第14話 フェンリルって知ってる?

次回以降の 作戦を考えるため 一旦、ダンジョンの屋上に転移した。


今日1日で 午前6階層 午後6階層と 12階層も進めた。


次回は16階層からだ 33階層までの半分くらいまで進んだ事になる。




4~6階層までは ウサギとオオカミの魔物


7~9階層までは アリと蜘蛛の魔物


10~12階層までは スライムと植物の魔物


13~15階層までは ハチとムカデの魔物


う~ん なんかここまでは いまいちパッとしないな。


アリ・蜘蛛・スライム・植物・ハチ・ムカデと この辺全部売れないだろう。


ギルドでは 買い取ってはくれないだろうな。


とりあえず今日は オオカミを1匹 狩って帰ろう。




「6階層に戻って オオカミの魔物を1匹捕獲して 帰ろうと思う。」とみんなに伝える


リコとサモンが少し疲れた感じで うなずく。 リンは元気に「ハイ!」と答える。


リンが一番元気だよな~ いつも。


6階層の壁沿いに盾を構え 横並びに転移すると


午前中にたくさん転移させてしまったせいか 階段のそばには1匹もいなかった。


午前中に回らなかった洞窟の方に進んでいくと


洞窟の突き当りくらいに 2匹のオオカミを発見した。




小さめのオオカミを転移で排除すると 大きい方のオオカミが


こちらに気が付き ヴゥッ!と歯を剥き威嚇する。


その時、見えていなかった脇の洞窟から もう一匹のオオカミが姿を現した。


でかい!今までのオオカミより 1周りか2周り大きい。


頭からお尻までで 3mくらいあるだろうか。


体型も首が長く 顔も細長い。 違う種類なんだろうか?




あいつにしよう。 手前の唸っているオオカミを遠くの森に転移させると


でかいオオカミは 猛然とこちらに向け駆け出してきた。


スピードが乗ったところで 90度直角に向きを転移させる。


バキッと大きい音とともに オオカミは壁に激突した。


かなりのダメージだろう オオカミは崩れ落ちたが まだピクピクとしている。


これは近づいてはいけないやつだ。




俺は オオカミをダンジョン裏手の荒れ地の上空30mに 


足を上向きにして転移させる。


そのまま落下して絶命するだろう。 多分・・


「わぁ 大きいオオカミでしたね。」 とリンが言う。




荒れ地に着くと 50mくらい離れた場所に オオカミが倒れている。


盾を構え近くまで行ってみが まったく動かない。


盾の端で 突いてみても反応がない 絶命している。


血抜きの為 俺が盾で狼の顔を押さえつけ サモンに首を切ってもらう。


血がだいぶ抜けたところで リコとリンが オオカミの毛並みを撫でている。


リンが 「ふかふかですね。 こんなお布団があったらいいですね。」と言っている。


リコも同じ笑顔で毛皮を撫でながら 「ダメよ 高く売れそうよ。」


と言ってリンを制していた。




血が抜けたところで 家に転移する。


家に入り 「しばらく休んで 後でオオカミをギルドに持っていこう。」


とみんなに伝える。


「そして明日は ダンジョンにも狩りにもいかず 休みにしよう。」 


大喜びかと思ったら 皆、すこし戸惑ってるが まあいいか。




しばらくの休息後 リコもうずうずしていたので 「よし!そろそろ行こうか。」


みんなに伝えて 庭に出る。庭と言ってもただの空き地で植え込みも何もないのだが


ちなみに家は 道から10mくらい離れているが 家までの道もなく


ただの空き地である。家の裏手に 7~8m離れて納屋があるだけだ。


狩ってきたオオカミは 道と反対側の家の裏手に シートをかぶせている。


オオカミを荷車に乗せると 大きくてはみ出る。


頭と体を丸め 荷台に斜めに載せても 足がはみ出るので


足としっぽはロープで固定して 何とか運べる状態になった。


荷車ごと4人で 西門の陰に転移して ギルドに運び込む。




裏手で 顔見知りになった 解体のお兄さん ベルナールさんに頼むと 


「こ、これは?」 と言って 奥に引っ込んでいった。図鑑を持ってすぐに出てくると 


「これはスコールオオカミですね?」 と聞いてくる。  


俺は「え、ええっ。」とうなずくと。 不審そうに俺の顔を見ている。 


わかってないだろうと思って 説明をしてくれる。


「このオオカミは 伝説のフェンリルの子孫と呼ばれている オオカミです。」


続けて 「とても素早く 狡猾で 騎士団でも捕獲は難しいかと・・・」 


いろいろ聞かれると困るので。 被せて「買取をお願いします。」 続けて俺は


「解体できますか?」と聞くと まじめなベルナールさんは 


「大丈夫です。もちろん初めてですが・・」 と言う。


「じゃあお願いします。」 と俺は言って 表のカウンター前の待合の席につく。


フェンリルて知ってる? みんなに聞いても 誰も知らないらしい。




待っていると、ベルナールさんが 商人ギルドの前に座っていた商人2人と


話している。 ベルナールさんがこちらを見て 商人2人がこちらを見る。


また、しばらく話して ベルナールさんが 奥へ引っ込んだ。


2人の商人が こちらのテーブルへ来て 挨拶をした。


「商人のエミールです。」 小太りの商人が言う。「こちらがクリストフ。」


隣の痩せて背の高い商人が微笑み会釈する。


「私たちは 王都とポラーネ領で 商売をしています。」 


「大変珍しい毛皮が手に入ったので お礼が言えればと思い ご挨拶に伺いました。」


もう、ギルドとは 話はついているらしい。


「商人のアデルです。」後ろを指し 仲間のリンとリコとサモンです。と紹介する。




「失礼ですが あの手の大型の魔獣ですと 騎士団でも捕獲は難しいと思いますが


どのように手に入れたのでしょうか?」 エミールさんも聞いてくるので


俺は 「いえ、ちょうど弱ってるところだったんだと思います。」と答える。


俺のいでたちや装備を見て 普通の商人だと判断したのか


「そうでしたか アデルさんも商人でしたらお付き合いもあるかもしれません


またよろしくお願いします。」と そそくさと戻っていった。


エミールさんが立ち去り間もなく ベルナールさんが俺たちを呼んだ。




スコールオオカミの金額は 金貨27枚だった。


前世で考えると 540万円か おおっ!


オオカミは 銀貨2~4枚と聞いていたので ものすごい誤算だ


多分エミールさんが 金貨30枚で買い取り ギルドの手数料が1割だろう


当然 王都で金貨100枚くらいで売りさばく 目途がついているのだろう


まあいい。元手はゼロだし。 とにかく大当たりだ。




ギルドから出るときは もう日も暮かけていた。


大金が手に入ったのだし どこかで祝杯をと思ったが


さすがに今日はみな 疲れた顔をしていたので 家に帰ることにした。


家に帰ると リンとリコが 食事を作り サモンが盾や斧を洗い 水を汲んだりしている。


夕食ができると皆で食べながら 俺は伝える。


「明日と明後日は休みにしよう。」 大金が手に入ったので 連休にしたい。


「午前中 サモンの大工道具を買いに行こうと思う。


あとサモンの服 みんなの靴とか買いに行こう。」


了解です。 みんなうなずく。




「あと みんな欲しいものはないかな?」 聞いてみると


リコが 「私とリンは孤児だったでしょ。ゆっくり眠れるベッドなんかなかったの。


決まって帰れる家もなかったし 毎日の食事も食べれないこともたくさんあって


新しい服も買ったことはなかったわ でも 今は全部そろってるの


だから 欲しいものなんて ないのよ。」と説明する。


リンが 「今はとっても幸せです。」 と言った。


サモンが恥ずかしそうに 「・・だ 大工道具が・・・」


俺は 「それは決まってるから 大丈夫。」 と言った。




翌日はゆっくり起きて 朝ご飯を食べて 街に向う。


街の北側の道具街で のこぎり・ノミ・カンナ・ハンマー・木槌 などなど・・


サモンには きっちりしたものを作ってほしい 納屋や家の修繕もしたい


だから高くても使い勝手の良い工具を  サイズ違いで必要な工具なども


遠慮しないで選んでくれと 念を押す。


釘や漆喰 ニスなども買い込む。




材木や材料について聞くと 材木を転移してもらえるなら 自分で切り出したいと言う。


それなら後で連れて行こう。


次に服屋でサモンの服を3着 リンとリコに選んでもらい その場で着替える。


4人の靴を3足づつ買う サモンもリンもリコも お店で履き替えた。 


リコとリンには 色違いのペンダントを買った 特に高いものでなく


店頭の飾ってあったものだ。 似合いそうだったし。


おしゃれをしてもいいんだよというメッセージみたいなもんだ。


2人ともすごく 喜んでくれた。


買ったものは 人目のないときに家に転移しているので 手ブラだ。




お昼も近いので リンとリコに改めて聞いてみる


「お店に入って食べるのは まずいのかな?」


リコが 「そうね 特に私は孤児のリーダーみたいな感じで 知られてるから


孤児なんか入れたら 食い逃げされるのが当たり前でしょ だから入らなの。」


リンが重ねて  「店で食事をする奴隷もいません 店も嫌がります。」


サモンも目を伏せうなずく。 なるほどなぁ~ 




俺は3人の立ち姿を見て考える


そこにビーフシチューのお店があるんだけど お店に聞いてみてみいいかな?


お店はオレンジの看板に ビーフシチューの文字と おいしそうな絵が描いてある。


3人は しぶしぶうなずく。


いらっしゃいませと出てきたおばさんに 小声で説明する。


「商人のアデルと申します。 前に孤児だったリコと 後ろの二人は


私の奴隷になるのですが メイドと大工です。


食べる分は前払いしますので 食事はできないでしょうか?」


今回、食べられても 次回、奴隷と知れて断られるなんてことになったら


なおさら、つらいので 正直に話して聞いてみる。




おばさんは戸口まで出てきて 3人を見ると


「まぁいいわ 入んなさいと言ってくれた。」


「あんたリコね 知ってるわ。 すっかり年頃のかわいい子になって・・」


俺の顔を見ておばさんは 「1年前だったら入れてないわよ


こんな険しい顔をして 街の中をキョロキョロ 見渡してたからね。」


おばさんは険しい顔をして見せる。




続けてリンを見て  あんたはこの前 捕まった奴隷の子だね。


「はい。今はご主人様に買われて・・・ 」 リンが言うと 


おばさんは眉をしかめてリンに 「まぁ、それじゃあ・・・」


リンは真っ赤になり顔を伏せて うなずく。「はいっ・・」


なんか間違った情報が流れてないか?


俺は銀貨を1枚 出して ビーフシチュー5人前とパン・お茶を頼み


追加があるかもしれないので 最後に清算してくださいと言う。


リンとリコは お店で食べたことがないので 緊張気味に店を見渡す


ビーフシチューが運ばれてきて みんなで食べる。おいしい。


とりあえず1軒 入れるお店ができた 良しとしよう。

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