夕暮百物語・第21話 ヤバい話


 新原さんは学生の頃から怖い話が好きだった。友人の話だけでは満足出来ず、

ある日の授業中、国語の先生に怖い話をねだった。先生は困り顔をしつつ

最終的に口を開き、新原さん含めたクラスメイト達はその話に耳を傾けた。

 内容は新聞にも載ったとされる知人の話。とにかく『ヤバい』話だ。

先生は前置きしつつ語り始め、新原さんは前のめりになり聞いた。

先生が真剣に話していると突然、足元に何かが現れた。

新原さんはそれが沢山の黒い影だとすぐ気づいた。

 影は先生を絡めとるよう巻きつき、体は黒い影に包まれていく。

新原さんは驚き、手を口に当て、叫ぶのを堪える。誰も気づいていない様子だ。

語り終えると黒く包まれた先生の体は、元に戻った。

卒業後、先生は自宅の火事で亡くなったとクラスメイトから聞いた。

あの『ヤバい』話が原因だと新原さんは確信している。

あれから随分時は経過した。あの話を聞いたクラスメイトの誰かが、

どこかであの内容を語っていないことだけを祈っている。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る