第3話 孤児との遭遇

俺がリンゴを戻したところで


「あなた 今、何をしたの?」 いきなり後ろから大きな声がした。


おわっ!誰かいたのか? 


見ると 同じ年代くらいの 髪の毛が金色の女の子がいる。


「魔法? 魔法でリンゴを盗んだの?」 と聞いてくる。


どうしよう この事態は・・ いきなり窮地だ・・


とりあえず 返したことは伝えよう


「いやっ すぐに元に戻した。 取ってはいないよ。」 と言うと


女の子はリンゴの山を見て 「ふ~ん。 魔法で戻したの?」 と聞いてくる。


俺は仕方なく うなずく。 「うん、まあ」




女の子は 腕組みをして考え 聞いてくる。


「あなたこの辺じゃ 見ない顔よね どこかから来たの?孤児なの?」


孤児って・・ 俺ってそんな年齢に見えるのか?


「いや、俺は商人で 一応、お金は持っている。」 俺が答えると


「じゃぁ 普通に買えばいいじゃない。」 女の子が言うので 


俺はしぶしぶ、「それが今 金貨しかもってなくて・・」


厄介なことになったが 同年代ぐらいの女の子だ 


ちょうどいいので いろいろ聞き出そう。 俺は女の子に


「これなんだけど・・・」 俺はポケットから 1枚の金貨を見せた。


女の子は驚き 「これ大金貨じゃない! こんなの屋台で使えるわけないでしょ


普通の金貨だって 断られるのに・・」 とあきれ顔だ。


まあ、この国の貨幣では あるらしい。 しかも大金みたいだ。




とりあえず 作り話でごまかして 納得してもらおう。


「俺は商人の一団で 旅をしていてたんだ。 途中で盗賊に襲われてしまい


みんなバラバラに逃げたんだ。 その時、持ってこれたのがこれだけで・・・」


「ふ~ん」 女の子は 一応、信じているようだ。


「どこかで 両替 出来るところはないかな?」 と聞いてみる。


女の子は 少し考え


「あなた この街に来たばかりなのよね? よかったら私が


両替の場所や この街の事を案内してあげるわよ 1日銀貨1枚でどう?」


う~ん 銀貨1枚っていくらぐらいだ? 


まあ 魔法も見られてしまったことだし この女の子から いろいろ教えてもらおう。




「わかった お願いするよ。 事情があって この国のことをあまり知らないんだ。


変なこと聞くかもしれないけど いろいろ教えてほしい。」


女の子は笑顔で 「ありがとう! 私に任せて。」 という。


すごい笑顔なのは 銀貨1枚のせいだろう 


「わたしの名前は リコ、孤児なんだけれどこの街の事には詳しいわ。」


俺は 「よろしく 俺はアデル この街にはさっき着いたばっかりだ。」




「早速だけど この金貨しか持ってないんで 両替をしないと


案内料も払えないんだ。 どこかで使えないかな?」 と聞くと


「そうなのよね こんな大金が使えるのは 武器屋か薬屋くらいなんだけど


小さなものを買ってお釣りなんて言ったら 断られるわ。 両替するなら


商人ギルドがいいと思う。」 リコが言う


ギルドという言葉が出てきた。少しうれしい。 まっとうそうな話なので 


「じゃあ 商人ギルドに案内してくれる?」 というと。


リコはうなずき 「うん、こっちよ。」 先に立って歩きだす。




歩きながら リコに質問する。


「ところでさ この大金貨1枚だと この街で俺一人でどれくらい暮らせる?」


貨幣の価値がわからないと 困るし・・


「そうね~ 一人なら1~2年くらいは働かずに暮らしていけるわよ。」


なるほど大金貨一枚で 2~300万円くらいか?


「じゃあ 大金貨1枚だと 銀貨何枚分になるの? 」 俺が聞くと


リコは あきれ気味に


「商人なのに お金の単位も知らないのね。 教えてあげるわ。」




街中を進みながら リコが教えてくれる


大金貨は 金貨10枚


金貨は 銀貨10枚


銀貨は 銅貨20枚


銅貨は 鉄貨10枚に両替できるの


なるほど わかりずらい。


大金貨が200万円だとすると 金貨が20万円


リコへの報酬は 銀貨1枚 2万円くらいか


ボラれてる気がするが 口止め料込みで しょうがないか。




そのほかに ここはミローネ王国の中のポラーネ領地であること


今いるこの街は ポラーネ領で1番大きい町 コロンバン


王国とか領地とか やはり異世界だ


ちなみに獣人やエルフはいないのか聞いてみると


「なにそれ!前にいた国にいたの? どんな感じ?」 


逆に食い気味に聞かれた。 俺も会ったことありませんよ・・




あらためて女の子を見ると 快活そうで 元気だ。


リコに 「君みたいな子が 孤児なの?」 と聞くと


「そうよ、住む家が決まってないの 今は空き家で 他の孤児たちと


暮らしているけど 家主や街の見回りの兵隊が来て 追い出される


事もあるわ。」 リコは続けて


「前までは 他の孤児が 私を守ってくれたけれど いつのまにか


私が一番年上になっちゃった。」 と言って笑う。




街の中心部に 商人ギルドはあった 


街の中ではかなり大きな建物だ とはいっても高さは3階建てくらいかな


横幅と奥行きは  普通の店4件分くらいあるだろう


中の4分の一くらいは 冒険者ギルドの窓口が併設されている


冒険者の得た 肉や毛皮や素材 薬草などもそのまま 商業ギルドで


買い取っているため 併設しているらしい。


他にも 建築ギルドと職人ギルド、 農業ギルドと漁業ギルドは 


それぞれ併設されて この近くにあるらしい。


冒険者ギルドがあるのか 転生したら普通はそっちじゃないのか?


「冒険者ギルドに 登録しても いいのかな?」 そっとリコに聞いてみると 


リコは笑いながら 俺を上から下まで 眺めて。


「その見た目で冒険者ギルドに行くと 笑われるよ 武器も持ってないし


商人にした方が無難よ。」 と言う。 


後から冒険者登録もできるわよと言われ  納得して 商業ギルドの窓口に向う。




受付はお姉さんではなく 小太りのおばさんだった。


「登録ですね。 名前と年齢 住所 仕事内容をご記入下さい。」 と事務的に言う。


リコにひそひそ声で 年齢わかんないんだけど どうしよう? と聞いたら


「え~、歳もわからないの?」 と言われたが


「自分で決めちゃいなさいよ 15歳でいいわよ」 丸聞こえだよな。


住所は今は宿屋に泊まる予定で 仕事は塩の販売といっておきなさい。


リコは 結構 テキパキしてんな。


名前 アデル 年齢15歳  住所 現在宿屋  仕事内容 塩の貿易


と書いた紙を渡すと そのまますんなり登録してくれた。


「登録料は銀貨1枚です。」 受付のおばさんが事務的に言ってくる。


俺は恐る恐る 大金貨を出してみる。


受付のおばさんは ちらと俺を一瞥して 「金貨は無いですか?」 と聞いてきた。


「すみません。ちょうど使ってしまって。」


一瞬むっとした口元になったが しばらくお待ちくださいと 奥に入っていった。




しばらくすると 受付のおばさんが出てきて


「登録は完了しました。 こちらが登録証。あとお釣りです。」 と言い。


お釣りの入った袋を渡してきた。


おばさんは 厳しい顔をして 低い声で俺に言った。


「お釣りは金貨9枚 銀貨9枚です。 袋から出さずご確認ください。」


お受付のおばさんは 続けて


「アデルさん あなたが大金貨を出したとき何人かの者が反応しました


隣の冒険者ギルドは 荒くれ者などもおります。


お帰りの際には 後ろにお気を付けください。」 と怖いことを言う。


俺は 「うかつでした 気を付けます。」 と言うと 受付のおばさんは


「あちらに小さな出口がございます。」 と指をさす。


リコも緊張気味に 「見えないところまで 走る?」 と聞いてくる?




俺たちは 出口を出ると 建物の裏手の方へ 全速力で走った。


商人ギルドからなるべく離れる方角に さらに全力で走った


アデル 足遅くない? リコが俺より余裕で聞いてくる。運動不足か?この体は・・・


「ダメだ もう限界 あそこの木立で様子を見よう。」


俺がゼイゼイ喘いでいると リコが陰に隠れ来た道を こっそりのぞく 


「誰も追ってきてないわね。」


前世だって 数百万円持ってたら 見せびらかさないよな。 と悔やむ。


しばらく警戒したが 誰も追ってこない。


あぁそうだ。 俺は小袋から銀貨を一枚取り出し リコに渡す。


「遅くなったけど これ案内料 お願いします。」


「ありがとう!」 嬉しそうに財布にしまうリコ。




まぁ 目的の両替は完了した。


次は人気の多いところに出て 食事と宿屋を探したい。


とりあえず、食事ができるところを リコに聞くと。


「いいわよ 何食べたい?」 リコが聞く。


俺が 「この国の料理も まったく知らないんだ。


なにか食べやすいものを 教えてほしい。」


特殊な味付けや 匂いのきつい食べ物だと 食べられないかも・・


リコが悩んで 「う~ん ほとんどが肉か芋か豆料理なのよね」


俺一人分の食事を 考えているのだろう・・ 俺は付け足し


「リコが食べたいものでいいよ ごちそうする。」 と言ってみると


「ほんと!屋台でもいいの?」 喜んで手を合わせる。


2人で並んで 肉の焼き串を食べた。 


結構、おいしくて 3本づつスープも合わせて 食べてしまった。


満腹だ 料理が問題なくてよかった。

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