第12話 男手も必要だ。

家に帰ってゴロゴロしながら思った。 ジャージみたいな部屋着が欲しい!


今日の成果はまずまずだった。 40万円の収益は悪くない。


欲を言うと 出来たら1人 男手が欲しいな。


ギルドまでの荷運びや今日の魚の血抜き作業の時も 痛感した。


今後の ダンジョンでも リンとリコが危険にさらされぬよう 盾を持って


ガードできるものがいれば 安心感が違う。


人を雇うとしたら 相場はいいくらぐらいだろうか? 月に銀貨8~10枚くらいか?




2人が帰ってきた。 たっぷりの夕食の買い物と 少しの自分たちの買い物。


うつむきながら 銀貨1枚分は 孤児の子供たちに食べ物を与えたそうだ。


「すみません。」 と銀貨2枚のお釣りを差し出す。


「全然かまわないよ 好きなことに使っていいよ。」 と言うと


ありがとう 二人とも抱き着いてくる。 ん?これってハグだよな。


俺は抱き着かれるごとに感激してきたが わりと普通の感謝の表現なのか?


モテてるわけではないのか? 舞い上がらないよう気を付けよう。


気が付くと リコもミニスカートになっている。


特には 触れないでおこう・・




夕食の時に 2人に相談する。


孤児の中で力仕事や ダンジョンの 護衛が務まるような子は いないかな?


リコが言う 「いないわね孤児で一番年長の男の子で13歳のロシュトなんだけど


ダンジョンに連れて言ったら 逆に私が守ってあげなければならない気がするわ・・・」


そうか ん~  しばらく沈黙していると、


リンが言う 「あのぉ 私が奴隷商で売られていた時に 同じようにずっと売られずに


残ってた人がいて だから私と同じ一番奥の牢だったんですけれど、


その人は 奴隷を買いに来た人に 何を聞かれても なにもしゃべらないんです。


名前もできる仕事も 何を聞かれても返事をしないので 引き取られないんです。」


それだと俺も困るかな? 何もしなさそうだし。




リンが続けて言う 「でも 夜寝ているときにたまに寝言が聞こえるんです。


ちがう、俺はやってない 俺のせいじゃないって言ってて


普通にしゃべれるんだと思います。 でも何か事情があって返事ができないのかなと思います。


でも、悪い人ではないようなので かわいそうで ゆっくり時間をかければ 


しゃべってくれると思います。どれくらいお仕事ができるのかは わかりませんが。」


少し考える。 どうだろう? 本当は奴隷も考えていたんだが・・


リンと同じ立場の人が増えると リンとの接点が減るような気もして 


考えから外していたんだよな。


ただ奴隷だと 人を雇うよりは転移魔法のことを吹聴する可能性は低くなりそうだし


「明日 見に行ってみようか。」 二人に言う。




翌日、まず奴隷商店に足を運ぶ。


午前中なのに 奴隷商店は薄暗い感じで 並んでいる牢の空気が重苦しい。


店主のおじさんは 前と同じく陽気な感じで出てきた。


リンを見て驚く。「うちにいるときに今みたいだったら 金貨15枚はいけたんじゃないか?」


などと軽口を言う。リンは ごめんなさい みたいな感じで 笑顔で会釈する。


俺はリンと見合わせ 店主に言う 一番奥の奴隷を見てみたいんだ。


店主はなるほどなと言い 奥に案内する。


リンもいるから知ってると思うが そういつは少し頭がとろいんだ。


何を聞いても返事しないし みんなを怒らせちまう。




牢の前に立つと 男はかなりの大男で 30歳くらいか


こちらが来ても うつむいたまま 反応しない。


いらだった店主が おい、お前を見に来た客だぞ! と怒鳴る。


ゆっくりと顔を上げる男に 聞いてみる 「俺はアデル 名前は?」


予想通り、返事をしない。しばらく待ってみるが返事をしない。


店主がいらだち 「名前を答えろ! 名前を!!」


俺は 店主に笑顔で 「大丈夫ですから。」 と言い


「仕事は何ができる?」 別の質問をしてみる やはり答えない。


時間をおいてみるが 押し黙ったまま動かない。


聞いていたので まだ待つつもりだが・・・ どうしよう? 


先に店主に聞いておく 「この奴隷はいくらですか?」


店主は困って 「買うのかい? 金貨3枚だが?」


俺は無言で問いかける 「いやっ、まぁ 金貨2枚だな。」




奴隷の男はこのやり取りを聞いていても 無反応だ。


俺は牢の鉄格子をコンコンとたたき 「リンがお前のことを知っていた。」


と伝えると リンの方に手を示す。男の目がわずかに動きリンを見る。


動きは少ないが 男の目が見開かれた。


向かいの牢に鎖でつながれていたリンが記憶にあり


今のリンの姿と つながったのだろう


「俺はアデル お前を買いに来た。わかるか?」


再び沈黙が訪れる 優に1分は超えたところで 男が


「お、お・・ 俺は大工だ・・・」 男が答えた。


そうか大工か 名前はなんていう名前だ?


「・・・ っ・・・ サモン。」  


店主は戸惑っていたが。 俺は男を買い取った。


リンの時よりは だいぶ雑に 焼き印を入れられ 店主のおじさんは


「また安く買われちまったが うちじゃ売れない2人だったんで


助かったよ。」 と言って送り出してくれた。




サモンはよろめきながら外に出た。


なにか食べ物を食べさせようか?


スープの屋台があったので スープを買ってリコが与えた。


サモンは自分だけ与えられ 戸惑いこちらを見る。


「俺たちは朝ご飯を食べてきてる。」とサモンに言って 促す。




あっという間にスープを食べた。多分足りないよな?


「もっと食べるか?」と聞くと サモンは俺をじっと見ている。


足りないに決まってるが そんなこと要求していいわけがないし・・・


とか考えているんだろうな。


リコにスープとパンを買ってもらい リンに向かいの屋台で肉の串焼きを買ってもらう。


サモンの前に置く 最後に肉が来たとき目を見開いた。


「食べていいよ 動けるようにちゃんと食べてくれ。」と言うと


ためらいながらも 食べ始めた。


スープを飲みパンを食べ 肉を食べ始めた時に サモンの目から涙が流れた


この大男じゃ 食事が足りたことはなかったのかもしれない。


食べながら涙を流しながら 「ありがとうございます。」と3回も言った。


リンの言う通り 普通にしゃべれるのかな?




食べ終わり 足取りもしっかりしたサモンに 家に向いながら 説明する。


俺は商人だけれど、今は冒険者の仕事をしている。


魔物と闘うとき 護衛をしたり 獲物を運んだり 家の水くみなどが


サモンの仕事だと教える。


サモンの年齢を聞くと 23歳だった 30歳くらいだと思ってた。


ただ 割と普通に受け答えできる。 これはいい。


リンのお手柄だろう


「・・魔物と戦ったことはありません。」 とサモンが言う。


大丈夫、戦わないから 俺も戦わないんだけど・・ 説明できない!


あと 俺は転移の魔法が使えるが 人には内緒にしてほしい 伝える。


まぁ わけわからんよね?




西門から転移魔法を使うときに 説明する。


ここから家までは歩けば15分くらいかかる 魔法で転移すると一瞬で着く


庭に着くと サモンがゆっくり見渡す。 驚いてないことに 俺が驚く。


ここが俺たちの家だ 中に招き入れる。  


寝るときはあすこの納屋でいいかと聞くと サモンがうなずく。


サモンに納屋を使いやすいように片付けてもらい。


昼食ができると サモンにもまだ食べれるか聞く。


気まずそうに 食べれるというので 4人で 昼食を食べる。




リンとリコが 井戸の場所や 周りのいろんなことを教える。


リコが「食事は 朝・昼・晩で3回も食べれるのよ 驚きよね?」と言うと


サモンが初めて 驚きの表情をした。


リコが続けて 「あなたも奴隷で食事が少なくて大変だったでしょうが


私なんかずっと孤児だったから 2~3日食べられないなんて ざらだったわ。」


なぜかリコが上から言っている。


サモンは畏敬の念で リコを見てうなずく。 上下関係が決まったようだ。


サモンが少し年上で 心配したが 旨くやっていけそうだ。




午後からはサモンに慣れてもらうため オークを1匹狩りに行こうと伝える。


昼食を取り終え、少し休むと 4人でダンジョンの屋上に転移した。


ここがポラーネダンジョンだ サモンに教える。


周囲を見渡すと ゴブリンしかいない 1匹剣を持っていたので 納屋に移す。


みんなにダンジョンの3階層に移動することを伝え 転移する。


廊下の先に オークが1匹いた。


オークと俺たち4人は ダンジョンの裏の荒れ地に転移した。


キョロキョロしているオークを 上空30mに転移させる 落ちたオークは絶命した


サモンに血抜きできるか聞くと うなずく。


短剣を渡すと 剣を渡されたことに驚いたていたが オーク首の頸動脈を切った。


血抜きの間 サモンに聞いた 質問があれば聞いてくれ。


サモンは首を振った。




家に戻り オークを荷車に乗せ 大きな布を被せギルドに向う。


ゴブリンから奪った剣も乗せている。


いつも通り 西門に転移して荷車を押すが サモンがいるため楽に進む 


サモンだけでも運べるが 後ろから押して手伝う。


ギルドに預け 査定を待つ間に サモンの冒険者登録をすると


名前や数字程度は 皆、文字が書ける 識字率が高いのか?




本日の成果は


オーク  銀貨2枚 銅貨2枚


剣  銅貨10枚


サモンの登録料で 銀貨1枚払っている


帰りに武器屋によって 盾を買う。


サモンが 持ち歩くのに 問題ない程度の 大きな盾を買う。


リンとリコにも持ちやすい盾を選ぶ。


サモンの盾が銀貨8枚 リコとリンがそれぞれ銀貨3枚程度だ。


俺は ほど良かったので前に入手した 丸い盾を使う。


これで全員に 盾がいきわたる 俺たちの装備は何といっても盾だ。


帰りに 大量の小麦粉と豆と肉を買い 荷車に乗せて帰る。

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