パイロット勇者 トラット/コルネ/フリューゲン

ガガガガガ


「おっと危ない」


ガガガガガガ


 魔王城内の資料室、見上げる程高い天井目掛けてたくさんの本が並べれれている。フォルテは、お目当ての本を探すべく首が痛くなるほどに目線を上げて捜索を続けていた。

 そんな彼の足元をお掃除ロボが我が物顔で通り過ぎていく、フォルテはロボを踏みつけないように足を上げた。

 太い鉄の切り株のようなフォルムのロボは、以前城に侵入し、自らの命を脅かした勇者ロボであった。今はシンバに改造され魔王城を綺麗にするお掃除ロボとして第二の人生?を歩んでいる。


「いつもお掃除ご苦労さまです、ヴォットさん」


 フォルテはヴォットに声をかける、すでに言語機能は失われているの為ヴォットは反応することなくただ目の前のゴミを追いかける。

 今では見る影もないモニカすら圧倒した以前のヴォットの強さ、彼を見ながらその強さを魔王軍の戦力に加える事が出来たらちフォルテは考えていた。

 そうしている間に目的の本を見つけ、フォルテは資料室を後にした。


「あれ?フォルテ様。こんなところで何してるんですか?」


 先ほどのヴォットのことを考えながらふらふらと廊下を歩いていると、モニカから声をかけられる。


「あ、いや。あのお掃除ロボのことを考えていたんです」


「あぁ、元勇者のあのロボくんですね」


 モニカも必死に働くヴォットを思い出して答える。


「いやぁ、彼のお陰で掃除の手間がかからずに助かってます」


「モニカさんは汚す専門で片づけしないじゃないですか?」


 ヴォットの恩恵を一番受けているであろうモニカが感謝の言葉を述べる。


「そんなヴォットさんも今や従順にお掃除してくれてますのが、それとは別に以前の強さを軍の為に発揮してくれたらいいなと思いまして」


 フォルテは先ほど考えていた内容をモニカに伝える。

 

「フォルテ様、不相応な力に手を出しては身を滅ぼしますよ?あのロボくんを開発した国がどうなったかご存じでしょう?」


 モニカはその言葉を聞いて真顔でフォルテに伝える。

 勇者ロボ、ヴォトを送り出してきた今は無きタンタン国、今その領土は不毛の地となっており、人も魔族も寄り付かない地へと変貌している。

 勇者を送り込んだあの日、タンタン国は神の怒りを買いその土地ごと滅ぼされたのだ。その教訓が魔王軍だけでなく、隣国にも波及しみなが神の怒りを恐れるている。


「過ぎたる力は身を亡ぼすですね」


「そういう事ですよ」


 いったい神とは何者か、この世界に何を求めているのかと疑問は尽きなかったが、今のモニカにそれを聞いても返事はかえってきそうになかった。

 その代わりなのか、城内に緊急警報が流れるのだった。


「おお、鳴ってる、鳴ってる♪」


「ずいぶん歓迎されてるな、俺たち」


「www」


 魔王城の城門を豪快に吹き飛ばし、三体のゴーレムが城内へと足を踏み入れる。

 太い柱に丸太のような手足、三体とも同じ体系のゴーレムたち。唯一の違いはその体の色だけであった。


「なぁトラット?これ楽勝じゃね?」


 トラットと呼ばれた赤色のゴーレムが目を光らせて取り付けられたスピーカーから返事を発する。


「あぁコルネ。俺たちのコンビネーションは最強だからな!」


 トラットは黄色のボディをしたゴーレム、コルネに返事を返す。


「さっさと魔王倒しちまおうぜ!なぁフリューゲン」


「wwww」


 フリューゲンと呼ばれた緑のゴーレムは良くわからない笑いを発する。

 三体のゴーレムは重い体を揺らしながら城の門をくぐりぬけた。


「待てお前たち!」


 先へ進もうとする三体の勇者に向けて声がかかる。彼らの目の前に大きな体躯と大きな戦斧を掲げる魔族が立ちはだかる。


「これより先へ行きたければ、この四天王が一人、轟音のボンゴ様を倒してからにしてもらおう!!」


 文字通りに生まれ変わったボンゴが久々の活躍の場に気合を漲らせる。


「うるさいなぁ、なんなのこのトロール?俺たち三人に対して一人で相手って舐めプ過ぎでしょ?」


 黄色のコルネが笑いながら言う、実際にはゴーレムの表情は変化しないので声だけで笑っている。


「こうして敵と向かい合っているのに戦闘態勢も取らない、本当に舐めているのはどっちだ!!?」


 あまりにやる気のない会話と姿勢にボンゴも激怒し、愛用の戦斧を振り降ろす。


 ガキン!!!


「wwww」


 振り下ろした戦斧は緑色のゴーレム、フリューゲンに頭から当たるが、その装甲の厚さによって戦斧は弾かれる。

 なんのダメージも受けていないのか、フリューゲンは相変わらず意味不明な笑みを絶やさない。


「だっさぁ、あれだけ大見え切ってフリューゲンの防御すら突破出来ないなんて。笑える」


「ぐぬぬぅ、なんだとぉ!?」


 ボンゴは痺れる手を庇いながら再度戦斧を構え、今度は先ほどから挑発してくる黄色のゴーレムに狙いを定める。


「wwwwww」


「またしてもお前か!?緑のやつ!!」


 ボンゴの狙いも空しく、攻撃の軌道上にまたもやフリューゲンが立ちはだかりコルネへの攻撃を受け止める。


「無駄だよ、トロいあんたじゃフリューゲンを振り払えないって」


 思うように攻撃できずにいるボンゴに赤いゴーレムが手から剣を生やして切りかかる。


「ぐわぁ」


「おぉ、さすがトロールだなこのくらいじゃ致命傷にはならないか」


 トラットの攻撃がボンゴに傷を負わせるが、それもすぐに回復する。


「あーキリがないな。めんどくさ、コルネ任せられるか?」


「あぁ、準備OK、配置につけ」


 コルネの合図により、三体のゴーレムがボンゴを取り囲むように首尾よく配置に付く。


「よーし、いい感じだ。んじゃ一名様ご退場ー」


 コルネの気の抜けた言葉を合図に、黄色いゴーレムの体から幾何学模様が浮かび上がる。模様はやがて他の二体のゴーレムにも波及しボンゴを中心とした地面一体に投影された。


「な、なんだこれは!?」


 ボンゴを中心に光輝く三体のゴーレムはいつしか巨大な魔方陣を形成している。身動きの出来ないボンゴはただ狼狽える。


「はい、お終いっと、」


 コルネが軽く叫ぶと魔方陣の中心に黒い炎が立ち込めボンゴの体を炭へと変えていった。

 一瞬にして炎は収まり、そこにはただ巨大な骸が立っているのみであった。


「ナイスな骨だ、最後だけは超クールだね」


 コルネは骨となったボンゴに告げると、骨はその場に崩れ落ちた。

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