第26話 繋がる思い

総統暗殺に至る前半部分をビショップが、

そしてその後のことをレオルが丁寧に説明した。

疑問を問われる度にそれについての回答もした。


粗方の説明が終わる頃にはかなり遅い時間に

なっていた。

しかし中将にはほぼ全容を理解してもらえた

ようだった。


「ルシュター、君が軍のトップとなり

いつか会いたいと言っていた情報部の人物と

いうのが『キラービー』だったんだね?」


ライマン中将はルシュターに優しく問いかけた。


「はい…………」


ルシュターは力無く答えた。

ライマン中将はルシュターの肩に手を掛け問いかける。


「この結果は非常に残念であるが………

我々はその方の気持ちに応えるべきだと思わないか?」


「あいつの気持ち………?」


中将はルシュターに対して深く頷き、

レオルの方へと向き直り問いかけてきた。


「レオル君。君はなぜかの優秀で恐ろしい暗殺者

『キラービー』が組織を裏切り総統達を暗殺

したのだと考える?もしくはその動機を聞いて

いるのかい?」


「それは先ほども説明した通り、光の教団の教主を……………」


「殺さないため」と言いかけてふと思い出す。

教主に「時には脚色も……」と言われたことを。

レオルは唾を飲み込み意を決する。

そして深呼吸をして語り始めた。


「ラビは教主を殺したくなかったのです。

彼は人々を助け、思いやることのできる正しい人

だから。そしてその事に………

そんな自分の思いに気付いた時に

そのような素晴らしい教主を殺せと命じてくる

組織と総統に違和感を持ったんです。

人として生きる上で何が正しくて、何を行うべき

か考えなくてはならないと、この時にはっきりと

意識したそうです。

しかし今までずっと自分の面倒を

見てもらっていたような存在であるイーダに

手をかけたことで少なからず動揺して

その場を逃げ出してしまったそうです。

そしてそのために国を混乱させてしまったことを

為すべきことをきちんと成しきれなかったことを

ずっと悔やんでいました。」


レオルは連つらと嘘が出る自分に驚いた。

ラビが生きていたら……殴られるくらいでは

済まされないであろう。


『あの世で一杯殴ってくれ。』


レオルは胸の中にそう囁いた。


「では『キラービー』は光の教団の教主を助け

圧政を強いる政府組織を潰したかった。

ということでいいのだろうか?」


「はい。」


レオルは迷わず真剣な眼差しで返答した。


「実に素晴らしい人物だ……!

きっと意思に反してやらされていた暗殺行為にも

後悔し、悩み、苦しんでいたのでしょう?」


「え…?あ、ああ、はい。」


「きっと自分のしてきた行いに向き合い、後悔し

そして自分がいなくなっても同じことがまた

繰り返されることを案じて、自らがこの非情なる

連鎖を止めるべきだと思い立ったのでしょう!

なんと勇敢で悲しい戦士……いや『死神』

なのでしょうか。」


「は、はい、えーと………そうです。」


レオルは自分の嘘が広がっていくことに

驚きつつも賛同した。

脚色と演出とはこうやるものだと教わって

いるようなものである。


「私はこのような救国の意思に立会い、触れる

ことができてとても心を打たれています。

必ずかの『死神』の意思に応えてみせます。

あなた方もこれからも我々に尽力していただけ

ませんか?」


「は、はい、もちろん!」


少し呆気に取られていたが、咄嗟に向き直り

レオルは勢い強く答えた。


『繋がった。ラビ、繋がったよ。

お前が望む形か分からないけれど………』



ライマン中将は熱い眼差しで力強く頷くと、

3人それぞれと強く握手を交わした。


「では我々は明日には早速動きます。

ルシュター、君はどうする?私と一緒に

作戦会議にいくか?

それとも少し自分の時間がほしいかい?」


「私は…………」


ルシュターは話の成り行きに追いついていなかったが、ギュッと目を瞑ると心を決め、


「会議に参加します!」


と答えた。


レオルとロパ、ビショップはそのままそこで

夕食もよばれ、宿舎に泊まらせてもらったの

だった。

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