナに詳細を説明する。
「本当なの!全然強そうに見えないわ」
「バカ者!大罪人様になんて失礼な事を言う。大罪人様が本気を出せば俺達なんてすぐに死体置き場へ直行だぞ」
「わかったわ。それで、私は何をすれば良いの」
ムッチリーナは納得をしたようだ。
「3階は聖寵者の部屋になっていて、入り口にはカギが掛かっている。俺はカギを探してから、空いている部屋を清掃して、大罪人様にゆっくりと休んでもらうつもりだ。その間お前は大罪人様を大浴場へ案内してお背中でも流してくれ。そうだ!ついでに食堂へ行って料理をふるまうのも良いだろう。ここで、すこしでも恩義を売っておいて損はないはずだ」
「ふ~ん。こんなみすぼらしい男が【薔薇の目】だなんてにわかに信用はできないわ。でも、本当に【薔薇の目】だったらヤバいわね。わかった!協力するわ」
ムッチリーナは恋人のように俺と腕を組む。ムッチリーナは長い金髪に赤の瞳、茶色のタイトな軍服からもわかるナイスバディの持ち主である。腕を組むと柔らかいバストが俺の腕に食い込んで、俺のあそこは勃起した。
「マジか・・・」
俺は心の中で呟いた。俺が驚いたのは性欲があることだ。今まで生き延びる事に必死だったので、性欲を感じる事は無かったが、ムッチリーナの柔らかいバストの感触が腕にあたり俺は思わず勃起して、性欲があることに気付いた。感情、苦痛、空腹、眠気があるなら性欲があってもおかしくない。俺は大罪人を演じる為に、下手な言動は避け、大物感を出すために寡黙を演じていた。しかし、性欲に負けてニヤニヤと顔を緩めてしまった。
「大罪人様が喜んでいられる。お前に頼んで正解だったな」
ドーナットはやわらかな笑みを浮かべる。俺はドーナットの笑みを見てホッとした。
「大罪人様、私が大浴場にご案内します」
ムッチリーナが俺の耳元でささやく。こそばゆい吐息が耳に降り注ぎ、俺の背筋はゾクゾクとして、なんとも言えない高揚感を得る。ムッチリーナは、男の扱いにかなり慣れているのだろう。だからこそドーナットはムッチリーナに俺の世話を託したのだと思われる。
「大罪人様、お服を脱ぎ脱ぎ致しましょう」
ムッチリーナは大浴場に着くと、俺の背後に回って抱きしめながら俺の服を脱がそうとする。
「服は自分で脱ぐ」
顔を真っ赤にして抵抗する俺を見て、ムッチリーナは小悪魔のような笑みを浮かべる。
「うぶなのね。私は替えの服を取りにいってきますので、先に湯船に浸かって下さいね」
俺のうぶな態度を見てムッチリーナは脱衣所から出て行き俺は少しホッとした。セクシーな女性に衣服を脱がされるのも悪くはないが心の準備が出来ていなかった。それに勃起している姿を見られるのも恥ずかしかった。このままでは大悪党として威厳も損なう危険性があった。
俺は自分で服を脱ぎ大浴場に入る。大浴場の大きさは20人ほど入る事ができる大きな風呂で洗い場も広くサウナもあるようだ。兵士棟は充実した環境が整っていた。俺が5分程湯船に浸かっていると、大浴場の扉がガラガラと音をたてて開いた。
「大罪人様、お背中を流しにきましたわ」
スケスケの白い布を纏ったムッチリーナが大浴場の中へ入って来た。俺の鎮火した股間は再び噴火する。
「さぁ、こちらへ来てください」
「あぁ」
俺は断る事もできないので股間を手で隠しながら椅子に座る。
「大罪人様、お強いのにどうして捕まったの?」
ムッチリーナは俺の背中を洗いながら声をかける。
「ここに用事があるのだ」
俺は大悪党の威厳を保つために低い声でゆっくりと喋る。
「大罪人様は輸送中の緋緋色金を奪うところを黒龍神様の御使い様に捕まったと聞いております。もしかして、本当の狙いは勇猛無比(ゆうもうむひ)なのでしょうか?」
「・・・」
勇猛無比とはなんのことだが全くわからない。
「そういうことですね。大罪人様が御使い様に抵抗せずに捕まった理由、黒龍神様ならびに皇帝陛下を侮辱した理由、私は全てを理解しました」
「・・・」
俺にはムッチリーナの言っている事は何一つ理解出来なかった。
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