異世界麻雀は牌効率とイカサマで成り上がる： 追放された不憫な令嬢に、現代風のデジタル麻雀を叩き込んで滅茶苦茶強くしてみた

第13話 不調真っ只中の麻雀令嬢（あるいは手作り判断・鳴き判断）

　麻雀とは不思議なもので、負けが込んでしまって、それを取り返そうとすればするほど、泥沼に嵌ってしまうものである。

　負けは負け。不運があってもそれを甘受して、もうこの日は調子が悪いのだとひと区切りするほうがいい。

　負け続きだからといって、そこから熱くなって変に頭に血を上らせてしまうと、打ち筋はどんどん狂っていくものなのだ。

　リンシヤの牌姿：

　①②③③④⑤七七八３４中中　ドラ五萬

（……この手から中をポンしてたった1000点なんて勿体ないことはしませんわ。リーチツモ役１で1000・2000を狙わないといけませんわ）

　役なしドラなしの手であれば、他家にドラが集まっている可能性を警戒して、役牌1000点ポンして捌きに行く――。

　普段であればそう自然に打てていたはずなのに、無理をして鳴かずに堪えてしまったり。

　リンシヤの牌姿：

　５６７９９④⑥三四四五六六　ツモ８　ドラ七萬

（……ツモ８索で、４７索の受けが出来ましたわ。これなら④⑥筒を払っても両面聴牌が確定しますわ）

　好形リーチを打ちたいがあまり、気がはやって、やり過ぎのシャンテン戻しをしてしまったり。

　※正着は打六萬かツモ切り８索。

　打六萬の利点は良形変化。ダイレクト⑤筒引き聴牌を残しつつ、ツモ④⑥筒がより強くなっており、愚形を解せるツモが③⑦筒→③④⑥⑦筒に倍増している（４７９索ツモでの④⑥払いも含めたら７種類）。

　ツモ切り８索の利点は、ツモ９索やツモ六萬の聴牌、一盃口目の五萬受け。また、裏目４索は４５６の三色になる。

　打④筒は③④⑤筒ツモが、打⑥筒は⑤⑥⑦筒ツモがムダツモになってしまい、残った六萬があまり機能していない（※五萬ツモが一盃口になるのとツモ六萬の形がよくなるぐらいで、ツモ七萬八萬は六萬あってもなくても大差ない）。

　リンシヤの牌姿：

　８巡目

　一三五五六④④④⑧⑧５６７　ツモ８　ドラ四萬

（断么九（タンヤオ）がついてリャンカン解消の打一萬かしら……？　ツモ４６７９索で愚形解消できて、裏目はツモ二萬だけ、チー６索も効きますもの）

　既に８巡目に差し掛かっているのに、聴牌受け入れ最大に取らずに二度受け四萬を残してしまったり。

　※見落としやすいが、二四七萬ツモだけではなくて、五萬⑧筒ツモも聴牌。打一萬の裏目は二萬五萬⑧筒の３種８枚。

　比較は下記。

　-　打８索：聴牌：二四五七萬⑧筒　好形変化：（微妙だが一三六萬）

　-　打一萬：聴牌：四七萬　好形変化：六萬（+三萬）４６７９索⑧筒

　断么九（タンヤオ）移行も四七萬チーが残っているし、そもそも６索チーはシャンテン数が進まない。

　リンシヤの牌姿：

　５巡目

　５６７⑤⑦⑧⑧二三四r五七八　ツモ③　ドラ發

（③筒ツモ切りですわね。この手はツモ六萬の三色目を薄く見つつ、ツモ一二三四五萬の好形変化への渡りもありますわ）

　同様に、愚形フォローがついているのにわざわざフォロー牌を外して変化を求めたり。

　※比較は下記。

　-　打③筒：聴牌：⑥筒六九萬　好形変化：⑤⑧筒一二三四五萬

　-　打二萬：聴牌：④⑥筒六九萬　好形変化：③⑤⑧筒

　ちなみに筆者はこれは打③筒だと思っていたが、下記によると打二萬推奨とのこと。

　一向聴でも、愚形×愚形フォローや良形フォロー×愚形なら良形変化優先、良形×愚形フォローならフォロー牌優先ということだと思われる。

　参考：麻雀激ムズ何切る問題集p24

　リンシヤの牌姿：

　４巡目

　二四四六七八①①①⑥⑦⑧８　ツモ一萬　ドラ⑤筒

（辺張（ペンチャン）の三萬だけの愚形のみ手リーチ……。これは打一萬でツモ６７索の三色に期待ですわね。裏目のツモ三萬も和了（あが）りやすい単騎探しに振り返られて、ツモ６７索なら打①筒で三色目……）

　好形変化が２種類（６７索）しかないのに即リーチを打たずに聴牌外しに構えてしまったり。

　リンシヤの牌姿：

　５巡目

　②④⑧⑧⑧２３６７三四白白　ツモ③　ドラ８索

　場に二萬は二枚切れ。

（……これは、三色目とドラ引きを両方見つつ、タンピンの目も残る打白ですわね。三色目となる二萬が二枚切れとはいえ、それは場況がいいという見方もできますもの）

　弱くなった三四萬塔子（ターツ）を残して、向聴（シャンテン）戻しをしてまで確定しない手役に寄せてしまったり。

　※ツモ１索で三色同順（さんしょくどうじゅん）と断么九（タンヤオ）がなくなる手で、わざわざ白を対子落としして平和（ピンフ）寄せしても、断么九（タンヤオ）も三色同順（さんしょくどうじゅん）も確定しない。

　リンシヤの牌姿：

　５巡目

　二三④⑥⑦⑦⑧⑧⑨白白中中　ドラ②筒

　リンシヤの河：

　九八２４五

　36000点持ち、場に二萬は２枚切れ、一萬は１枚切れで、対面から白が出た場面。

（……白ポンして混一色（ホンイツ）ですわ。この手は1000点ではなく、中ポンできれば8000点まで見える決め手ですわ）

　自分の派手な河で三萬、二萬を並べた後に筒子で和了（あがり）ができると考えて、場況のいい二三萬の両面（リャンメン）待ちを捨ててしまったり。

　リンシヤの牌姿：

　５巡目

　二三④⑥⑦⑦⑧⑧⑨白白中中　ドラ②筒

　リンシヤの河：

　九八２４五

　36000点持ち、場に二萬は２枚切れ、一萬は１枚切れで、対面から白が出た場面。

（……白ポンして混一色（ホンイツ）ですわ。この手は1000点ではなく、中ポンできれば8000点まで見える決め手ですわ）

　自分の派手な河で三萬、二萬を並べた後に筒子で和了（あがり）ができると考えて、場況のいい二三萬の両面（リャンメン）待ちを捨ててしまったり。

　リンシヤの牌姿：

　５巡目

　②③④⑤３３４５６７８六七　ツモ六萬　ドラ①筒

（えっと……これは、くっつき一向聴（イーシャンテン）ですわね？　順子（しゅんつ）と雀頭を抜き出して浮き牌を考えると、②順順⑤＋３順順順順順順＋頭頭七……ですから、打七萬が一番広い……かしら？）

　良形（りょうけい）聴牌（テンパイ）になる受け入れ数を数えずに手を決めてしまったり。

　※良形（りょうけい）聴牌（テンパイ）の数は下記の通り。

　-　打②筒：３４６９索五六八萬

　-　打⑤筒：３４６９索五六八萬

　-　打３索：①②③④⑤⑥筒六萬（＋五八萬）

　-　打七萬：①③④⑥筒２３４索六萬

　-　打六萬：②⑤筒３６９索五八萬

　②⑤筒のノベタンや六九萬の亜両面（リャンメン）で立直でも良いなら打３索がおすすめ。

　ほぼ断么九（タンヤオ）かドラ①筒がらみの立直になり打点良好。

　こういった『ノベタン＋亜両面（リャンメン）＋対子両面（リャンメン）』の形は亜両面（リャンメン）を切ると好形（こうけい）聴牌（テンパイ）になりやすい……が、この形は亜両面（リャンメン）が三面張になっているため少々ややこしくなっており、ドラ①筒受けと断么九（タンヤオ）のなりやすさによる打点面で打３索が勝る結果になる。

　……………………。

　…………。

（……何故ですの！　真剣に打牌を考えているのに……限りなくツモが悪いですわ……っ！）

　辺張（ペンチャン）のペンバーだけではない。

　能力を持っていない一般人相手にもやられてしまう始末。

　こちらのチャンス手はあっさりと流され、こちらが前に出れば相手の本手とぶつかって。

　リンシヤは今や、負の泥沼の渦中にあった。

（勝たないと……っ、早く、強くならないと……！）

　麻雀の難しいところは、期待値的に損である打牌がその場ですぐに分かるわけではないところにある。

　直感に反した打牌、直感的に分かる打牌、その中間の中途半端な打牌――もし牌理的に正しい打牌が直感的に分かるのであればこんなに簡単なことはないが、そうではない。

　麻雀はそんなに単純なものではないのだ。

（……強くなりたいですわ）

　リンシヤはこの日、ほとんど勝つことが出来なかった。

　勝てる場面で勝負をことごとく逃し、凡手の隙を突かれて負けてしまった。

　大敗である。

　よもや、麻雀を勉強する前よりも弱くなっているかもしれない――。

　それほどまでにリンシヤの今の麻雀は、荒れて、壊れていた。