第5話

 鑑定室を飛び出した王人は家に帰るまでだんまりを決め込んでいた。

 両親からの問いにも反応せず、ただ目を瞑ってずっと思考し続けていた。


 そして家に帰るなり寝所へと向かい……神様の仏壇を蹴った。

 何度も何度も……


 罰当たりなことをしているのはわかっている。

 しかし納得がいかなかった。


 神様は四大ボスの討伐という前代未聞どころか不可能に近い依頼を僕にしてきたのだ。

 毎度不可能と言っているのには理由があり、この四大ボスというのは神に匹敵するのだ。

 神の能力に近い、怪物じみた能力を行使するモンスターだからそれ相応のスキルではないと相手にすらならない。

 なのに、もらったスキルはブーメランという最弱と言われる武器の才能。


 なぜこのスキルが最弱なのか。

 ただ単に使えないのだ。


 人はダンジョンに潜りモンスターを殺すことによって魔力値が上がる。

 そしてそれを繰り返すことで強くなっていくわけだが…このブーメランというのはダンジョンでとても不向きな武器なのだ。

 そもそも狭い空間で使う武器ではないから最弱と言われている。


(神様ああ!説明しやがれ!)



『仕方ないなぁ』


 ぽんっ


 神様の声とともに空中に現れたのは一枚の紙切れ。


『使い方が書いてあるから読むように』


 文句を言いたいのは山々だが…読んでみてそれでも気持ちが変わらなければ仏壇を外に捨てようと思った。


(もっと早く用意してよ…えーっと…)


 ブーメラン(神様特製版)

 ありとあらゆる物を設定可能。

 魔力値次第で操れるものは変わる。

 設定されたブーメランは不壊の特徴を持つ。

 返ってくる。


「……ん?」


 ありとあらゆる物?

 なんでも?


 ちょっと雲行きが良い方に怪しくなってきた。

 くの字型のあれだけではなく石とか鉱石、武器類とかもブーメランにできるってことだろ。

 しかも不壊……。

 狭いダンジョンでも工夫次第で使えるぞ?

 やるじゃん神様。

 だけどまだ喜ぶのは早い。

 これだけじゃ到底最強になどなれないし…もう一つは…。



 そして王人は歓喜することになる。


 神眼(限定能力)3分

 弱点を見通す

 攻撃の軌道が見える

 ステータスの確認ができる


 もう言う事なしだった。

 不機嫌になった自分が馬鹿みたいに良い能力だらけだった。

 リアルチートすぎて小躍りしそうになるが…最後に載っている一文を見て顔を青ざめさせた。



『調子乗ってるとこ悪いんだけど神眼は一回使うのに魔力5000使うからね』


(ヒョぇぇぇぇぇぇ……)


 前世ですら僕の魔力値は4000しかなかったのに…。

 だが今世ではいくらでもやりようはある。

 1日3回摂取すれば魔力値は30上がる。

 一年で10950


 ただ現時点で作れる薬は100個のみ。

 この100個ぶんの素材を買うだけでも20万はかかる。


(……よし、金策をしよう)


 5歳まであと2年と半年。

 できるだけ魔力総量を上げるのが当分のミッションだ。


「がんばろ…」


 途方もないがなんとかなるだろうと考え、金策を模索し始めた王人だった。

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