第17話 夢のアダマンタイト生活?
この原石は アダマンタイトだよな~。
家に戻って 装備と盾を置き いそいそと ギルドに向う準備をする。
リコと俺が バタバタと用意をしていると
サモンは 盾を拭き始め リンはお昼ご飯を用意し始めた。
2人は いたって平常運転だ。
「今、ご飯の用意ができますからね?」 リンが言うと
昼ごはんなど忘れていた俺とリコは 少し恥ずかしくなり
俺が 「あぁー、た、食べようか。」と言うと。 リコも「え、えぇ そうね。」と
焦ってなどいない ふりをする。
お昼ご飯を食べながら 俺はみんなに 特にリコに くぎを刺す。
「この鉱石は アダマンタイトではないかもしれない。貴重な鉱石でも 宝石でもなく
ただの石ころの可能性もある。 がっかりしないよう 心の準備をしておこう。」
自分も含めて 当てが外れた時の 心のダメージに備える。
「アダマンタイトだったら これでいくらぐらいかな?」 リンが聞いてくる
こぶし大の石が4つ 置いてある。
さぁ? もちろん誰も知らない
西門からギルドに行き 今日は表から入り 受付のカウンターに向う。
今日は少し小太りのシャーリーさんがいた。 挨拶をすると、
「最近 大活躍をされたそうで・・」 先日のオオカミのことだ。
「えぇまあ 少しだけ・・・」 照れながら 俺は袋から鉱石を1つ取り出し
シャーリーさんに見せる。 「少し光っている石を見つけたんですが
なんの石だか 調べてもらえますか?」
シャーリーさんは石を見つめ 「これは・・・ 多分 アダマンタイト鉱石ですね。
詳しく確認します。 査定もしますが これ、お一つですか?」
査定してもらうため 4つとも渡した。
座ってお待ちくださいと カウンターの奥に入っていった。
みんなとうなずきあい 待っていると シャーリーさんが受付から
8人くらいの商人の一団の席に向い 説明をしている。
見ると 先日のエミールさんとクリストフさんもいる。
目が合い 会釈をする。
アダマンタイト 確定だな! 心の中でガッツポーズする。
シャーリーさんとエミールさんとクリストフさんが 3人でこちらの席にやってくる。
エミールさんが 「先日はスコールオオカミをお譲りいただき
ありがとうございました。」 と挨拶をしてくれる。
俺は いえいえと 。頭を掻きながら照れる。
クリストフさんが 「持ち込まれた アダマンタイト鉱石は純度も 申し分ないようですので
金貨8枚でお譲りいただけないでしょうか?」と聞いてくる。
直接決めていいのかな?と 俺はシャーリーさんを見る。 シャーリーさんは
冒険者の持ち込む 動物や素材はギルドで買い取り 商人に斡旋するが
商人同士は 普通に取引をするのが慣例らしい ギルドに手数料は取られない。
と説明してくれる。
クリストフさんは 「私は 鉱石や宝石が専門でして この純度のアダマンタイトなら
金貨8枚で買わせてほしいのですが・・」 と願い出た。
おっ これだけで 前世に換算して160万円か! 25階層の大量の
アダマンタイト鉱石を 思い浮かべ 心の中でほくそ笑む。
やったー! ジャックポットだ! 大金持ちか?俺は大金持ちなのか?
心の声を閉じ込め クリストフさんの目を見て 「お、お願いします。」 と伝える。
クリストフさんは 「ありがとうございます。 しかし、前回はスコールオオカミ
そして 今回はアダマンタイト鉱石と 驚かせられます。
聞いてはまずいでしょうが どうやって手に入れているのでしょうか?」
俺が返答に困っていると 「いえいえもちろん秘密でしょう。ただ、エミールなどは
あなたが稀代の大魔法使いで 魔法のじゅうたんで飛び回り
雷を落として オオカミを捕まえたと 嘯く≪うそぶく≫ もので。」と言う。
エミールさんは 冗談ですよと笑い
「ただ、アダマンタイトは 今では ジルステン領に鉱床があるだけで
しかも年々、産出量が減っていて 今では年間で 20kgぐらいしか取れません。
距離のある このポラーネ領地で見つかり 驚いております。」
う~ん。あまり 大事にならないといいけど・・・
エミールさんが 「ところで 今日の夜 アデルさんはご予定はおありですか?
もしできましたら クリストフと夕食にご招待したいのですが?」と聞いてくる。
なるほど 今後の取引にも 期待しているわけだ。
となれば行った方が・・・ いや、行かねばならないだろう。
リコとリンとサモンをみて うなずき
「はい、4人で伺います。」お店の大体の場所を聞き 挨拶をして別れる。
ふふふふ・・今日も金貨8枚を得てしまった。
「みんなで招待されたのね 緊張する。」とリコが言う。
リコには 初めての経験か。家に帰って 打ち合わせよう。
帰る前に 道具屋で 鉱石の採掘用に つるはしを2本と麻袋を買い
リンとリコに 夕食に行くときの服を買う。
サモンと俺は普通でいいか 気張っても変だし。
家に戻ると 押さえていた気持ちが爆発した。
金貨8枚を並べ 「たったあれだけで 金貨8枚だって!」 俺が言うとリコが
「やったわね!すごい! あれだけあったら大金持ちよ!」と叫ぶ。
2人で抱き合い 跳ねたりする。
リンはパチパチ 拍手をして サモンもうなずく。
落ち着くと 俺はみんなに 今後の説明をする。
「見つけた アダマンタイト鉱石を 大量に売ってしまうと 値崩れして
価格が安くなってしまう。 なにより アダマンタイトが大量に出回ったら
話題になり 出所も追及されてしまうだろう。」 俺は続けて
「もし、国や領主に 知れてしまうと つかまって尋問されたり
厄介な事態になってしまいそうだ。 それに 転移の能力が知れても
ダンジョンのことが知れても その後は 普通の暮らしは
できなくなってしまうだろう。」と説明する。
俺は説明を続ける。
「そこで今回は 商人達に 出所を知られずに 少量ずつ供給することを
持ちかけてみようと思う。
商人達も 俺たちを夕食に招待するのは 今後も俺たちが珍しいものを
手に入れるだろうと 踏んでのことだと思う。
他の商人に引き合わせるのも そのためだ。
俺たちは ギルドを通さずアダマンタイトを定期的に販売できれば
助かるし スコールオオカミやサーベルタイガーを 目立たず売れれば
もっと利益が出せる。お互い おいしい関係になれるわけだ。」
俺が 一通り、説明し終えると、
リコが 「アデルなんかすごい商人っぽい。」と感心する。
普通の42歳のおじさんの対応なんだが 一応、商社にもいたけど・・
「うん、一気に大儲けは考えてないけど 厄介な事態は避けたいので
慎重に行こうと思う。」 と言う。
「どこから取ってきたか聞かれたら どうするの?」 リコが聞く。
言わずに濁しても 定期的に手に入ると約束すれば 取引すると思うよ。
「そう 私たちは聞かれても 何もしゃべらなければいいのね。」リコがみんなと
うなずき合う。「うん。そんな感じでお願いします。」
リンとリコが 買った服を着て見せる。
リコは白のワンピース? よくわからないがひざ丈くらいで清楚な感じかな。
リンは黒地に白の縁取りの服 ちょっとメイドチックだが シックな感じで
かわいらしく 黒髪に よく似合う。
「2人とも よく似合ってる。」と言うと。 喜んでいる。
まだ時間があるから 寝転がろうかと思っていると
外から馬の蹄の音が聞こえてきた。
見ると騎馬兵6人と 馬車が一台 家の前に止まった。
「お前がアデルだな 領主様がお呼び立てだ 馬車に乗れ。」
騎兵の1人が大きい声で呼び立てる。
わぁ 領主様か! ギルド経由でアダマンタイトのことが伝わったのだろう。
みんなで馬車に乗る 騎士は何も言わず 馬車を出す。
説明は何もないが 罪人だったら 鎖でつながれ歩かされるだろう。
でも騎士が6人もいるのは 逃げた場合に備えてか?
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