第25話 再開(?)
「ルシュターさん、少し落ち着いてはどうですか?」
ロパがレオルとルシュターの間に入り、ビショップ
がルシュターに対しそう声をかけた。
「え………あ、ああ、すまない…………」
ルシュターは少し落ち着き冷静さを取り戻した。
レオルはルシュターの反応にびっくりしたままで
あったが、一瞬も目を逸らさずレオルを見つめて
くる、それは言葉に出さなくても早く返答が
ほしいことを意味していることがよく伝わった。
だが…………
その報告はとても辛く、酷なものである。
その為レオルは目を伏せてしまった。
その様子を見たビショップは
「私が説明しましょうか?」
と提案してくれたが、レオルは首を振った。
「いや、大丈夫、ちゃんと説明できるよ。」
レオルはそう言ってビショップに笑いかけた。
そしてルシュターに対して真っ直ぐ見つめ直した。
「3年前に総統とイーダを暗殺したのは
キラービーなんだ。本人から直接聞いた。」
「え………何だって…………」
ルシュターは驚き、呆気に取られた。
「キラービーは、イーダの直接の部下だったから
それが公になると総統暗殺がイーダ直属の組織の
裏切りとなる為犯人は隠されたらしいんだ。
でもそのせいでイーダの死も隠されたため
軍部も別れてしまったって、でもその現体制派
の指揮を取っていたイーダの息子二人もラビが……キラービーが倒したから、そうなったらもう
現体制派の維持は難しいだろうって、
そしてその事を反体制派に伝えるよう俺は言われて……………」
「………………なぜキラービーが直接来ない?」
「それは…………」
「それに本当に11567が『キラービー』なのか?
あいつは確かに変わってたし、特殊な感じは
あったけど、そんな、死神のトップクラスだ
なんて、そんな、あいつはそんな奴じゃない!」
ルシュターにとって、暗殺部隊、特に死神は
血も涙もない殺人鬼のような印象であった。
彼にとっての11567は話も通じる少し変わったやつ
程度のものであった。
「証拠はあるのか!?11567が『キラービー』
だっていう証拠が。あいつに直接会ったんだよな?あいつの右手首に何が巻いてあるか知っているのか?」
ルシュターは11567が死神であることをどうしても
受け入れたくなかった。
だがその言葉でレオルは確信してしまった。
「そうか!君も知っていたんだな!ラビが
手首に子ども用のくつひもを巻いていることを!」
レオルは嬉しそうにそう言ってしまった。
そして今は自分の右手首に巻いているくつひもを
ルシュターに見せた。
「ほら、これだろう?ラビのくつひも。
2本あったんだけど、1本は彼女と親しくなった
一人の女の子にあげてしまって、残りを僕に
くれたんだ。くれたというか、僕が欲しそうに
してしまったから仕方なくなんだけど………」
そのくつひもは紐の先が赤い刺繍で纏られていて
先の方に少し可愛い模様が施されていた。
そのくつひもを見たルシュターは膝から崩れ
落ちた。
「何でお前がそれを持っているんだ……?
それはあいつが大切に……唯一大切にしていた
ものじゃないか。あいつが手放すわけがない、
あいつが…………何で………じゃあ、あいつは
もう……………………」
そのことが何を意味するかをルシュターが
理解したことにはっとしたレオルは
言うべき言葉をとても辛そうに口にする。
「キラービーは……ラビは………
昨日の朝イーダの息子達と戦い、そして………
亡くなった…………」
今朝教主に説明したことと同じことだが
今回の方がずっと辛かった。
話してみて分かる。
彼の感情の動き。
彼は自分と同じくらいあの死神を
大切に想っていたことを強く感じたのだった。
ルシュターは暫く黙って地面を見つめていた。
果たして本当に見つめていたのかは分からない。
言葉も感情も何も出てこないようだった。
3人はそんなルシュターをただ黙って見つめて
いた。
どれくらいの時が流れただろうか、空が少し
暗くなり始めた頃、外が騒がしくなり
部屋にライマン中将が帰って来たことが
告げられた。
ライマン中将は帰ってくると簡単な報告を本部に
済ませてすぐにレオル達のいる部屋に来た。
そして膝を着いて呆然としているルシュターを見て
とても驚いたのだった。
「ルシュター准尉、どうしたんだ!?
何かあったのか!?」
ルシュターは虚ろな顔で振り返る。
そしてライマン中将を見て、少し生気を取り戻した。
「中将、無事な帰還お疲れ様でした………
すみません、余りにもショックなことが
ありまして………このような醜態申し訳ありません
……………」
ルシュターは泣かなかったが、それを必死に
堪えているのは声からしても明らかだった。
中将はルシュターをゆっくりと席に座らせ
改めて他の3人に向き直った。
「改めて失礼します。
軍部中将ライマンと申します。
この度は貴重な情報が頂けるということで
何卒拝聴させて頂きたく存じます。」
規律正しくそう申し上げると
深々と礼をした。
3人も改めて立ち上がり、礼をしたのだった。
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