第14話 友達の親

 今回少し短いです。

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「アルクお兄ちゃん! 到着したよ!」

「……そうだな」


 俺は、元気そうなリリーとは対照的に疲れ気味に返事をする。

 アレからリリーが飽きるまでの間———約30分———ずっと音速並みの速度で揺られていたせいで、少々気持ち悪い。

 恐らく、これが俺でなければ、速攻吐いていただろう。


「まぁ何はともあれ、着いたことだし呼んでみるか」

「アルクお兄ちゃんのお家より大きいね」

「それは禁句だよ、リリー」


 リリーには禁句と言ったが、正直俺の家の3倍くらいデカい。

 資産の差に愕然としながら、邸宅の門の前にあるインターホンの魔導具を押す。

 すると、固く閉ざされていたユーマの家の門がゆっくりと開く。


「「か、かっこいい……!!」」


 門の開き方の荘厳さに、2人同時に思わず感嘆の声を漏らしてしまう。

 あまりの格好良さに見惚れる俺達の前に、1人の厳格な雰囲気を纏った40代程の男性が現れる。

 男は俺達の前に立ち、鋭く言葉を放った。


「……貴様はドミネイター家の息子だな?」

 

 何を隠そう———目の前の面倒そうな男がユーマの父親である。

 名前はバルバトス・フレイア侯爵と言い、現『魔導師』の実力者であり、俺らとは比べ物にならぬ金持ち貴族だ。


 プライドが高すぎるのが玉に瑕だが。


「はい、お久し振りです、フレイア卿」

「ふんっ、やっと次期当主としての自覚が出たか。昔に比べて大分マシだな」

「お褒め頂き、誠に有難う御座います」


 立場的に相手の方が圧倒的に上なので、俺は恭しく頭を下げる。

 リリーは何もしていないが、フレイア卿が何も言わないと言うことは、リリーの強さに気付いたのだろう。


「……そこの少女は?」

「リリーです。我が領地の孤児院で暮らしております。孤児ですので礼儀作法はまだ……」

「いや、彼女は私より腕のいい魔導師の様だ。礼儀を尽くすのは寧ろ私の方だろう」


 そう言うと、あのプライドの塊の様な頑固で面倒なフレイア卿が軽く頭を下げる。

 どうやら魔法使いにとって強さは、何よりも重要らしい。


 こう思うと、意外と武人と変わらないな。

 魔法使いの方が性格悪いけど。


「初めまして、リリー嬢」

「……」

「お、おい、リリー、挨拶しろっ」

「イヤ。アルクお兄ちゃんの方が強いのに生意気!」

「……何?」

「な、何でもありませんよ、フレイア卿! リリーはまだ領地を殆ど出たことのない世間を知らぬ若輩者ですので! どうかご容赦下さい!!」

「でもほん———むがっ!?」


 俺はこれ以上余計な事を口走らせない様にするため、リリーの口を両手で塞ぎ、全力の愛想笑いを発動。

 フレイア卿は訝しげに目を細めて俺を見ていたが、直ぐに切り替えて訊いてきた。


「それで何の様だ? 私は忙しい、手早く頼むぞ」

「それでは……単刀直入に言いますが、ユーマ君居ますか? 最近全く学園に来ていないので心配なのです」


 俺がほんの些細な動きも逃さぬ様に観察しながら訊くと……フレイア卿は全く変な挙動を見せる事なく言った。


「知らんな。どうせ何処かで修行でもしているのだろう」


 ……オッケー、把握。

 普通に胸糞悪いな。


「……リリー」

「うん!」

「……っ!?」


 俺の合図と共に、リリーがフレイア卿の魔力量より多い魔力で全身の動きを封じる。

 突然の事に驚いたフレイア卿が叫んだ。


「な、何をする!? ドミネイター、分かっているのか!? 私はこの国の名門貴族だぞ!?」

「うるさいよ、おじさん! 主様の前では主様が許可するまで話しちゃいけないのっ!」


 リリーが少し手を動かすと、フレイア卿の口が見えない魔力に塞がれ話すことは勿論、叫ぶことも出来なる。

 必死に体を捩ろうと、拘束から抜け出そうとしているが、リリーの拘束からは絶対に抜け出せない。

 更に、周りはリリーの魔法によって外から中の様子が見られない様になっている。


 俺は顔を歪めるフレイア卿を眺めながらフードを被り……。


「バルバトス、貴様にはこれから幾つか質問をする。嘘は吐くな、吐いたら死より辛い仕打ちを受けるだろう」

「……っ! ッ、ッ!!」


 悪役の様に、口元に三日月の様な笑みを浮かべて嗤った。



「———オレを失望させてくれるなよ」

 


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 次は18時更新。

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