第26話 冒険者ギルド
食事を終えた俺は宿屋の女将に冒険者ギルドの場所を聞く。皇帝陛下に謁見するのは明日なので、今日は帝都の探索をしようと思っている。まず最初に行くべき場所は冒険者ギルドだろう。宿屋の女将は簡易の地図を俺に渡し丁寧に説明してくれた。
俺は肩にノアールを乗せ、地図を見ながら冒険者ギルドに向かう。宿屋から15分くらい歩くと、大きなドーム状の建物が見えてきた。大きさは東京ドームくらいありそうだ。正面には大きな看板に【冒険者ギルド 総本店】と書かれている。ここが冒険者ギルドであることに間違いないだろう。俺は正面玄関から冒険者ギルドに入る。中に入ると中央に椅子やテーブルが置いてあり、数名の冒険者が酒を飲みながら仲間たちと雑談をしている。そして、左右にカウンターがあり、右側には綺麗な女性二人が椅子に腰かけて、にこやかに談笑をして、左側のカウンターには、恰幅のよい巨漢の男が退屈そうにカウンターに肘を付いてあくびをしていた。おそらく、右側の女性職員が冒険者ギルドの受付嬢で、左側の男性職員が素材の買取をしているのだと俺は思った。俺は素材も売りたかったが、先に受付嬢の方へ向かう。
※ギルド職員の服装 男性は黄色のダブルブレストに銀のボタン 胸には緑の徽章 黒のタイトパンツ 女性は黄色のダブルブレストに銀のボタン 胸には白の徽章 白のミニスカート
俺が冒険者ギルドに入った来たことに気付いた職員達や冒険者達の目つきが変わり、談笑を辞めて俺の方へ視線を向ける。その視線は畏怖と言うよりも崇敬だ。まるで神を崇めるような目で俺を見ている。これは、帝都の入り口の広場やギルドに来るまでの道のりでも感じた視線だ。
「冒険者登録をしてくれ」
俺は赤毛のショートカットの受付嬢に声をかける。俺の目的は身分証と同じ価値を持つ冒険者証を入手することだ。帝都に向かう道のりでノアールから教えてもらった情報である。
「あなた様は黒龍神様の御使い様でしょうか?それに肩にお座りになっている可愛らしい少女は天使様でしょうか?」
赤毛の受付嬢は俺の話しを聞かずに質問をする。
「違う。俺は冒険者だ。そして、肩に乗っている子供は俺の連れだ」
黒龍神の三面顔兜を外していても、帝都民からすれば、俺の姿は黒龍神の御姿に似ているのだろう。しかし、俺は黒龍神を殺した大罪人ギルガメッシュだ。御使いとは真逆の立ち位置の存在である。そして、ノアールの事は馬だと言えるはずもない。
「も・・・もうしわけありません。これは内密な事項なのですね。余計な事を口にしてしまいました。すぐに冒険者証を発行します」
赤毛の受付嬢はポーターと同じように、変な気をまわして、冒険者証の作成に取り掛かる。
「規則では、身元や身分を特定するための書類に記載をしてもらうのですが、御使い様はお名前だけでも結構です。お名前は黒龍神アルマゲドンもしくはアルマゲドンにしておきましょうか?」
「いや、ヒロヒロでお願いする」
「・・・わかりました。すぐに作成しますので10分ほどお待ちください」
すこし納得がいかない表情で赤髪の受付嬢は奥の職員室に入って行った。
「悪いが、魔獣の買取をお願いしたいのだが」
俺はもう1人の青髪のショートカットの受付嬢に声をかける。
「申し訳ありませんが、魔獣の買取は反対側の受付になります。しかし、御使い様にお手数をかける事はできません。係の者をこちらへ呼んで参ります」
「待て!自分で行く」
俺はさっと振り返り反対側のカウンターへ向かった。
「魔獣の買取をお願いしたい」
「買取には冒険者証の確認が義務になっている。冒険者証を見せてくれ」
「ビーチック、御使い様になんて失礼な物言いをするの!ギルド長にすぐに報告しますよ」
青髪の受付嬢がすごい権幕でビーチックを怒鳴りつける。
「いや、話は聞こえていたが、コイツは黒龍神の御使いではないと言っていたぞ」
「バカ!空気を読むのよ。このお方は素性を隠さなければいけない事情があるの」
「その男性の言う通りだ。俺は御使いではないので通常通りに接してくれ」
「しかし・・・」
受付嬢は寂し気な表情で俺を見る。
「お気遣いはありがたいが、俺はただの冒険者だ」
「わかりました」
受付嬢は意気消沈して自分のカウンターに戻る。
「悪いが冒険者証は今作成中だ。先に買取はしてもらえないのか?」
横暴な態度なビーチックに、丁寧な言葉で対応するのは逆効果だ。このような横暴な態度をとる人間は、相手が下出にでるとさらに横暴なるのが常である。なので、俺は威圧的な態度で話しをする。
「・・・わかった」
ビーチックは俺の態度にビビったようで買取を認めざる得なかった。
「さて、どこに魔獣の素材を出せば良いのだ」
「見たところ手ぶらのようだが、本当に素材を持っているのか?」
【七国物語】ではプレイヤー以外に収納魔法の類を習得している者は稀である。俺の場合は魔法ではなくスキルとして習得している。なので、手元に素材がないので疑われていても当然である。
「もちろんだ。どこに出せば良いのだ」
魔獣の素材を置く場所はカウンターの横に大きな台があるのでそこに出すのはわかっている。しかし、その台にはブラックウルフ5体分置くのが精一杯だろう。俺が持っている魔獣の素材はブラックウルフ10体分、アサルトボア5体分、サイレントベアー2体分だ。全ての素材を一度に台に出す事は不可能だった。
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