第3話 序列再編成でやらかす男

 裏社会の人間は、大抵が表社会の顔も持っている。

 俺もそうだが、それは『大罪』所持者達も同様だ。


 アメリアは、この学園で教師をしており、C組の担任でもある。

 物凄く厳しいが。


 周りの生徒が『アイツ……終わったな』と口々に囁き合う中、アメリアは尚も笑みを浮かべて問い掛ける。


「ねぇ、ゴンザレス君。何をしているのか訊いているんだけど?」

「あ、あの……えっと……」

 

 凄腕の魔導師であるアメリアに威圧されて完全に意気消沈となるゴンザレスだが、アメリアの詰問は更に続く。


「ところで……その魔法理論の課題、タオ君にやらせたわよね? 嘘付くなら許さないわよ」

「はいっ! や、やらせました!」


 アメリアの許さない=地獄の補習が待っているので、ゴンザレスは顔を青ざめさせながら即座に答えた。

 その瞬間にアメリアはフッと笑みを消す。


「ゴンザレス君はこれから1週間補習ね。逃げる、サボるなどは考えない方がいいわよ」

「は、はひっ!!」


 ゴンザレスは噛み噛みになりながら頷いていそいそと席に戻って行った。

 生徒全員の視線がゴンザレスに向いている中、アメリアが念話で話し掛けてくる。


「(主様! お困りの様でしたので、お助けに参りました!)」

「(ありがとうアメリア。お陰で面倒事にならずに済んだ)」


 いや、ほんとマジでありがとう。

 アメリア居なかったら1発のパンチじゃ済まなかったろうし、今以上に注目集めてただろうからな。


 俺が念話でお礼を言うと、アメリアは感極まった様に念話で感謝し始めた。


「(ああ……!! 主様が私にありがとうと……!! 感激の極みです……!!)」

「(そ、そうか……喜んでいるならそれでいい……)」


 俺はあまりの感激具合のアメリアとのテンション差に困惑しながらも、ひっそりとタオを連れて自分の席に座る。

 数秒して元のテンションに戻ったアメリアが、教卓に手を置いて話し始めた。


「えっと……朝から気分の悪くなることがあったけど、今日は何の日か覚えてるかしら?」


 はて、今日何かあったっけ。


 俺は小さな声で横のタオに訊いてみる。


「なぁ、今日って何かあるのか?」

「え、覚えてない? 今日は———」


 タオとアメリアの言葉が被った。



「「———序列再編成の日よ(だぞ)」」



 俺はその言葉を聞いた瞬間、心の底から今日学園に来るんじゃなかったと後悔した。








 ———序列再編成。

 これを説明するには、まず序列から説明しなければならない。


 我が学園には序列と言うものが存在する。

 まぁ簡単に言えば、学年と学園全体で順位付けされているわけだ。

 序列決めには生徒1人1人に『評価値』と呼ばれるパラメーターがあり、これによって大体の順位を決める。

 その後で評価値の近しい生徒達で戦って順位を確定するわけだ。


 因みに俺の順位は学年序列110/225位で、学園序列が705/1,125位である。

 『評価値』は最低値の『E』から最高値の『SSS』までで評価され、世界でも名高い強者達は最低でも『SS』に位置する者達らしい。

 我が学園の学園長は500年生きる魔女らしく、『SS』は優に超えているとの噂である。


 因みに俺はと言うと———。


————————————————————

身体能力:C+ 魔力:C+ 信仰力:C+

制作力:C+ 頭脳:C+ 戦闘技能:C+

総合評価:C+

————————————————————


 恐ろしく普通だ。

 『C』は普通という位置で、悪くもないがよくもないという評価である。

 まぁ狙ってこうなっているんだが、自分でも中々いい位置にいると思う。


 因みにゴンザレスは学年序列80位代で、タオは俺の2個上か下のどちらかだったはずだ。

 100位以内に入るのなら『B』以上だと思うので、十分優秀と言えるだろう。


 ゴンザレス……お前、地味に高いんだな。

 口だけじゃないんだな。


 そんな序列だが、月に1度、その序列を再編成する日が訪れる。

 まずは身体能力や魔力、学力に魔導具の制作力などを測るテストがあり、その後に戦闘技能を調べるために生徒同士で戦うのだ。

 学園の方針として優秀な人材を育成するというものがあるので、生徒同士の闘争を通して高め合っていければとでも思っているのだろう。


 俺からすれば厄介極まり無いけど。


「うわっ、見てよアルク! A組だ! 今回はA組も参加するんだなっ!」

「嘘つけ。A組が参加するわけないだろ」


 タオが、訓練場のとある一角を指差して興奮しているが、1度も再編成に参加したことのないA組がいるとは思えない。

 ただ、A組がいると言われれば嘘だと思っていてもつい俺も振り返りたく———


「え、マジじゃん。何でいんのよ。弱者痛めつけるの? 何それ楽しいの?」

「言い方! アルク、言い方が悪い! それに言うならせめて声を小さくしろって!」

「大丈夫だって。あんなに離れてんだからバレんバレん」


 タオが俺の方を塞ごうとして奮闘する中、俺は100メートル以上離れていることで安心していた。

 しかし———どうやら俺の考えが甘すぎたらしい。


「———何が弱者を痛めつけるって?」

「おいおいおいマジかよ、あの距離で聞こえてんのマ?」


 俺の目の前に突如雷と共に俺より2回りほど大きな男が現れ、魔力で俺を威圧しながら睨んできた。

 中々の威圧感で、相当な実力者に見える。

 

 A組の男は、獰猛な笑みを浮かべながら俺の肩を掴む———ちょ、痛いって。


「ちょ、痛いって、やめてくれません?」

「ん? 俺はお前の想像通りの事をしているだけだが? お前は俺達の事を弱者を痛ぶるクズだと思ってんだろ?」

「えぇ……めちゃくちゃ根に持ってんじゃん、どうしよう。謝れば許してくれます?」


 謝る以外は、組織のお金の0.01割あげるくらいしか出来ないんだけど。

 しかもレオナに怒られる覚悟で。

 この状態じゃ逆立ちしてギリ勝てるくらいだし。


 だが、そんなことにはならず、少年は少し考えた素振りを見せた後で、煽るように笑みを浮かべる。


「うーん……ま、許してやるよ。ただ———A組に喧嘩売ったんだ。さぞかし有能なんだろうな?」


 どうやら俺は、A組の奴ら(一部)にマークされてしまったらしい。  


—————————————————————————

 次は7時更新。

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