第6話 検証とお買い物

翌朝 日の光で目覚める 部屋の中を見渡すと


見慣れない家具や調度品がある すべて古びた木製品だ。


わぁ~ 異世界のままだ ほんとに異世界に転生したんだと 改めて実感する。




部屋を出ると 「おはようございます ご主人様! ご飯できてますよ。」


リンがにっこり微笑みかける


ご、ご主人様~? なんだこの美少女は~~!!


改めてリンを見ると 黒髪で肩口までのショートカット


切れ長の大きな綺麗な形の目 細く通った鼻 小さな口元


寝起きに電撃が・・ また転生してしまいそうだ。


「あっ・・ああ おはよう」 


リンが朝食を用意してくれる 昨日のスープとパンだ。


「お肉が少し残っていたので スープに入れて煮込んでみました。」


わぁメイドさんだ 細身の体にスラっとした足 しかも俺の奴隷!!!


いかんいかん 幸せに浸りすぎてると馬鹿になってしまう。




食事を済ませるとソファーに座り 転移魔法について考える。


低いテーブルの上には リンゴとフォークを置いている。


転移! リンゴを少し移動させる  問題ない能力はちゃんとある。


転移! リンゴを中央に戻す  転移! テーブルの真下に移動させる。


うむっ テーブルの天板も通過するようだ


今度はフォークをリンゴに刺さるように転移させる。


転移! フォークは刺さらずリンゴの横にカチャンと落ちた


刺さらない 刺さるには別の力が必要なんだろう。


次はフォークの向きを変えてみる 転移! 


フォークは逆向きに移動した。 向きは変えられる これは大きいな


転移! 裏返し  転移!逆向きの裏返し  向きは自在に変えられる。




気が付くとリンが目を丸くしている。


「すごい ご主人様! これを広場でやったらお金が稼げます。」


大道芸か・・ うむ~


その後 リンゴを部屋の端から端まで 12mくらいの転移に成功した。


暖炉にぶつけそうになりながら ダイニングテーブルの転移も成功


危ないですよと言われ


テーブルを一旦 庭に転移! 問題ない


テーブルの脚が汚れてしまった あとで拭こう  


どうせ後で拭かなきゃならないならと  20mくらい先まで転移させる


おおっ 20mもいける。 


調子に乗って そこからさらに30m先まで 転移!どうだ!


いけた! 窓の外の遠くに ポツンと小さくテーブルが見える。


シュールな景色だ。


一緒に窓から覗いているリンが 「テーブル行っちゃいましたね。」と言った。


「いま戻すから。」  どうせなら一気に元の場所に 転移!


出来た! テーブルは居間の元の場所に出現した。




リンとテーブルの脚を拭きながら考える。 


昨日と比べると 飛躍的な進歩を遂げてるな 


荷物の積み下ろしとかもできそうだ。


家の中では限界みたいだし 「ちょっと外で試してくるよ。」


リンに告げると 「私も行っていいですか?」 と聞いてくる。


いいよ もちろん!


二人で街とは反対方面に向かう。


「あそこの林を右側に進むと 荒れ地に出ますよ 人はめったに来ません。」


おおっ! 俺の求めているものをわかってる 賢い子だ


しばらく歩いて 荒れ地を中ほどまできた


周りを見渡すと人家は無く 遠くに山々がそびえたっている。




ありました 大きな岩が


早速、俺の背丈ぐらいの岩を 転移してみる。


20m 100m 200m  問題なく転移できた


リンも すごいすごいと手をたたいた。わりと平静だけど


次はいよいよ この家ぐらいの大きさに挑戦してみるぞ!


リンを驚かせるべく 宣言しつつ 転移!


ゴボッ 50m先に岩は転移した ただ下の埋まってるほうが大きかったようで


ものすごく大きい岩が 荒れ地の真ん中にそびえ立つ。


もとあった場所にはでっかい穴が開いている


ここまでいけるのか? 驚きすぎて冷静になっていると


リンも引き気味に わぁーと言っている


やはり人目につかないほうがいいのだろう


そっと巨大な岩を もとの穴の位置に戻す。




上から戻すため 土が崩れ 最初よりはだいぶ出てしまっているが 良しとしよう


最後にあと一つ 俺は地面を見据えて 頭に中に2m四方の土を思い描く


転移! 地面に正方形の穴が開き 近くに土の山ができた。


現れた時は 正方形だったが崩れて山になったのだ


ん?思いつくままにやっていたが これは複数の砂粒だ


ということは複数の物の移動も可能なんだろう。


試しに 3個 4個の岩をいっぺんに転移したが 出来た。


2個を入れ替えることもできた。


う~ん 検証終了! 「リン帰ろうか。」




すごく得たものの大きい検証だったが


習得の速度が速すぎて頭が付いてこない 少し考えよう


「すごいですねご主人様 隣の国を攻撃できそう。」


リンが怖いことを言う  俺は笑いながら


「そのうち あの山ぐらいまで飛ばせるかもね 転移って・・」


大岩が消えた


「あっ!あたし見えましたあの山の頂上のところに黒い点が・・・」


俺には何も見えなかった 音も聞こえない・・・


「リン!急いで帰ろう!」 リンに告げて 急ぎ足で家に向う。




しばらく無言で 来た道を家に戻る


道の途中で 思い出した。


1つ検証し忘れた 「リン 俺に向って小石を投げてくれないか?」


リンは はい!と返事をして元気に振りかぶる


「いやっ 下から軽くでいいから・・」


はい! リンは俺に向けて小石を投げた。


小石を 1mくらい横にずらして転移させると 俺の1m横を飛んで行った。


うん。加速された小石は転移しても 加速は維持している


もう一度投げてくれるか。 はい!


リンに再度投げてもらった小石を 今度は90度向きを変え 転移させた


小石は真横に飛んで行った。


飛んでるものの向きを変えると 変えた方向に飛び続ける


今日は非常に有意義な検証ができました。


家に帰って一息入れよう




家に入りソファーにだらける


リンが申し訳なさそうに ご主人様お茶がありませんと


水を入れた陶器のコップを置く


じゃあ後で 色々買い出しに行こう そのついでにお昼ご飯を食べて


リンの食べたいものを教えて


いえ ご主人様 奴隷は夜に一度パンとスープが普通です


その返答は 予想してた。


じゃあ 行ってから考えようか。




しばらく休んだ。リンは掃除の続きをしている。


実は俺は何もしたくないんだ ずっとソファーやベッドでダラダラしていたい


せっかく異世界に来たのだから 楽して儲けて ウハウハしたい。


そんなことを考えていると ソファーの俺の前にリンが来た


「ご主人様 必要なものがいっぱいあるんですが・・」


「そうか、じゃあ街に出かけてそろえよう


そこに引き出しに入れてある お金を出して。」 俺は立ち上がる。


「あのぅ ご主人様 このような大金が家に置いてあるのは危ないと思います。


出来れば大金貨などは商人ギルドに預けたほうがよろしいかと。」


さっき検証に出た時も リンに言われなかったら 置きっぱなしにしてたしね


検証のことで頭がいっぱいだったんだ。


「商人ギルドに預けられるの?」


はい。商人の方はためたお金などは用心の為 ギルドに預けています。


そうか じゃあ商人ギルドにもよってみよう。




道すがらリンに聞いてみる。


「今日は暦では何日なの?」


3月78日です もうすぐ4月になります。


リンに教えてもらった 気温は一年を通してさほど変わらない。


1月と6月ごろは 雨が続く日が多いらしい 雨期と乾期に分かれているのかな?


1週間は8日 そのうちの1日は休養日で 多くのお店が休みのようだ


体感的に前世と比べて 1日は36時間くらいありそうだ。


体は慣れているようで 昨日の夜は12~13時間くらい寝ているだろう




城門が見えてきた ここの西門の門番は不在の場合も多い。昨日もいなかった。


街に着いた。 まずリンの服と俺の服を買おう。


リンの今着ている服は 上下紺色で襟の部分だけ二重に縁どっている


シンプルな服だ。 ただ、汚れて痛んでいる。


女の子としては かなり苦痛なんじゃないかと思う。


「私はそんな・・」 というリンに 上下四枚づつ買いなさい 命令ですというと


しぶしぶながら少しうれしそうに 服を選ぶ。


俺も自分の ズボンとワークシャツを三着ずつ選ぶ。


下着はトランクスっぽいのがあったので四枚ほど買った。




しばらく待っていると リンが焦った感じで 時間がかかって申し訳ございません


選んだ服を見せに来る。


リンが選んだのなら何でもいいのだが スカートがみんな短いよね?


「はい。布地の量で服の値段が違います。私の年でしたらこれで十分です。」という


あえて反論する意味はなく むしろ気が変わらないうちにと俺は言う。


「お会計お願いします。」


リンの着ていた服が 街の人たちと比べても 痛みや汚れで見劣りしていたので


店の試着室で買った服に着替えた。


着替えたリンは 格段にかわいい。思わず足に目が行ってしまうが。


着替えた服は農作業や掃除用にとっておくらしい。


女の人の下着はここでは売っていなかった。


男子禁制の専門店があり リンに銀貨一枚を渡し 四枚以上買ってきなさいと命令した。


全部買っても 銀貨1枚と銅貨数枚だった。


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