ハーレム勇者 ミハルス その2
女性たちが愚痴とお酒で盛り上がっているころ。魔王城に取り残された男たちには、別の盛り上がりが訪れていた。
「やばい、ヤバイですよぉ!!」
「お、おおお、落ち着て下さいフォルテ様。もうこうなってはもう腹をくくるしかありません」
「あぁ、ベルよ。先立つお父さんを許しておくれぇ」
魔王城の大広間、勇者を迎え撃つ場は、見せかけの威厳の彩られていた。そこで三人の男、魔王フォルテ、四天王のボンゴ、獣人のシンバは嘆いていた。
「そもそも、シンバさんがこれ以上聞きたくないなんて言って、耳を塞ぐから勇者の発見が遅れて、こんなことになったんですよ!?」
魔王フォルテは、ヘッドホンで自慢の耳を塞いでしまったコボルトのシンバに向けて言い放つ。
「フォルテ様だってモニカさんの愚痴を聞きたくないって、言ってたじゃないですか!」
「おぉ、マイハニー・・・。俺を見捨てないでくれぇ」
小さい体で必死に抗議するシンバの横で、大きい体を震わせて涙を流すボンゴ。
「そ、それは、シンバさんが聞いてもいないのに勝手にモニカさんたちの会話を話し出すからでしょ!?」
「こんな悲惨な会話、とても私の心にだけ留めておくなんて出来ません!!」
「ハニーぃ、俺はそんなにお前を悩ませていたなんて、ひどい男だった、許しておくれぇ」
モニカたちが酒の肴として男たちへの日頃のうっ憤を話していたが、その会話はすべてシンバの耳には聞こえていた。
最初は自らに浴びせられる非難(特にコトからの)に対し耐えていたが、その話を平然と聞くフォルテたちに腹が立ち、次第にフォルテやボンゴにまで飛び火した。
「あぁ、最近はいい感じに進展していると思っていたんでが。まさかモニカさんにとってはそうでもなかったなんて」
「うをぉぉぉぉーーー」
共に、想い人であるモニカとバラライカの胸中を知り、ショックを受けるフォルテとボンゴ。こうしてこれ以上悲惨な状況を作り出さないために、シンバは自らの聴力を封印したのであった。
そして、今こうしてその行為が、更なる不幸を呼び寄せていた。いつもは警報が鳴る前にシンバ自慢の耳で勇者の襲来をいち早く察知していたが、今回はその耳を塞いでしまっていたためフォルテは勇者が目の前に来るまで存在を気付けずにいた。
「それよりもフォルテ様!?今は目の前の勇者ですよ!」
「どうせ実りのない未来なら、せめてこのまま勇者の手で討たれるのも一興…」
「フォルテさまぁぁ、介錯はこのボンゴめが立派に務めさせて頂きますぞぉぉ」
泣き叫ぶ三人のことなど知る由もなく、彼らの目の前には勇者一行が現れる。勇者を目にした途端、フォルテの視線は鋭さを増しボンゴの筋肉は盛り上がり、シンバの牙は研ぎ澄まされた。
「ボンゴさん、とりあえず介錯は後回しです。先に目の前のふとどき者を始末しましょう!」
フォルテのやる気に満ちた掛け声に、ボンゴは頷き愛用の戦斧を手に取る。
「フォルテ様、わたくしめも手伝います」
いつもは一目散に逃げ出すシンバですら、今日はやる気に満ち溢れている。
「なんなんだ君たちは?」
フォルテたちの前に立つ勇者の男は、状況を理解できずに呟く。
「もう、私、こわいー。だからこんな辺鄙な城なんて来たくなかったのにぃ」
険悪なフォルテたちを見て僧侶風の女性が答える。
「嫌なら故郷に帰っていいのよ?ビーナ。私は勇者ミハルスの行くところなら何処へだってついていくんだから!」
今度は魔王使い風の女性が僧侶の女性に向けて言い放つ。
「だから言ったんだ、こんな頼りない奴らなんて要らないって。ミハルスは私一人が守って見せる!」
最後に剣士風の女性が勇者ミハルスの隣に立って宣言する。
「もう!キリコったら、またそんなこと言って虐めるんだから!シタールもちょと力が強いからって、私だってミハルスの為だったら命も惜しくないんだから!」
フォルテたちの前で勇者ミハルスは女剣士のシタール、女僧侶のビーナ、女魔法使いのキリコというハーレムを築き上げていた。
その姿はフォルテたちの心を強火で点火し、いままでにないほどの憎悪を勇者に向けさせていた。
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