夕暮百物語・第17話 受話器越しの声
聖奈さんには5つ年下の妹がいた。けれど彼女が8歳の時に亡くなった。
丁度、妹の3歳の誕生日が過ぎてすぐの頃。
妹は両親にプレゼントされた電話のおもちゃで、時間さえあれば遊んでいた。
鳴りもしないおもちゃの受話器を持ち、架空の何かと話す妹。
聖奈さんはそんな姿を微笑みながら見ていた。
ある日、妹がいつものように受話器を持って話している。
まだおぼつかない言葉を使い、受話器に向け一生懸命語りかける。
聖奈さんは妹の様子を横目にテレビを見ていた。
ふと妹以外の声が耳に入る。当然両親ではない。
それはおもちゃの電話の受話器から大きく漏れ出す。
ありえない。けれど女の声だとすぐ分かった。何を話しているかは分からない。
聖奈さんが反射的に立ち上がったその瞬間、妹は大きな声で泣き叫んだ。
受話器を持ち、言葉にならないほど泣きじゃくる。
聖奈さんが受話器を取り上げ、耳に当てるが無音だ。
あんなに声が漏れていたのに。妹に「何を聞いたの?」
そう尋ねても泣くだけだ。両親も驚きあやしつけ、何とか寝かしつけた。
その翌日、妹は亡くなっていた。理由は不明だそうだ。
あの女の声と妹の死には関係があると、聖奈さんは理解している。
妹は受話器の声に何と言われたのだろう。それだけが未だに謎だ。
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