第205話 獣は必死に縋りつく

「嫌です!!! 仕事行きたくない!!! 凪さーん!!! 私は貴方の側でずっと居たいです!!!」


 イデアさんの長期休暇の最終日。彼は私の足にしがみ付いていた。


「離れてください! ハチミツも準備したし、イデアさんは、昨日渡した腕時計を使えばいつでも私と連絡取れるようになったんだから、離れなさいよ!」


「凪さんの声が聞けたとしても、貴方の体温を感じ取る事ができません! それに、凪さんの柔らかな体にずっと触れていたいです!」


「仕事があるなら帰らないといけませんよ」


「ガウガ、ガルルガウルガウガウガ!(僕は、ここに残って穴掘りのお手伝いするね!)」


「クティス! 何1人で残ろうとしているのですか!」


「クティス、ハウス」


「ガウ?(うん?)」


 クティスは私の部屋に行き、お座りをした。


「クティス、イデアさんの仮面に戻るのよ」


「ガウガ(いやだ)」


「なんで2人して帰ろうとしないのよ! もう! 藍介! 貴方の知恵を貸して頂戴!!!」


 穴から救出された藍介が台所からやってきた。


「主人様、どうかなさいましたか」


「この2人が帰ろうとしないのよ!」


 藍介は私だけに思念を送った。


『あー、それでしたら、良い案がありすよ』


『良い案! さすが藍介ね! それで、何すればいいの?』


『イデアさんが仕事をやる気になれば良いだけのこと。そう! 主人様が仕事をする人はカッコいいとか仕事をする人は素敵とか言えばイデアさんは直ぐにでも帰ると思います』


『分かった、やって見るわね』


「イデアさん! 私は仕事を蔑ろにする人は嫌いなんです! 逆に、仕事できる人ってとっても素敵ですよね」


「仕事ができる人は素敵。凪さん! 仕事を蔑ろにはしてません。きちんと仕事を終わらせて引き継ぎもしています。だから、私の事をもっと褒めて欲しいです!」


 どうして、私が褒めてあげないといけないのよ。まぁ、褒めてあげるかぁ。


「そうなんですね。イデアさん偉いですね。クティスも偉い偉い」


「凪さん。もっと私を撫でて褒めてください。はぁー、癒されるぅ。仕事と人間関係のストレスで私の胃が日常的にダメージを負っていましたからね。はぁー、凪さんの手の温かさが心に沁み渡ってきます」


「ガウガァ(そうだねぇ)」


「はい! もうおしまい、帰ってください!」


「もっと! 凪さんに触れていたい!」


 仕方ないので、イデアさんとクティスは強制的に帰ってもらうことにした。


 私はロープを作り出しイデアさんを拘束した。


「なぎさん!? このプレイは早すぎるのでは!?」


「プレイって変な事言わないでください!」


「ガウ!(僕も!)」


 クティスは私に縛られたいのか、クティスは全く抵抗する事なくロープで拘束する事ができた。


 そして、紅姫と花茶にお願いして2人を荷車に乗せることに成功した。


「凪さん! そんなぁ! クティスがこの状態では荷車を動かせませんよ」


「自動操縦機能を搭載したから大丈夫よ。さぁ、荷車君2号! 出発!!!」


「なぁぁあぎぃぃさぁぁぁああああん!!!! まぁたぁー! 会いに行きます!!!」


「ガウガ!? ガウガルルルガウガ!(なんで!? 空飛んでるの!)」


 そして、イデアさんとクティスそして、ハチミツを乗せた荷車君2号はイデアさんが住む屋敷に帰って行ったのであった。


「イデアさんには申し訳ないけど、メイドさん達にお願いされちゃったら追い出すしかないわよね」


「チェルーシルさんが言っていた事と同じ行動をしていたので面白かったですね」


「藍介は反省してるんでしょうね。もし、危ないことしたら蝋梅妃か紅姫にお仕置きしてもらうわよ」


「それだけは勘弁してください。私は本当に反省しました。もう二度とあんな危ない事をしません」


「本当に?」


「はい! 主人様が危険な目に遭う罠だけはもう作ったりしません」


「分かったわよ。それじゃあ、イデアさんを送ったってチェルーシルさんに伝えようか」


「そうですね! それでは、私は偽ダンジョン組の料理を作らないといけないので失礼しますね」


 私はチェルーシルさんにイデアさんの事を伝え、日が暮れるまで偽ダンジョン作りの指揮をしていた。

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