第7話 初バトル!異能力者との闘い(後編②:読みの精度)

「悪いな、もう一回『裏ドラ確認』だぜ」


 東二局、ピープスの親番。早速の裏ドラ確認から局は始まった。


(この俺の能力、長年試してみて分かったが、"親番なら鉄で裏ドラ確認"した方がいい――)


 配牌時の牌姿ぱいし

 二二四七九③④⑧⑨⑨⑨228


 ピープスの配牌は鳴いて進めることができそうにない。

 こういう鳴いて進めることが出来そうにない手なら、尚更裏ドラ確認したほうがいいことが多い。

 ドラは七萬、裏ドラが④筒。裏ドラを知っているピープスからすれば、この手はチャンス手である。


 良形率を優先して打8索とするのがピープス流。

 正着は雀頭候補が足りており、暗刻そばのくっ付きが弱いので打⑧筒だろう。しかし8索にそれほどの魅力はない。




 3巡目。

 二二四七九③④⑧⑨⑨⑨22 ツモ⑥


(……微妙な場所だ)


 正着はツモ切り。⑥筒を持っていても、何かに使えそうで何にもならない。ピープスもこれをツモ切った。




 4巡目。

 二二四七九③④⑧⑨⑨⑨22 ツモ⑦


(……! ちっ、これで変則三面張が振聴フリテンになっちまった)


 とはいえ、シャンテン数は進むので採用せざるを得ない。

 ここは打2索に構える。最終形が振聴三面張になりにくい形を探っていくのだ。




 6巡目。

 二二四七九③④⑦⑧⑨⑨⑨南 ツモ七


(ドラ二枚目か……これは残さざるを得ないな)


 方針を転換して打南。リーチできれば親満確定である。




 7巡目。

 二二四七七九③④⑦⑧⑨⑨⑨ ツモ五

 これは打二萬。二萬の対子落としで十分。




 8巡目。

 二四五七七九③④⑦⑧⑨⑨⑨ ツモ六


(ん……これは……)


 またもや迷いそうな選択に直面する。このままだと振聴フリテン三面張濃厚だが、ドラの七萬を切れば離れ両嵌リャンカンに受け直すことができる。裏ドラの④筒もあることから、火力もまだそこそこ残っている。

 悩んだ末ピープスが選んだのは――打九萬。

 三萬引きで振聴フリテン解消の良形両面リャンメン聴牌テンパイ

 ⑥筒・七萬引きでドラ使い切りで振聴フリテン解消の良形両面リャンメン聴牌テンパイ

 五・六萬引きで良形一向聴イーシャンテン変化。

 裏目は八萬だけ。


(……この冷静な一打を選べるのも、この俺の実力あってのこと)




 9巡目。

 二四五六七七③④⑦⑧⑨⑨⑨ ツモ三萬


(これでフリテン解消の、両面11600聴牌――)


 会心のドラ切りリーチ。

 今度こそ仕留めた、とピープスは考えた。


「今度こそ震えな、リーチだ」


 ピープスの河:

 8北⑥22南二九 七リーチ






 しかし、下家の優男はいきなり打7索と強い押し返し。


「……は、親リーチが怖くねえのか? 舐めた打牌しやがって」

「何か言いたいならロンしてみたらどうだ?」


 と涼し気な表情である。

 更に続けて5索、1索と、索子に関してはほぼノータイムで押し返してくる。安牌のドラ七萬も普通に切ってくるが、これはオリというよりは押されているのだろう。


(……ちっ、河がすっかりぬるくなっちまったぜ)


 ピープスの河:

 8北⑥22南二九 七リーチ ④六⑧3


 随分筋が見えてしまい、通ってない無筋は筒子で②⑤筒、萬子で一四萬・五八萬、索子で69索のみとなった。


(なんでこいつこんなに押してきやがるんだ……!)


 よもや勝負手か、と思った矢先、優男が「あ、ツモ」とあっさりとツモ和了を決めた。


 ②②③④r⑤⑥⑦三四五八八八 ツモ⑤


「ツモ、断么九、赤1は1000、2000だな」


(なんだその手……そんな手で押してきてたのかよ……!)


 奇妙なのは、ドラ七萬切り。ドラ七萬を持っていたら高めタンピンドラドラの三面張で聴牌である。

 親リーチの現物待ちなので黙聴でもいいし、リーチすれば確定で7700以上の勝負手。

 それをよくわからない②筒を止めてピンフドラ1がなくなる筒子三面張に受けているのだ。


(筒子を止めるとして、リーチ打たないのは何故だ? 筒子が場に高いからか? 俺の打⑥筒が速いからといって②⑤筒を看破できるのか? 索子をあっさり勝負できたのは一体……?)


 異様なセンス。

 言葉を失っているピープスをよそに、あの優男は「供託ありがとうよ」と挑発的な口を叩いていた。






 ◇◇◇






 モブ① :17000→16000

 ピープス:33000→29000

 ロナルド:25000→31000

 モブ② :25000→24000


 リーチをかけないこんな手でも、供託が2000点あるおかげであっさりトップ目に立てるというのが麻雀の面白いところ。

 供託2000点というのは案外馬鹿にできない。

 悔しそうなピープスをよそに、俺はかなり満足していた。


 ピープスの河:

 8北⑥22南二九 七リーチ


 今回のリーチも読みやすかった。

 ポイントは索子。

 2索の出てきた場所が端っこで、「2索より上の索子はないよ」と言ってるようなものであった。

 手出しの対子落としから七対子や三暗刻はあまりケアしなくてよいと考えて、とりあえず順当に両面待ちを警戒する。


 次のポイントは二萬→九萬→七萬。

 九萬→七萬の嵌張落としから、「ドラ含み嵌張よりもいいターツを残しました」というターツ選択があったように見える。つまり両面待ち以上が濃厚。

 萬子ゾーンの手出し場所をみると、萬子が六枚ぐらいあるように見えたので、例えば『二四五七七九に五萬を引いて二切り、次に六萬を引いて悩んで九萬切り』『二四四五五七九から二→九→七切り』『二二四六七七九から二→九→七切り』のような牌姿に見える。

 最後、七萬切りリーチ時にツモが入った場所を見ると萬子の端っこゾーンの二個目だったので、萬子は多分、二三四五六七や三三四四五五のような形で完成していると思われる。


 筒子は情報がほとんどなし。

 ⑥筒迷っていたのと、索子がなさそうという情報を加味して、この辺でターツ選択があったと思われる。

 ⑥筒が早すぎるが、ドラ含み七九萬嵌張ターツよりもいいターツ(両面待ちや多面待ち)が筒子に残っているはずなので、無筋の①④⑦、②⑤⑧はかなり警戒する。


 よって、索子はほぼ全押し、萬子は形を読んで押し、筒子警戒ぐらいに読めたわけである。ド本線は⑥筒より内側の①④筒や②⑤筒。


 なので、ほとんど筒子を吸収するつもりで打ってたので、リーチかけず戦っていたが、あっさり運良くツモ和了できたというわけであった。


(まあ、あれだけ⑥筒早いのおかしいし、索子ターツが全然ないとしたら筒子に複合系ありそうだし、⑥筒迷うとしたら③④⑥⑧⑧⑧とかそんな形だったんだろうな……って勝手に思ってたが、どうだろうな。でも22対子落としが変だな……)


 答え合わせをしたかったが、ピープスはそんなことには付き合ってくれなさそうである。俺は淡々と洗牌シーパイの作業をこなすのだった。






 ――――――

 作者コメント:

 ドラ七萬 裏ドラ④筒

 二四五七七九③④⑦⑧⑨⑨⑨ ツモ六


 ピープスは打九萬としましたが、これは打二萬でしょう。二つの差は下記です。

 - 二四五六七七:三萬ツモで打七萬(ドラ出て行く)

 - 四五六七七九:八萬ツモで打四萬(両面リャンメン待ち)


 離れ嵌張カンチャンの二四五六七九にドラ七萬がくっ付いた形ですが、嵌張カンチャンどちらか選ぶならドラ使い切りできて振聴フリテン解消できるほうの嵌八萬のほうが偉いです。


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