第15話 ぐふふっ・・と考えたが

レストランで食べ終わると 近くの本屋で 本を4冊ほど買った。


ダンジョンの下の階層への準備で 「ダンジョンの伝承」ともう一冊。


後はこの国の歴史書と 商人の心得みたいな内容の本を買った。


西門から 転移で家に帰り くつろぐ。


サモンは買ってきた道具類をならべて確認しているが 後ろ姿が嬉しそうだ。




サモンに 「この後 森に行こうと思うが 丸太は一人で切り出せるの?


運ぶのは転移で運ぶけど。」 と聞いてみる サモンは


「大丈夫です 親方!」 親方?・・ん~ 呼び方か・・


アデル様は嫌だし恥ずかしい アデルさんも よそよそしいし 親方でもいいか・・


地図を見て サモンの希望する森を確認する。


リンとリコに 森に行こうと伝えると お茶や食べ物を用意してくれた。




森に転移し サモンが選定した木を伐り始めた。


俺とリンとリコは 近くの川べりで 敷物を引いて座っている。


静かな森の中に 木漏れ日が差し込み コーン、コーンと


サモンが木を打つ 甲高い音が響く。


俺は寝転がり 目を閉じる。 適度な間隔の音が心地よく眠くなった。


俺がうとうとしてると リンが自分の膝をポンポンと叩き 


「ご主人様 どうぞ。」と言う。 膝枕だ わ~っと思いつつも


眠いので ズリズリと背中で進み すぐに寝落ちしてしまった。




しばらくして目を覚ますと リンは膝枕で座ったまま 


リコは俺の足を枕にして眠っていた。


2人の寝顔を見ながら 俺はまた、この世界に来られたことに感謝した。


このまま 4~5年もたったら2人も 年頃になり・・・ ぐふふと考えたが


5年たっても 俺がようやく20歳 リコが19歳 リンが18歳か


今でも十分楽しいので 焦らず 楽しさを噛みしめて 生きていこう・・




コーン、コーンとサモンが木を切る音がする。


5年後だと サモンは28歳か。 小さい1人用の家でなく結婚したりしても


住んでいける 母屋と同じぐらいの家を建てた方がいいのかな? 


俺がサモンの方に目を向けるため 起き上がると


2人とも目を覚ました。




リコが 「心地よくて一緒に寝ちゃった。」とあくびをする。


リンも 「私も寝てしまいました・・・」 うんうんとうなずき 


サモンを見ると 予定していた3本目を 半分近くまで削っている。


2人にさっき思ったこと・・・  (年頃になり・・「ぐふふ」ではなく。)


「もう少し 広い家を建てた方が サモンが結婚したり子供ができた時いいのかな?」


と聞いてみると 2人は顔を見合わせ 首をかしげる。「?」




リンがポンと手を打ち 「ご主人様 サモンさんが結婚するとしても


40歳~50歳くらいになると思うので まだ考えなくても大丈夫ではないでしょうか?」


俺が詳しく聞くと リンが説明してくれる。


「この国??・・だけではないと思いますが・・ 子供が持てるようになるのが40歳くらい


からですので 男性も女性も 45歳~55歳くらいで結婚する人が多いですね。」


ちょっとしたショックだ。 目算が外れている・・・


寿命が190歳だと そんな感じか~


まあいい。サモンの手伝いでもして帰るか。


サモンが切り倒した 2本の丸太の枝落としを手伝い 


3本目が倒れたら みんなで枝落としをして 終了だ。




切り出した丸太3本を転移し 家に帰った。 


夕食を済ませ 落ち着くと リコにペンと紙を用意してもらう。


少し正確に計算してみよう。


ちなみにペンは鉄先の万年筆で インク壺でインクを付ける。




ん~ 1日の長さは 多分 前世の36時間分くらいあるだろう 


前世の1.5倍。 


1年が810日だから 365日で割ると およそ2.2倍か


割り算のひっ算なんて ひさしぶりだ。


1年を時間も含めて 比べると 前世の3.3倍になるわけだ。


寿命を190年で 計算すると・・  


地球時間で考えると 627年の人生か・・ エルフか!!


計算した紙をリンが見つけ 「なんですかこれ!?」


「ご主人様は 難しい計算もできるのですね。」と驚いている。




翌朝もゆっくり起きた。


サモンは朝から 切り出した丸太を加工している。


リンとリコは いそいそと掃除をしている。 皆 働き者だ。




俺はベッドに寝転がり 買ってきた歴史書を見ていたが


すぐに飽きて 転がったりしている。


ボーッとしていると リンが入ってきた


「この部屋の棚も掃除していいですか?」 と聞いてくる


いいよと答えて見ていると 椅子を使い棚の上の飾りのようなものを


拭いている。


 


後ろ姿に見とれてしまう。 まあ 毎日なんだけど・・


こんなかわいい子が近くで掃除してる 前世であのままいたら


こんな機会はなかっただろう 幸せだ。 ものすごく幸せだ。


リンがちらとこちらを見て 俺が見ていると 少し微笑む。


俺は少し視線を逸らせ またリンが掃除しているところを見ている。




15歳のアデルか15歳ころの俺だったら 無理に視線を逸らせ 


見ないように そのまま 目を背け 頑張ってしまうだろう。


だが 中身が42歳の俺は頑張らない。 見てしまう。


『10年ずっとこうして見ていても リンはまだ23歳です


しかも その10年間は 前世の33年分にあたります。』


頭のコンピューターが くだらない計算をしている。




リンが置物を一つ持って 向こうで拭きに行った ホコリが立たないようにだろう。


戻ってきて また棚を拭き始めると


「ここも拭く?」 リコがぞうきんを手に入ってきた。


リンが椅子に乗り上の段を リコが背伸びして中段を拭いている。


二人のすらりとした足を見比べ 思わずのけぞったりしてみる。


この世界の人々と見比べても 二人はとてもかわいい。


リコは金色に近い明るめの髪で 二重のベストバランスな目鼻立ち。


リンは一重で切れ長の目で 黒髪 憂いがある美少女だ。


二人ともかなり可愛いよな・・ 小さい声で呟いてみる。


リコが振り向き 当たり前のように 「そうよ 幸せでしょ。」と言ってくる。


「うん。」と小さくうなずく。


  


棚の掃除も終わってしまったので 午後も半ばから街に夕食の買い出しに向った。


雑貨と食料を買って帰る。


途中、孤児の子を見かけたので リンとリコがパンを10個買い 渡した。


「お金をたくさん渡したりすると 争いがおこるから。」とリコが言う。




うちに戻り 夕食の時に 明日のダンジョンの打ち合わせをする。「明日は16階層のイノシシのところからだ。」 と言うと 3人がうなずく。「多分 下に行くほど危険な魔物がいると思うので


いけるところまでは進むが 危険になったらそれ以上は進まない。」


自分も含めて 言い聞かせる。 危険が見えたら そこで終了にしよう。


命を懸ける必要はないからね。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る