第4話
あれから数ヶ月が経過した。
勝手に外出したことは今のところ両親にはバレていない。
両親には。
「あーぁ…なんか足が痛いなぁ?誰かマッサージでもしてくれないかなぁ?してくれないと、なんかママにいっちゃいそうだなぁ?」
「はい!(喜んで!)」
「ありがとぉ」
この幼女悪魔には完全にバレていた。
というのも小学校の下校時間と僕が家に着いた瞬間が被ったのだ。
姉は家にいないもんだから両親の目を欺ければ勝ちなどと浅はかな考えをしていた僕を殴りたい。
一番の問題児に見つかってあれから奴隷のような毎日を過ごしている。
だがしかぁし!
庭に植えたリンガの種がようやく実を作り、収穫段階へときたのだ!
異世界産の植物や食べ物は何かと成長が早く、木も数ヶ月すればめちゃくちゃ大きくなるのだ。
(ふへへ…あとは邪魔されないように収穫してちょちょいと作業すれば…薬ができあがるぜぇ…)
こんな足揉みなんていくらでもしてやるから邪魔だけはすんなよと睨みつけるが、すみれはなんのその、視線に気づかず気持ちよさそうにくつろいでいる。
「王人ー?今から一緒にお出かけするわよ?」
「……どこいく?」
突然言われても……僕には口封じをするためにこいつの足を揉まなきゃいけない。
いつもなら買い物に行く時間だが…今日は違うのだろうか。
「探索者協会だよ〜。かっこいい人たちがいっぱいいるところ!」
あー。
もうそんな時期というかそっか。
もうすぐ3歳だ。
現代に生きる人は子どものうち、それも2歳〜3歳の間にステータス確認をしなければならない。
どれだけダンジョンに対する適性があるかどうかを見るのだ。
そして適性が高ければ色々と家族揃って好待遇を受けられるようになるし戦闘技術も将来学べるようにできたりする。
つまり進路がここで決まるわけだ。
ダンジョン探索者かそれ以外か。
大事なことなのに魔力増強剤に夢中で忘れていた。
(たしか神様、才能を二つ付与するって…ちょっと楽しみかも…)
善は急げだ。
「おねぇちゃん、でかけてくる」
本当はお姉ちゃんなどと呼びたくはない。
できればドSみれと呼びたい。
しかしまだ反撃は早く、もっと成長してからこいつを陥れる。
そのためにもまだまだ姉には生きてもらう必要があるのだ。
だから僕はみんなを守れるように…強くなるんだ。
そう改めて決心している僕の気など知らず、すみれは不満しかないみたいで引き攣った笑顔でいってらっしゃいと言った。
玄関で睨まれたけれど、出掛けるのはしょうがないじゃないか。
けっして僕のせいではない。
時を同じく、探索者協会には一人の子供がステータス測定をしにやってきていた。
その子の名は、加賀美ヒカル
肩口で切り揃えられた白髪の髪を靡かせ、歩く姿には気品さえ感じる。
そして特徴的な尖った耳は、エルフの象徴であった。
人とエルフの御子
それがヒカルである。
「それでは、ステータスを確認するため、こちらの鑑定の魔道具に触れてください」
「…ん」
気負った様子もなく、感心すらない。
ただの一作業のようにそれに触れ……魔道具は眩い光を放った。
そして空中に浮かび上がったステータスには驚くべきことが書かれていた。
加賀美ヒカル 3歳
魔力値4050
スキル
暴風
植物創生
人の平均的な魔力値は3歳で20。
100あれば神童といわれるほどなのだ。
ハーフエルフだからと言ってもこの数値はあまりにもおかしかった。
これが人と亜人種の覆すことができない差なのだ。
「す、素晴らしい…!!しょ…将来は大物になるぞ…!絶級探索者にもなれるかもしれない…!」
鑑定士はそう言うが、ヒカルにとってはさほど興味のないことだった。ステータスも自分一人じゃ読めないしまだ3歳だから探索者がどういうものなのかも知らない。
それよりおままごとをする方が大切だし、美味しいものを食べることにしか興味はない。
(おなかすいた…)
「ぃやっふぅぅぅ…!!!………ってあれ?」
突然、鑑定室の扉が開かれ…ヒカルはその入ってきたサルと目が合う。
黒髪黒目で亜人の特徴が一切ない男の子。
純粋な人族の子。 サルじゃなくて人間だった。
「しょうらいびじんかくてい!」
すごく明るい子どもだった。
何を言ってるのかよくわからないけど、挨拶は大事だよねと思い、歩み寄った。
「えっと…アソール」
男の子にはこう言えばいいってパパが言ってた。
これがエルフ式の挨拶だって。
同世代のお友達がいないヒカルは鑑定をする時より少しドキドキしていた。
「……ぁぁ?」
しかし相手の反応は予想とは違った。
「…おやだな。ぜったいおやだ。エルフしじょうしゅぎかよ。ったく…おいちび!」
「ふぇ?」
「あいさつは…やっほーだ!」
「や…やっほ?」
「そう!そうそう!そっちの方がいい!かわいい!」
「や…やっほ……やっほー?」
男の子は首を縦に何回も振って満足そうにしていた。
どういう意味かはわからないけど…なんかすごく気分が良かった。
「あっ!かんてい!かんていしてもらうんだった!しょくいんさん!」
「…あぁ…はい。鑑定の魔道具に触れてください」
よく喋る子だなと思いながらも鑑定士はいつも通りに対応をした。
見た目亜人の特徴のない人族だ。
ステータスなど弱いに決まっているため特段興味もなかった。
子どもが触れた魔道具が先ほどよりも眩く光り輝く。
そしてヒカルはその子のステータスを見た。
鷹倉 王人 2歳
魔力値50
スキル
ブーメラン
神眼
大地の権能
「…ひかるよりひかった」
エルフは特別と言われていたけど、もしかしたら私よりもすごく特別なのかもなんて思った。
「……………なんでだぁ……!」
「ぁ…」
男の子は急に泣き出して扉を出て行ってしまった。
そして彼女は成長した後にこう言う。
鑑定は逃げられちゃったから良い思い出がないと。
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