第24話 若い准尉(2)
そんな会話の中、ドアがノックされ
簡素ではあるが食事が運ばれてきた。
3人は有り難くその食事を頂いた。
その後ルシュターが部屋に戻ってきて、
「リンセンでの問題は思っていたより早く
解決しそうなので、ライマン中将も予定より
早く帰ってこられるだろう。」
と皆に告げた。
「それはとてもありがたい。
ところで…………」
レオルはそこできっと向き直り、とても真剣な表情でルシュターを見つめた。
部屋の空気がにわかに変わった。
「?どうかしましたか?」
ルシュターはレオルの真剣な空気に少し気圧された。
それでも軍人である。
些かの同様も見せなかった。
「あなたは『キラービー』をご存じですか?」
レオルは重くなり過ぎないようにキツく
なり過ぎないように、慎重にゆっくり言葉を
吐き出した。
「いいえ、知りません。」
ルシュターは何のことか分からず、困ったように
答えた。
「では情報部や暗殺部隊のことは知っていましたか?」
「それはまあ、存在していることはさすがに
知っていますよ。ですが軍部とは組織体系が
全く違っていて、関わりもほとんど無いので
個人的に知っている人がいるということは
……………………ないです。」
ルシュターは「ないです。」と言う時に少し
言い淀んだ。
それは気にするほどのことではないくらいの
小さな淀みであった。
「情報部は政府組織の中でも機密事項に入ります。余りその関連の情報を調べたり知ろうとすることはできません。………でした。
今どうなっているかもはっきりは解っていません
でしたが、あなた方の情報が確かであれば
情報部のトップ、総統の右腕でNo.2の実力者
だったイーダという男は既に死んでいると
いうことですが…………」
「イーダの事は知っているのんですね?」
「知っているというほどでも……誰もほとんど
会ったことも見たこともないような存在ですが
彼に睨まれると殺されるという噂は有名ですから
知らない者はいないかと思います。」
「ルシュターさんはイーダを見たことないの
ですか?」
「軍人になってからはありません………が、
私自身は子どもの頃に少し会ったことがあります。」
「特殊施設で?」
「えっ?」
ルシュターは驚いたような顔をしてレオルを見た。
「この一緒にいるビショップが先ほども紹介した
ように、元諜報員でして、そういった情報を
教えてくれました。」
「ああ、諜報員か……。」
ルシュターはかつて自分も諜報員になるよう
薦められたこと、そして断ったことを思い出した。
その時に少し諜報員がどのような仕事をするのかの
説明も受けていた。
「その特殊施設で……知り合いを………、
あっ、えっと………そうだ確か、11691。
って何の番号なんだろう?
その番号が由来する人と何らかの接触を………」
レオルはラビとの会話を何とか思い出そうと
断片的ながらも記憶を探った。
しかし、
「11691」
その言葉でルシュターは顔色を変え立ち上がった。
間にあった低いテーブルも蹴飛ばすように
跳ね除けてレオルに詰め寄った。
「その番号をどこで!?
僕の特殊施設での経歴を調べたのか!?
一体何のために!!!」
ルシュターはレオルの胸ぐらを掴んで
立ち上がらせた。
「何が目的なんだ!?」
ルシュターは怒りで興奮してしまっていた。
レオルはルシュターがそんなに怒ると思って
いなくて動揺してしまった。
「いや、何も調べたりはしていない、
ただ聞いた番号を思い出しただけで………」
「どこで聞いたんだ!?」
「ラビに。暗殺部では『キラービー』と呼ばれて
いたと言っていた。」
「また『キラービー』か。そんな名前僕は
知らない!」
「そのラビが、その人に「私は化け物ではないと言われた。」とか「他の人と変わらないと言われた。」なんて言っていて、あいつほとんど表情が
無いから分かりにくいけど、多分ちょっと
嬉しそうだったから…………」
胸ぐらを掴まれて喋りにくそうにしながらも
レオルは説明をした。
その話を聞きルシュターは目を見開き手を緩めた。
「え?11567………?」
それを聞いてもレオルは何のことだか分からない。
「特殊施設では子ども達は番号を付けられ
その番号で呼ばれるんです。
確かにキラービーの特殊施設での番号は
『11567』でした。」
ビショップが付け加えるように説明してやった。
それを聞いてレオルはルシュターから手を離した。
「11567がキラービーだって?
キラービーって何なんだい?
あいつに付いた名前なのか!?」
「『キラービー』は暗殺部隊でのコードネームです。情報部のトップクラスはコードネームで呼ばれその他の名前や本名などはほぼ使われません。
潜入調査などで偽名を使うくらいです。
キラービーは元から本名不明でこの方を呼ぶには このコードネームしかありません。」
「11567が暗殺部隊………
あいつなら確かにやれそうだけど…………」
「『キラービー』は暗殺部隊でも数名しか
名乗れない『死神』であり、その中の歴代と
比べてもだれも比類することのできない
トップクラスの腕前と実力者でした。」
「死神?死神だって?軍部でイーダに逆らえば
死神に殺されるは誰もが知っている戒めであり
脅しであった。
あいつがその『死神』だって………?」
ルシュターは一瞬呆然としたが、
はっとしてレオルを見つめた。
「君はあの人のことを、11567を、その
『キラービー』という人のことを何か知って
いるのかい!?」
さっきまでずっと冷静だった若い准尉は
今、感情を剥き出しにして聞いてくるのだった。
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