第14話 大罪人

 「あの~すみません。どうしてこちらのキャラバンは人数がすくないのでしょうか?」


 俺は優しそうなスキンヘッドの男と仲良くして、いろいろとこの世界の情報を聞き出す事にした。


 「どちらのキャラバンに乗るかは刑期によって決められているのです。私達が乗っているキャラバンは刑期が5年以上の長刑期囚になります。それにたいしてあちら側は5年未満の単刑期囚です。どちらもデスガライアル鉱山に行くことは変わらないのですが、キャラバンの居心地やデスガライアル鉱山での待遇などが全く違うのです」

 「クライナー様、ガキの相手などする必要はありません。どうせたいした罪もおかしていない臆病者です」


 シュヴァインは貧乏ゆすりをするように体を小刻みに動かしてイライラしている。


 「シュヴァイン、この人は長刑期囚のキャラバンに乗っているのだぞ。俺達と同等もしくわそれを上回る極悪非道な人なのかもしれない。相手を見た目で判断すると痛い目にあうぞ」

 「しかし・・・」


 シュヴァインは納得していないようだ。


 「失礼ですが、あなたは一体どのような罪を犯したのでしょうか?ちなみに私達は行商人の馬車を襲って、商品を奪っていたところを冒険者に見つかって取り押さえられたのです。幸いにも行商人には危害を加えていませんのて、私は8年の刑期になり、シュヴァインとレーンコートは6年の刑期になりました」


 レーンコートとはまだ一言も喋ることなく板の上で寝転がっている長髪で頭頂部の髪が薄くなっている細身の男性のことだろう。

 

 「俺は・・・」


 俺は簡単に事情をクライナーに説明した。


 「国家反逆罪・・・それに刑期が200年!!!!!」


 クライナーは雄たけびをあげるように大声を出す。一方シュヴァインは驚きのあまりに泡を吹いて意識を失い、さっきまで眠っている思われていたレーンコートは、飛び起きて目を見開き正座をした。


 「国家反逆罪はあらゆる犯罪の頂点に立つ大罪です。自分たちのような小者風情が、あなた様のような大罪人様と同じキャラバンに乗る事が出来て誠に光栄な事であります。デスガライアル鉱山までの道のりは何不自由なく過ごせるように私どもが精一杯お世話をさせていただきます」


 クライナーは忠実な部下のように頭を深々とさげた。クライナーは俺の罪状と刑期の長さに驚愕し俺を大悪党だと勘違いしたようだ。


 「先ほどのご無礼をどうかお許しください」


 気を取り戻したシュヴァインは、まるで俺が神様であるかのように両手を合わして命乞いをする。


 「すぐにご挨拶をできなかった事をお許しくださいませ」


 レーンコートは、正座をしながら頭を板にこすり付けながら俺に許しを請う。

 俺は非常に気持ちが良かった。俺は人生で相手にビビる事はあってもビビられることなど一度もなかった。ゲームの世界に転移させられた瞬間も随時俺は弱者の立場であり、何度も苦渋を飲まされた。しかし、今は違う。無課金で最弱のだった俺が、勘違いによるハリボテのおかげで、小悪党の3人が俺に恐怖し命乞いをして、俺に取り入ろうと必死である。強者とはこれほど気持ちが良いものかと俺は優越感に浸っていた。

 

 「俺の凄さがバレてしまったようだな。しかし、俺は弱いヤツをいたぶる趣味はない。楽にして座るが良い」


 俺はいきなり社長にでも出世したかのようにふんぞり返って、自分を大きく見せて虚勢をはる。


 「ありがとうございます」

 「ありがとうございます」


 シュヴァインとレーンコートは柔らかな笑みを浮かべて安堵する。


 「私達はあなた様をなんてお呼びすればよろしいでしょうか」


 クライナーが眉毛の無いイカツイ形相で俺を見るので、俺の鼓動は激しく動き動揺をするが、歯を食いしばって冷静さを保つ。


 「あああもしくはボスと呼べ」


 名前はあああ以外を名乗ることが出来ないで、足りない頭をフル稼働してボスという通称が思い浮かんだ。


 「・・・わかりました。私達はあなた様のことをボスとお呼びいたします」


 クライナーは少し間を置いてから答える。あああとは、俺がガイアスティック帝国が神と崇める黒龍神アルマゲドン、そして、皇帝陛下を愚弄するために名乗った名前だとクライナー達も解釈している。俺の事をあああと呼ぶことは、黒龍神アルマゲドン並びに皇帝陛下を愚弄することに値する。クライナー達は、俺に黒龍神アルマゲドン並びに皇帝陛下を愚弄する度胸があるのか試されているかと考えた。そして、クライナー達は俺に度胸を示すことは出来ずに、ボスと呼ぶことを選択した。これによって俺とクライナー達の上下関係は完全に確定した。

 

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