第4話 出会い

 影はなぜか揺らいでいる。腰に手を当てている人間のような形をしている。


「お前...」


声が聞こえる。甲高いロリ声だ...ロリ声?さっと後ろを振り返る。

そこには、少女...否、成人女性がいた。その声とは裏腹に豊かな胸や整った顔立ちをしており、身長も高い。


「何をしていた。」

「い、いえ、俺は特に何も。ただ、あれを見ていただけで...」


まさか、魔法を使ったところを見られた?逃げる?それとも申し訳ないけどこの人殺っちゃう?


「手を前に突き出したかと思えば、脱力したように倒れ込んだからな。」


見られてる。完全に見られてる。こうなったらもう覚悟を決めて、始末して逃げる。脅して黙らせても結局は漏洩するのがオチだ。彼女の存在ごと記憶を消してしまえばいいんだ。

自分があまりにも悪役的思考過ぎて、口角がつり上がってしまう。


「何を笑って......はっ、まさかお前、厨二病ってやつか?」

「ふぇ?」


『ちゅうにびょう』...あ、え?うん。厨二病?


「いや、違いますけど。」

「そ、そうなのか?てっきり、自分に酔ってるガキの謎行動かと思ってしまってな。」

「ひどいなあ、おい。」

「あ、そうだ。怪我はないか?さっきの爆発に巻き込まれてはいないようだが...」


ん?魔法を使ったところがバレて捕まえに来たんじゃなかったのか?


「怪我はないですけど。あの、あなたは何者です?」

「そうか、良かった。それと申し遅れてすまない。私は王国軍北方方面軍支援連隊衛生科、アマノ士一曹だ。」

「王国軍?」


ゲートからモンスターが出てきてからものの数分で王国軍が動くのか。優秀だな。


「そうだ。落ち着いてからでいい。さっき起こったことについて話が聞きたい。参謀本部まで出頭願えないだろうか。」


出頭?参謀本部?なぜそんな仰々しい名前のところに...


「えっと、それって強制ですかね...?」

「ああ。任意という名の強制だな。すまないが頼めないだろうか。今週中に来てもらえばいい。」

「わ、かりました。行きます。」

「そんなに顔をしかめるな。なるべく早く来てもらえると助かる。よろしく頼んだよ。」


あーこれ、可及的速やかに出頭せよ、ってことだな。


「それと、屋根の上は危ない。早く降りていなさい。それじゃあ、私はここで...」


そう言って彼女は、アマノ一曹は、羽のように地面へ降り立った。


遠くから土煙とともに鎧を着た兵士たちがこちらに向かってきているのが見える。王国軍の旗を掲げ、市民を守るべく来た兵士たちだ。もう彼らの仕事はお掃除だけとなってしまったのだが。


「一旦家に帰ろ。出頭は...してたほうがいいよなあ、めんどいなあ。」


そうして俺は帰路についた。

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