第7話

 そして翌日…ぐっすり寝た僕の体調は万全。

 覚悟も決めたし今日この日のために出来る限りの準備もしてきた。


「うっしっ!」


 モンスターパレードは朝6時のみんなが起床する時間帯に起こる。

 だから前世では多くの人が逃げ遅れたし探索者が到着するのも遅かったのだ。


 今回は…誰一人として死傷者を出すつもりはない。大事件として記録されるようなあんな酷い犠牲は…。


 とても傲慢な考えなのはわかっている。

 だけどそれをできる力を手に入れたのだ。



 魔力値63300



 やらなきゃ明日はない。

 最初の壁を越えないと先へはいけない。


 弱い自分から生まれ変わる一歩目だ。




 王人は隣の街へと来ていた。

 そして、上級ダンジョンの前に居座った。

 ダンジョンというのは異世界と繋がっていると言われている。

 一見洞窟にしか見えないそれだが一歩踏み入れば中は全くの別空間なのだ。


(…何人か探索者がいるな…)


 服が汚れていないしまだ寝ぼけ眼な彼らはこれから潜るつもりなのだろう。

 上級に潜れるということは、それ以上の等級ということ。

 協力したい気持ちはあるが…何度か試した僕のスキルは集団戦に向かない。


「ねぇ…あれ」


「あぁ」


 探索者のうちの一人が王人に近づいた。



「ダンジョンまえでどうしたんだ?誰かを待っているのか?」


「……そうだね。待ってるっちゃ待ってるかも」


 探索者は目前にいる幼い子どもに違和感を覚えた。


 普通子どもというのは知らない大人に話しかけられれば少しは気負うものだろう。

 なのにこの子どもはこちらを見ることもなくその眼はダンジョンにのみ集中していた。


(変なガキだな)


「ここは危ないよ。早く離れた方がいい」


 それは子どもからの忠告だった。

 危ないというのはダンジョンの中だけだろうと考えた次の瞬間、子どもの顔つきが変わった。


「…くる…ッ!!」


「何を……」



 それは大きな地響きだった。

 何かが大量に進行する音。

 そしてそれに混じって聞こえるのは、モンスターの声だった。


 探索者は皆一斉に理解した。

 このダンジョンはモンスターパレード直前なんだと。



「おいおいおいおい…っ…!?まじかよ…!坊主っ!はやくにげ…!?!?」


 探索者の行動は早かった。

 ダンジョン前にいた人たちはすぐさま避難し、モンスターパレードが起こった時の信号を協会に飛ばしていた。

 それと近くの住民たちに避難をするよう大声で叫びながら後退していた。


 しかしそれよりも早く行動していた人物が一人だけいた。

 ダンジョンの入り口で様々な武器を広げた王人だ。


(ブーメランに使う武器はこれでいい。不壊の特性がつくからこれで基本は間引く。それと…)


『大地の権能』


 王人は前世から持っているスキルを使った。

 これは大地を動かす能力で、魔力をちょっとばかし多く消費し、周囲を隆起させて分厚い壁で覆った。

 その高さ約10m


「な…なんだこれ…!」



 急に現れたでかい壁に、王人に話しかけた探索者は、協会がこういう時のために用意した防衛機能かと思ったほどだ。


 グギャアアアアアアアッ!


「くふふ…ッ!こいっ!お前ら全員…根絶やしにしてやる…ッ…!」


 モンスターは1匹残らず殺す。


 こうして王人とモンスターの決戦が始まった。

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