父と子とアギャーの名の下に

@mongolicus

第1話

 ベトナム戦争の頃、13歳の少年ジョセフは軍人の父親の指示でアメリカから沖縄の米軍基地に向かった。異国の地でいじめに耐え、知恵を振り絞ってアギャー:密売、の道を歩んだ。そこへカッコいいやくざが現れ、ジンギの道を志すことになったが・・・・。沖縄を愛する少年ジョゼフは、ようやく現実に目覚めていく。


「ぼくはジョセフ。日本人はぼくのことを何て呼ぶの?スペイン人はぼくのことをホセって言うし、ドイツ人はヨーゼフっていうし、フランス人はジョゼフっていうし、イタリア人はジュゼッペっていうでしょ。」

 成田空港の税関職員は少しだけ間をおいて答えた。

「君のお父さんが君をジョセフっていうなら、日本人は君をジョセフって呼ぶよ。ほら、これが君の名前だよ。日本にようこそ。」

 税関の人はメモ用紙にさらっとカタカナで「ジョセフ」と書いて渡した。

「ありがとう。」

 ぼくは日本人が大好きだ。機内食はおいしかった。大好きなコーラも三本くれた。


 生まれ育ったアメリカの基地にはいろんな国の人がいた。母さんは黒人だけど、父さんは白人で、ぼくは白人。父さんはアメリカ海兵隊の大佐だけど会ったことはない。ぼくは息子ではなくてバスタード(隠し子)というらしい。

 母さんはヤク中毒で死んだので、ぼくは13歳で父のいる日本の沖縄に行くことになった。知らない人がサンフランシスコ空港まで送ってくれた。飛行機に乗って、成田空港で飛行機を乗り継いで那覇空港に着いた。飛行機で知り合った親切なおじさんが嘉手納基地のヘッドクウォーター:司令部に連れて行ってくれた。バスの中で寝ている間に着いていた。


 司令部での手続きを一人で済ませた。父は迎えにこなかった。父からの手紙では陸軍獣医部隊というところに行けとある。手書きの地図をもらって基地内を2時間歩いた。

嘉手納基地の中には、かっこいい飛行機がたくさん置いてあり、芝生の上には見たことのないエジプトの遺跡のような大きな石の塊がおいてあった。植物もモンスターのように曲がりくねったものがある。見るものすべてが珍しい。そして暑い。

アニマルクリニックと書かれている建物が獣医部隊なのだろうか。受付の女性に大きな声で言った。

「ハロー!ぼくはジョセフ・ニューマン。父のニューマン大佐に言われてここに来ました。」

 受付のアジア系の女性は眉をひそめ、何人かの人々と議論を始めた。1時間もたったころ、背の高い金髪の女性が現れた。ぼくはこんなきれいな女の人を見たことがなかった。

「ここの院長です。初めまして。お会いできてよかったです。貴方のお父さんはここにはいません。しばらくロッカールームでおとなしく待っていてね。」と冷たいコーラの缶を渡して足早に去っていった。

 悪魔のような残忍な顔をした犬たちがうなり声をあげる地獄のような通路をぬけて言われたロッカールームを探した。ドアを開けると、狭い部屋にベンチが向かい合わせに置いてあり、八人の少年がひざを突き合わせるように向かい合って座ってぶつぶつと何かを言い合っている。ぼくの座る席はない。

 目つきの鋭い少年が「お前は誰だ?」と言った。

「ぼくはジョセフ。疲れているからもう少し詰めてくれると座れるので嬉しいんだけど。」

「じゃあ、コーラをよこせ!」とコーラを奪われてしまった。そして座らせてくれなかった。

「あの、皆さんここで何してるんですか?」

「バカにしてるのか!みりゃわかるだろ!」と怒鳴られた。

「わかりません。沖縄に来たばかりなので。」

軽蔑の笑いが起きた。

「勤労奉仕だよ。ちょっとしたことをやらかした少年は裁判所の判決でここに来るんだ。」

「働いていないのに勤労奉仕ですか?」

「犬小屋の掃除の時間が来たら労働するのさ。おれたちゃそれ以外には使えないから、ここで一日のほとんどを待機して過ごすんだ。お前は何しに来たんだ。」

「ここに行けって言われただけでぼくもよくわからないんだ。アメリカから沖縄に今着いたばかりです。誰か沖縄の事を教えてくれませんか?」

「おい、濡れた背中(メキシコ系に対する蔑称)!教えてやれ!」

「俺はカルロス。クズ野郎に命令されたからでなく、ここにもまともな人間がいることを示すために教えてあげよう。日米安保条約に基づいてアメリカはどこにでも日本に基地を造ることができる。その維持費は日本政府が日本人から搾り上げた税金から出す。沖縄の特に大きな基地は、空軍の嘉手納基地、海兵隊の普天間基地。この獣医部隊は陸軍所属だけど空軍の嘉手納基地にある。軍曹以上の妻帯者はバラック(兵舎)ではなくて日本政府が作った庭付きの住宅や高級アパートメントに住むことができる。だから上の人はみんなご機嫌だ。沖縄にはアメリカ人が軍人だけで五万人住んでいる。家族や軍属合わせれば十万人くらいいる。アメリカ人だらけだ。日本人はバカだからほとんどの人たちは英語を喋れない。アリガトウ、コンニチワとかは覚えた方がいい。嘉手納基地の東側のゲートを出るとコザという町があってライブに行ったり酒を飲んだりできる。仲良くしようぜ。」

「仲良くなんかできるかよ。こいつ黒人の臭いがするぜ。くせーくせー。」

 黒人の少年が言った。

「これは黒人がよく使う洗剤の臭いだ。別に悪い匂いじゃないだろ!黒人を馬鹿にするやつは許さねえぜ。おい、お前は黒人と一緒に暮らしているのか?」

「うん。ぼくの母さんは死んじゃったけど黒人。」

「ひゅーひゅー。こいつはびっくりだ。もっとましなウソをつきやがれ!」

周りからたくさんの手が伸びてきてぼくの頭を激しく叩き始めた。

「ひーやめてください!」

 その時、ドアが開いた。

「そこまでだ。少年たち。ミスターニューマン、こっちに来なさい。」

巨大な体格の軍人が私を呼び寄せた。

「送ってあげよう。乗れ!」

大きなピックアップトラックに乗せられた。

「私は軍曹のボブだ。よろしくな。この獣医部隊でおもに軍用犬の管理をやっている。ドッグマスターだ。軍用犬は気が荒いから俺の腕は傷だらけだ。この腕を見ろ。すごいだろう。だれにでもできる仕事じゃない。今日から君が暮らすのは、ここから五km南にある、ヒガペットショップだ。あそこのエリザベスはクセがあるけど悪い人じゃない。時々、うちの事務所にも来るだろう。よろしくな。」

 車がペットショップの前で停止した。

「さあ荷物を持って降りなさい。グッドラック!!」

 ぼくは車を降りて、店の黄色いドアの前に立った。深呼吸をした。

知らないことだらけの沖縄でぼくはこれからの人生を生きていく。ぼくは自分の意志でこのドアを開けなくてはならない。犬に腕を噛まれるのだろうか?また叩かれるのだろうか?膝ががたがた震え、掌は汗でべっとりだ。明日はぼくの十四歳の誕生日。

ドアを開けると、太った女の子がこっちを凝視していた。自己紹介をしても反応は無かった。「ここに座ってもいいですか?」と聞くと小さくうなずいたような気がするので椅子に座った。目の前が暗くなった。時差ぼけと極度の疲労で寝てしまったようだ。

 いきなり頭を叩かれて目覚めた。何時間寝たのだろう。

「食べなさい。」と一言。

 となりの椅子に黙々とピザを食べる白人の中年女性が座っていた。

「コーラは冷蔵庫にあるわよ」とぶっきらぼうに一言。

 無言の女の子もピザを食べていた。

「すみません。寝てしまって。すみません。」

「食べろって言ってるだろ!わからないの!」また怒鳴られた。

 ぼくは次から次へとピザを食べた。三人の夕食はあっという間に終わった。

「わたしはエリザベス・ヒガ。ベスって呼んで。だんなは日系アメリカ人。アメリカに行っていてたぶん戻ってこない。この娘は自閉症でピザ以外は食べない。コーラ以外は飲まない。あのクソ大佐からはお金をもらって、あなたをここに置いておくことにしたけど、仕事はしてもらうよ。買い物と洗車はあなたの最低の義務。大佐も了解済み。人間は仕事をすることで人間になるんだ。わかった?」

 うーん、ひとはうまれたときからひとなのではないか?と思ったが、「わかりました。仕事がんばります!」と答えた。


 朝起きると、顔を洗って水を飲んで、犬たちに餌と水をやり、ピザとコーラを用意した。黄色い太陽が凶暴な白い牙を見せ始めるころ、ベスと娘が起きてくる。彼らは無言で食べて飲み、自分の部屋に戻っていった。

 ぼくはラジオのスイッチを入れる。放送教育という制度があって、ラジオを聞くことが一応は義務になっているらしい。学校に通えるなんて金持ちしかいない。建前と現実はあくまでも違っていて、そのことを政府はよく理解して抜け道を用意している。ということでラジオを聞き流す。

 ジョセフ!仕事だよ。行くわよ!とベスに声をかけられた。

 車に乗り込んだ。豪華な庭付き住宅を三つ訪れて犬と書類を預かった。そして向かったのは那覇空港の動物検疫所だった。

 日本政府の動物検疫所は、犬猫の輸出入手続きをしているとベスが言った。

「動物検疫は狂犬病:レイビスの予防のために働いてるの。それは世界各国に有ってかなり手続きが複雑なの。理由があるから仕方ない。でも手続きがめんどうだからという理由で犬や猫を沖縄に捨ててアメリカに帰る人もいる。私が手続きを代行することで、たくさんの動物の命が助かって、私も手数料をもらえる。問い合わせの電話も多いから、覚えてね。」とのこと。

 轟音を上げて軍用機が次々に離発着する那覇空港の粗末なターミナルの事務所では、動物検疫所の職員が汗だくで英語で次から次へと訪れるアメリカ軍人に対応していた。順番が来て、あっというまに手続きが終わった。帰りの車の中で、ベスは言った。

「これからは一人でここに来ることもあるから仕事を覚えてね。動物検疫所の人たちとの人間関係はすごく大切。彼らはまじめで賄賂を受け取らないけど、彼らのしゃべっている英語を直してあげると喜ぶ。彼らは難しいことは勉強しているけど、ごく普通の会話は経験がないの。You bet(もちろん)とか、It’s up to you(それはおまかせします)とかごく普通の会話をタイミングよく教えるのよ。20年沖縄に住んでるけど、日本語は難しくて、覚えるのはあきらめた。動物検疫所の連中に英語を教える方が楽。それから沖縄の方言は日本語のスタンダードとはかなり違うことを知っておいてね。」

「この書類にある「不名誉除隊」ってなんですか?」

「ああ、それは敵前逃亡した人。年金をもらえないし、退役軍人の恩恵が全然ないから、とってもかわいそうな人たちなの。ベトナム戦争は厳しいから時々いるよ。」

 年金ってなんだろう?ピザよりおいしいのだろうか?


 次の日には軍用犬の引き取りのため普天間基地に連れて行かれた。軍用犬が一番多いのは海兵隊だ。グラウンドでは海兵隊の新兵たちが大声でわめきながらランニングをしていた。

自分の命はウンコです。オー!

仲間の命は大切です。オー!

命を捨てて助けるぞ。オー!


 海兵隊はイカレテいる。父はこんな世界にいるのか・・・・・。絶対にこんなところには行きたくないと思った。


父から手紙が来た・・・・・・。

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愛するジョセフへ

 日本にようこそ。苦労を掛けてる。私も君の年齢の頃は貧しくて苦しかった。君もつらい目に会うかもしれないが、私の息子ならば乗り越えられる。事情があって今の私の生活に君を受け入れることはできないことを理解して欲しい。そして当分、私は君に会えない。私は本当に君を愛している。そして君は強い男の血を受け継いでいることを忘れるな。よく働き、周りの人の信頼を得て、次の10年後のことを考えてよく勉強するんだ。愛しているよ。

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「ああ困った、困った。」とベスが缶ビールを飲みながらぶつぶつ言っている。次はぼくに何かひどいことを命令するに違いない。「困った」のはこっちだ。

「ジョセフ!いまからフランスに行って頂戴!」

 はあ?フランスってどこ?

「犬を運んで飛行機に乗せてパリの空港まで行って、すぐに帰ってくるの。お願い。」

 カーゴ(貨物)として成田空港で積み替えてフランスに輸出されるはずだった顧客の犬が、数日間行方不明になった。機材の故障で成田空港での乗り継ぎに失敗して飛行機が出て行ってしまい、自動的に1週間後の飛行機が予約されて、倉庫にほったらかしにされていたのである。動物検疫所職員が非公式にエージェンシー(通関代理店)にねじを巻いてくれた結果、犬は飢え死寸前で救出された。激怒した飼い主はいくらでも金を出すから航空貨物以外の方法で輸送して欲しいと言い出したのである。

 妥協案としてベスが考えたのは、ハンドラゲージによる輸送である。最優先でターミナルに送られるので、保税倉庫を経由して迷子になる可能性がなく、ミスハンドリングにも航空会社が直接対処してくれる。

 ベスは仕事があるので見習いのぼくが犬を連れてフランスに行くことになった。機内食が食べられてうれしいが、どうすればいいんだろう。

 次の日には那覇空港で動物検疫所から犬の検疫証明書を受け取り、那覇空港から飛行機に乗り、成田空港でエールフランス航空の便に乗った。

 前の座席の背の高い男はちょいとした人物だった。痩せているのに巨大なエネルギーがみなぎっている感じだった。角張った顎の骨も鷲鼻もナイフで削り取ったようにシャープで、知性と決断力を誇示してしているようだった。近くにいるだけで鳥肌がたつこの人はいったいどんな職業の人なんだろう。貴族っていうのはこんな感じなんだろうか。離陸してからしばらくたつと、周りの人からざわめきが広がった。アテンダントが呼び出され、フランス語での会話が始まった。

 隣席の男が状況を英語で説明してくれた。

「あの方は、ル・ブランさんだ。ツールドフランスって知ってる?自転車レースのフランス人エースだ。国民的英雄をエコノミークラスに乗せていいのかってわけで、ファーストクラスにグレードアップさせるべきだって抗議してるのさ。長旅で疲れてレースに負けたら責任とれるのかってね。」

 しばらくするとル・ブランさんはアテンダントに先導されてファーストクラスに移動していった。拍手が沸いた。

 パリのシャルルドゴール空港に着いた。フランス語はわからないけどパスポートチェックはすぐに終わり、犬を探して1時間ほど空港内を探し回った。見つからなかったらどうしようとドキドキした。何か手続きでミスをしたのだろうか?

 航空会社のカウンターに行くと、見たことがある犬のケージがあった。安堵して、受け取りにサインをして走って税関に向かった。申告はありますかと言われたので、ドッグ!と答え、検疫証明書とフォーム380を提出してスタンプをもらい、ゲートを出た。飼い主の母親がバナーを掲げて犬を迎えに来ていた。満面の笑みを浮かべて感謝された。

「わざわざ遠くまで来てくれてありがとう。美味しいフランス料理をご馳走するからうちに泊まっていってね」と言われた。美味しいものには絶対的に興味があるのだが、ぼくはその日のうちに日本に帰らないといけない。ああ、なんてぼくは不幸なんだろう。


 沖縄に戻って数日後、ピザとコーラを買いにPX(売店)に行ったら、あのリチャードがいた。初めて獣医部隊に行ったときに意地悪をした奴だ。

「おい、小僧!コーラをおごってやるよ。だから頼みがあるんだ。ゲートにいる日本人に会ってお金をもらって来い。その日本人はこういうジェスチャーをしている。」

 人差し指でトントンと手首を叩いて見せた。コーラは家で飲めるけど、断ったら殴られそうだ。

 ゲートを出ると、日本人女性が近づいてきて周りを気にしながらトントンと自分の手首を叩いていた。

「ハロー、リチャードの友人です。彼に用事はありますか?」

 彼女は満面の笑みを浮かべてだまってお金とメモを渡した。

 PXにもどってリチャードにお金とメモを渡したら、待ってろと言われて、店に戻り、紙袋を渡された。「これをまたゲートの外に行って、その日本人に渡すんだ。いいな!」と言われた。中身を見るとビール半ダースと歯ブラシだった。

 それからもこうした使い走りは続けた。やらないと殴られるから仕方がない。


 今日は犬の世話とお留守番だ。おとなしい長毛種の犬はブラシをかける。中型及び大型犬は散歩させる。ペットホテルもやってるので、犬の数は多い日も全くいない日もある。ベスもぼくも日本語ができないので客はアメリカ人だけだ。暇な時にはラジオを聞いて過ごす。

 犬に対して言ってみた。「どうしてぼくはこんなに不幸なんだろう。親も友達も無くて、いじめられてバカにされて、ピザしか食べられなくて、お金がなくて、チビで弱くて頭が悪くて勉強も嫌いで・・・・。」

その時犬が激しく吠えた。犬が吠えるのは当たり前だけど、学校の先生が説教をするような感じだった。「生まれたからには楽しまなくちゃ。犬でも人間でも同じだ。この未熟者め!」という声が頭の中に響いた。ぼくは犬にもバカにされるのか。ぼくはうずくまり泣いた。


 ある日、コザの町に出ると顔なじみになった中年女性が手招きをしていた。

 ランチをおごってやるとのこと。ラッキー!食堂で出されたヌードルはいい匂いがした。生まれて初めてハシを使い、そして食べた。肉の間の白い脂身から汁があふれて麺とブラウンスープと絡み合い、スパイシーな野菜がワイルドなアクセントになっている。機内食より美味しい。これはなんですか?と聞くと、「ソーキソバ」とのこと。 

 日本人はこんな旨いものを食べているのか。ピザより百倍旨い。生まれてきてよかったと初めて思った。

 そしてソーキソバは僕の目を覚まさせた。PXの買い物で稼ぐリチャードたちは毎日ぼくより旨いものを食っているに違いない。絶対に絶対に許さないぞ!どんなことをしてでもまたソーキソバを食べてやると固く心に誓った。

 次の日、ゲートでお金をもらってPXにお金を持っていってビールや日用品を買い、足早にゲートに戻り、日本人に渡した。結構な金額が手元に残った。

 リチャードが腕を振り回しながら追いかけてきた。

「お前、俺に内緒でアギャーしたな?」

「アギャー?」

「PX物資の横流しをアギャーって言うんだ。俺を通さずにやるんじゃない。」

「あんたにそんなことをいう権利はない。」

「アギャーは違法行為だ。つまりお前はギタギタにされてもMP:憲兵隊に行くことはできない。お前は誰にも頼ることはできない。さあてどうしてくれようかな。」

 リチャードは自転車のチェーンをくるくると回し始めた。

 気が付くとぼくは血反吐を吐いて倒れていた。

 うーん、どうしたらリチャードに勝てるだろう。ただで空手を教えてくれる日本人はいないだろうか。


 沖縄の太陽は午後になると残酷なほど強い。傷口に汗が流れ込んで痛い。がんばってクルマを洗っていると、大男がランクルから下りてきて、大声で話しかけてきた。

「ハローバディ!俺はアメリカ本土にもどるんだが、この犬の引き取り手を探している。沖縄では大きな家に住むことができて天国だったけど、本土では集合住宅だからな。大型犬は飼えないんだ。困ってるんだ。頼むよ。」

 ぼくはひらめいた。

「そのようなビジネスは引き受けることができません。でも内緒にしていただけるなら、やってもいいですよ。手数料として今すぐ5万円現金でいただきます。」

「おいおい、ずいぶん高いじゃないか。」

「飼い主はアメリカでしか見つかりません。輸出代行料金と輸送料も含まれますから妥当な金額だと思いますが。」

「OK、じゃあここに犬と金を置いてくぜ!小僧。バーイ!」

「このことはぜったい秘密でお願いしますよ!」

 ぼくはクルマを運転して北へ向かった。もちろん免許なんてものは無くて車の運転は初めてだ。Ada Villageと書かれた場所から未舗装路に入り、しばらく行ったところで車を停めた。

 深呼吸をしてからつぶやいた。「地獄で会おうぜ、ベイビー!」

 ぼくは犬の入ったケージをクルマからジャングルの中に蹴落とした。ケージの中から大きな黒い動物が飛び出し闇の中に消えていった。不気味な鳥の声が響いた。

 何食わぬ顔をして、店に戻り、ピザを用意した。


 初めて自分でお金を払ってソーキソバを食べた。食堂のおばさんに胸を張って空手の達人を紹介してくださいと言うと、老人の前に連れて行かれた。冬を越した案山子のようによぼよぼだ。椅子から立ち上げることはなかった。おばさんの通訳では、空手はまず呼吸が大切、目つきが大切とのことだった。鏡の前で一時間、深呼吸をしながら自分の顔をにらみつけるように言われた。次の修行の段階で役に立つことがあるとのことだったがそうなんだろうか?


 日曜日にはベスに教会に連れて行かれた。基地の外にある小さな教会で日本人もいた。海岸通り沿いにあって、白い砂浜がまぶしかった。

 ただで空手を教えてくれる達人に出会えますように。ソーキソバを再び食べられますように。と心から祈った。今のところぼくの願いは2つしかない。

 神様なんているわけがない。だから牧師さんは嘘つきだ。どうしてこんな退屈な長話をできるのだろう。讃美歌をみんなで歌った。背が高い年寄りの牧師さんは、僕の声が素晴らしいとみんなの前で褒めてくれた。こんなに褒められたのは生まれて初めてだ。

 ありがとう、嘘つき野郎。ぼくはクルマを洗うときにはいろいろな歌を大声で歌うようになった。


 ベスが飲みに出かけて不在の夜、電話がかかってきた。こんな夜更けに誰からだろう。

「ハロー、ジスイズヒガペットショップ!」

 電話の主は軍曹のボブだった。

ベスはいるか?

今夜はいないよ。

そうか・・・・。

何か困ったことがあるの?ボブ。

うん、実は困っている。

すごーく困っているなら僕はなんでもするよ!お金で困ってるの?

でも、お前にはお金はないだろ。

四万五千円までなら貸すよ。

ええ!そんなに持ってるのか。本当に貸してくれるのか?

今すぐ届けるから、場所を教えて!


 ぼくは、自転車を走らせて夜の国道1号線を20km南下した。那覇の国際通りでボブを見つけてお金を渡した。

「返すのはいつでもいいけど、絶対に返してね。それからお金の出所は聞かないでね。それから、この前、リチャードにボコボコにされたんだ。僕に手を出さないようにちょっとだけ脅かしてほしいんだ。」

「お安い御用だ。今日のことは君と僕との秘密だぜ。本当にありがとう。」


 翌日、リチャードは獣医部隊に寝ぼけ眼で出頭するとボブ軍曹に呼び出された。

「おはよう、この犬が君に挨拶したいらしいぞ!それ!!」

 凶悪な犯罪者の右手を確実に噛み砕くための凄絶な訓練を受けたベルジアン・マレーという品種の大型軍用犬が本気で吠えたてた。リチャードをかみ砕く寸前でボブはリーシュを引いてストップさせた。リチャードはガタガタ震えて腰を抜かし、ジョセフに手を出さないことを約束させられた。


 コザの町に銃声と悲鳴が轟いた。通称「アギャーの戦い」が勃発したのである。PX利権を元に勢力を拡大したコザのやくざ、嘉手納派が、那覇のみかじめ料をシノギとする那覇派と対立したのである。下っ端同士の殴り合いは、親方(ウエーカタ)と臣下(シンカ)のネットワークを通じて全面戦争に発展した。本土のやくざと違って「手打ち」のシステムがないため、仲裁をする者は皆無だった。

 ボブから呼び出されたぼくはクルマの中でボブの話をうなだれて聞いた。

「アギャーはやめろ。お前はちびだから今まで見逃されてきたんだ。リチャードみたいなでかいやつがやったらPXマフィアから制裁を受けからリチャードはお前を使っていたんだ。PXマフィアは日本のやくざと手を組んでトラックを使って大規模に横流しをして金を稼いでいた。やくざの抗争でPXマフィアは商売できなくなっていらだっている。お前も体が大きくなってきたし、目を付けられたら殺されるぞ。」

 ぼくはがっかりした。お金を得る手段がなくなった。さようならソーキソバ。あんなに愛していたのに。


 次の日曜日は雨だった。教会で日本人の少年3人が僕を待っていた。髪の毛を延ばしていかれたかっこをしていた。お前は歌が上手いからうちのロックバンドで歌ってくれないかというのである。試しに1曲だけならという約束で、その日の夜にコザのライブハウスで歌うことになった。

 そして歌ったのである。アギャーの歌を。


自分の事をわかってるんだろ、それは私が必要としていることだ。

美しい女だけひざまずいてよく聞け!

私は沖縄で生まれ、アギャーに育てられた!

ゴットオブアギャー!そしてロックンロール!

呪文を唱えてお前たちの金銭感覚を奪ってしまうのだ!

私はゴミ捨て場の神

現代の鋼鉄の男

後ろめたいことを集めておまえたちを喜ばせる。

だからアギャーの前にひざまずけ!

そしてロックンロール

呪文を唱えてお前たちの金銭感覚を奪ってしまうのだ!

アギャー! アギャー!(Kissの God of thunderの歌詞を改変、筆者注)


 ぼくはこっけいな動作で手首を指で叩きながらステージを走り回った。会場内は大爆笑である。舞台裏に引っ込むとアンコールの声が沸き起こった。

 僕たちはステージに戻っていった。ベースギターのリズムが安定してキレキレで歌いやすかった。すごい奴らだ。


 それから数日後のコザ市街、12月20日の夜、乗用車から黒い煙がもくもくと立ち上った。それも1台や2台ではない。時折ガソリンに火がついてオレンジ色の火柱が上がった。炎が照らしだしたのは怒り狂った人間の顔である。

 アメリカ兵たちは繁華街で飲酒をするためコザや那覇の繁華街に自家用車で出かけ、泥酔しても構わずに車を運転して基地に帰っていた。人身事故を起こしても責任を取らない米兵たちに怒り狂った人々が、蜂起した。

 ナンバープレートを見れば持ち主がアメリカ人かどうかわかる。暴徒はアメリカ人の乗用車を焼き、アメリカ人に暴行を加え、Aサイン(米軍指定)の店を破壊した。

いわゆる「コザ暴動」である。

 頭から血を流した米兵が次々にバーから転がり出てきた。通報を受けた琉球臨時政府警察は遠巻きに催涙弾を発射したが、興奮した群衆はものともせず暴れまわった。

アメリカ軍憲兵隊が出動して、群衆に向けてついに実弾が発射された。

「殺せるもんなら殺してみろ、ウチナー(沖縄)のマブイ(魂)をみせてやるさ!」

長い白髪をなびかせて疾走した老人がジュラルミンの盾に激突し、はじき返された。

「アメリカ世を終わらせるさー!戦果をアギャー(:戦果を挙げよ)」

 男たちは次々に憲兵隊に突入した。

「たっぴらかせ!たっくるせ!(やっつけろ!叩き殺せ!)」絶叫が轟いた。

 75台の乗用車が炎上。飛び交う銃弾。そして重傷者多数。しかし死者はでなかった。車に腰かけて、「これは黒人の車だ。差別されている人のだから燃やしてはだめだ」と黒人の所有する車を命がけで守った日本人もいた。

 アメリカ軍は軍法会議に日本人有識者の同席を認めるようになった。


 これが最後のソーキソバになるかもしれない。ぼくはブルーな気分でソーキソバを食べていた。目の前にサングラスをかけた日本人が座った。

「お前はソーキソバが好きだな。」

「あなたは英語がお上手ですね。」

「いろいろ事情があってな。お前は若いのに男らしい目をしている。困ったことがあったら俺のところに来い。俺はイケダだ。」

「強いリクエストあります。ぼくに空手を教えてください。沖縄の人はみんな空手をやるんでしょ。」

「強くなりたいなら仁義の心だ。そいつがわからないと男は強くならない。」

「ジンギってなんですか?」

「ジンギとは、マーシーとジャスティスとロイヤリティとフィアースをミックスしてコンジュゲートしてブラッシュアップしてブーストアップしたもんだ。本物のヤクザはそいつを魂にぶち込んで生きてるんだぜ。これを見ろ、ドラゴンが動いているだろ。」

 イケダはシャツを脱いでドラゴンの入れ墨を見せた。

 逞しい上半身の肌をうろこ模様が本当にうねうねと動いていた!東洋の神秘だ!

ぼくは一発でイケダにイカレテしまった。彼のように強く、かっこよく自由に生きたい。仁義のスピリットで入れ墨の龍を動かしてみたい。軍隊なんかクソくらえだ。

 イケダに連れて行かれて、生まれて初めてお酒を飲んだ。

 ソファーがあってテーブルがあって、氷と水とウイスキーが並べられていた。きれいな女性が水割りを作ってイケダに次々と差し出していた。池田はゴクゴクとグラスを空けていた。

 隣にはイケダの子分がいて、キンジョウだと静かに自己紹介をした。小指の先が無かったが、やくざのしきたりではへまをやった者は指を切り落とされるペナルティがあるらしい。

 隣の席の酔っ払いが手を伸ばしてぼくの体をべたべた触り始めた。

「君かわいいね。彼女いる?おじちゃんが代わりに遊んであげましょうね。いひひ。えへへ。」

 なんだ?これは?

 イケダが、小さなうなり声をあげると、キンジョウが酔っ払いを殴りつけた。酔っ払いは悲鳴を上げて床をはいつくばり、店を出て行った。

 店を出る時、イケダは代金を払わなかった。イケダほどのやくざになると、店に来るだけで店の価値が上がるので払う必要がないのだそうだ。

 酔っぱらって吐いた。うーん。やくざの道は厳しいなあ。


 チャーリーズカフェという喫茶店でホットコーヒーが香ばしい匂いを立てていた。日本人の音楽少年たちが目の前にいた。

「俺たちと東京に行ってビックになろうぜ。白人の美少年がメインボーカルって日本人に受けると思うんだ。このまえのライブはすごかった。お前は人を動かすマジカルタレントがある。おれたち3人は、ちょっとコードを間違えただけですぐビール瓶が飛んでくるようなコザのライブで腕を磨いてきたんだ。テクニックは抜群だぜ。俺たちに任せれば成功は間違いない。東京にはきれいな女の子がいっぱいいる。いっしょに金持ちになろうぜ。お前の日本語もちょいとしたもんだけど東京に行けばもっと上達するさ。」

 お金持ちになって女の子にもてるのもいいかもしれないけど、ぼくはやくざになるって決めたんだ。

「ぼくはやくざになる。」

「はあ?お前何言ってるんだ。」

「ぼくは仁義のスピリットにラブしている。誰も俺を止められないぜ。ふふふ。」

「意味がわからねえ。第一、お前は背が低くて殴り合いって柄じゃない。はっきり言ってけんかは弱そうだ。歌がうまいんだからそのアドバンテージを生かすのが人生の成功の近道だと思うぞ。」

 ぼくはポケットから素早く、イケダからもらった飛び出しナイフを出した。刃がシュパッっと出た。

「どうせ、東京に行っても、自由はない。レコード会社にへいこらして奴隷みたいに働くだけだ。ぼくが欲しいのは自由だ。ケンカは腕力じゃねえ。頭とナイフを使って嫌なやつを全部やっつけてやるんだ。そのうち空手もマスターしてもっと強くなってやる。じゃあな、これでお別れだ。」

 ぼくは肩で風を切って店を出た。コーヒー代は払わなかった。


 まぶしい朝の光に顔をしかめながら店を開けて、掃除をしていると白いワイシャツを着た日焼けした背の高い老人が現れた。教会の牧師さんだった。

「私が君の父親、ニューマンだ。今まで黙っていて悪かった。こんな年寄りが父親と分かってがっかりしているだろうね。」

「大佐というのはうそだったんですね。」

「大佐以上の階級は永久称号だ。退役しても名乗ることができる。だからうそではない。それより自分のことをわかってるのか。それは私が必要としていることだ。わかったら海兵隊に入れ、もうすぐ君は十六歳だ。この書類にサインしなさい。」

「今までぼくのことを放り出しておいて、いきなり命令ですか。まるで神様のようですね。十六歳になったらぼくは自由です。父親というのはそんなに偉いんですか。身勝手だ。あんたに捨てられた母は寂しさで麻薬に手を出して死んだ。あなたは冷たい血の人間だ。帰ってください。」

「君は君の状況をわかっていない。君の人生はこれから長く続く。続かせなければならない。わかるか?」

「ぼくはやくざになる。ドラゴンのタットーを入れて自由に生きるんだ。死ぬのは覚悟の上だ。長生きしたいとは思わない。あんたには頼ることはごめんだ。断る。」

「知らないだろうが、君が敬愛するイケダというやくざは麻薬の密売人のボスだ。あの男のせいでたくさんの日本人が麻薬中毒に苦しんでいる。君は君のお母さんが苦しんでいるのを見ているんだろ。君の愛する母親を殺したあの残酷な犯罪行為に進んで命を捧げることができるのか?」

「そ、そんなことは知らない。ともかくぼくがあなたとあなたの海兵隊をどれだけ憎んでいたか、あなたはわからないでしょう。お金をくれるなら、金を置いてさっさと帰ってください。」

「まだわかっていないようだな。人生は戦争と同じだ。常に情報を集めなければならない。君はPX物資を横流しするビジネス、アギャーをしていた。チビだから見逃されていたけど、コンサートで、アギャーを暴露したのはまずかった。あの晩、PXマフィアがピストルに手をかけていたんだぞ。殺されてもおかしくなかった。わかっているのか?お前が死ぬだけじゃない。日本の友人たちも巻き添えになって死んでいたかもしれないんだぞ。注目され始めたから、何かあれば今すぐ殺されるかもしれない。」

 ぼくはびっくりして返す言葉がなかった。

「日本人の子供が野犬に殺された。やったのは君がヤンバルに捨てた大型犬だった可能性がある。小遣いを稼げて気持ちよかったのかもしれないが、どれだけの人が迷惑したか考えたことがあるのか?君のいう自由はその程度のものだ。世間知らずでラジオ学習をさぼる怠け者の本質を隠すための卑劣な行為だ。」

 ぼくは泣きながら言った。

「ぼくは何て言うか、つまり、とてもつらかったんです。いつも腹ペコで、いじめられ、バカにされて。少しだけお金があれば、美味しいものを食べられて幸せになれるって気が付いたのがぼくの生まれて始めての希望だったんです。ぼくは沖縄が好きです。コザの町が好きです。コザでがんばって自由になりたいんです。」

「辛いことや嫌なことから逃げることが自由ではない。運命に正面から向かいあうことにこそ本当の自由があるんだ。君もいずれはわかる。まず君は周りの人が君を愛していて助けていることをストレートに認めるべきだ。神様が無償の愛を振りまいているって信じているおめでたいどこかの教会の人みたいにね。そして情報を集めてそれを整理するんだ。不正行為から距離を置くんだ。海兵隊に入れば、犯罪組織から君は守られる。海兵隊は家族だ。それは君が求めていたものだ。慣れたら気に入るだろう。私は君の情報を集めて時間をかけて判断した。君も情報を集めて時間をかけて判断してくれ。」

「あなたは私の本当の父親ではないのですね?」

「頭のいい君には隠しても無駄だから本当のことを言おう。そのとおりだ。君は戦死した部下の息子だ。私は戦死した部下の子供の何人かを養子にしている。君のお母さんは残念だった。君の父親は勇敢な男だった。」

 ニューマン大佐は入隊志願書を置いて帰っていった。


 それから数か月後、私は那覇空港から飛行機に乗った。顔なじみの動物検疫所職員が、小さなベッコニングキャット(招き猫)を餞別にくれた。

「この猫なら検疫証明書がいらないよ。」

 サンフランシスコで飛行機を乗り換えて、サンディエゴのブートキャンプに行って、旅行命令書と軍属のIDカードを提出した。入隊日は雲一つない晴天で空がまぶしかった。

 ティダカンカンデアチココーネ(:太陽が暑いね)、と沖縄の言葉をつぶやいた。

 大砲のように背筋がピンと伸びた大佐が訓示を述べた。

「ジェントルマン、海兵隊の合言葉はセンパーファーイ!英語ではオルウェイズ・フェイスフル(常に忠誠を)。覚えておけ、海兵隊は家族だ。たくさん食べて、よく眠り、軍曹の言うことをよく聞いて大きく育つんだ。今日からこの軍曹がお前たちのお父さんだ。そしてお前たちのお母さんはこの私だ。私の部屋のドアはいつでも開いている。何かあれば、いつでも私に相談するんだ。わかったな!」

「イエッサー!」絶対服従の絶叫が轟いた。

「俺がお前たちの軍曹だ。わかったか!」軍曹の訓示が始まった。

「イエッサー!」

「俺の言うことは簡単だ。お前たちは父ちゃんの小便が母ちゃんのけつの穴に流れ込んでできたうんこだ!」

「イエッサー!」

「しかし、お前たちには仲間がいる。仲間を大切にしろ。仲間の命は何よりも大切だ。仲間の命を守るためには命を懸けろ。それができないなら、お前たちはうんこにもなれなかったということだ。わかったかー!」

「イエッサー!」

 南カルフォルニアの青い空に星条旗がうねうねと動いていた。まるでイケダのドラゴンのように。

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父と子とアギャーの名の下に @mongolicus

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