第204話 策士、最後の罠に嵌る

「ちょっと! 急に魔石に押し付けてなにするのよ!」


「凪さんすみません。誰かの気配がしたので、確認ついでに隠れてみたのですよ」


「隠れてみたのですよ。じゃないわよ! もう、はぁ。それじゃあ、次行きましょうか」


 私と凪さんは5層目にある巨大な魔石をみました。


 巨大な魔石は威圧感があり、凪さんは魔石に近付きましたが、私は魔石を遠くから見るだけにしました。何でしょうか、あの魔石に触れたら即死すると私の本能が言っています。


「凪さん! そんなに触れても大丈夫なのですか!」


「イデアさんも魔石触ってみる? 冷たくてきもいいわよ」


「私は辞めておきます」


「そう、よし! 次は豊穣の森っていう所に行くみたいね。私、豊穣の森行くの初めてなのよ楽しみだわ」


「そうなのですね! それでは、豊穣の森へ向かいましょう!」


「おー!」


 私達は豊穣の森へと続く6層目に向かいましたが、豊穣の森へ行くのを断念しました。


「どうして、何度もどいてくれても歩けるスペースないのよ!」


「あの中を歩くのは流石の私でも躊躇いますね」


「うーん、最後は豊穣の森って書いてあったけど、行けないから私の家に向かいましょうか」


「もうデートは終わってしまうのですか!!! それは嫌です! もっと凪さんとデートしたいです!」


「お家デートっていいじゃない」


「お家デートなんて素晴らしい響きなんでしょう! お家デート! はぁーぁ! お家デート!!!」


「はいはい、家に帰りますよ。早くしないと置いていきますよ」


「今すぐにいきますー!」


 私は凪さんの手を掴み、凪さんの家へと向かいました。


 湖の洞窟まであと少しと言うところで、足元が突然崩れました。


「きゃぁ!? 落とし穴!?」


「凪さん!」


凪さんと私は深い穴に落ちてしまいました。落ちる時は当然、私は凪さんを庇いました。


「いてててて、あっ、イデアさんごめんなさい!」


 凪さんは私の体の上に倒れ込み、凪さんは慌てて私から離れようとしましたが、私は彼女の手を取り私の体に抱き寄せました。


「ちょっ」


「凪さん、お怪我がなくてよかったです!!!」


「イデアさんが庇ってくれたおかげで怪我してませんから、離れてくださいよ」


「凪さんの洋服が汚れてしまうのは嫌なのです」


「別に洗濯すればいい話じゃない」


「嫌なものは嫌なんです!」


「もう! 分かりました。私が上に上がりますから待っててくださいね」


 凪さんはそう言うと楕円で板状の魔石を作り出し、その魔石に乗ると‥‥。何も起こりませんでした。


「凪さん? 魔石に乗って何をしようとしたのですか?」


「空、飛ぼうとしたのにどうして飛べないの!!!」


「それなら、私が凪さんを抱き抱えて空を飛びますので、さぁ、私の腕の中に! さぁ!」


「圧がすごいって! まぁ、魔石で空が飛べない以上イデアさんに頼るしかないか。いや! それは、最終手段! 疲れるけど梯子作って登った方がましよ!」


 凪さんは梯子を作り壁に立て掛けました。すると、不思議なことに梯子が壁に弾き出されてしまい。梯子を壁に立てかける事ができなくなっていました。


「はぁ!? どうして、立て掛けれないの!!!」


 私はいつでも凪さんを抱き抱えられるように両手を伸ばして凪さんが来るのを待っていました。


「ですから、私の腕の中に」


「そうだ! 魔石を上に伸ばせばいいのよ!」


 凪さんは先程作った板状の魔石の上に乗り、魔石に一度触ると、魔石が上に伸びていきました。


「これよ! これ! いったぁーー!!!! 何よこの壁は!!!」


 凪さんは視認する事ができない不可視の壁に阻まれていました。


「くそぉ! これじゃあ、穴から抜け出せないじゃない!」


「凪さん、私でしたらあの壁なの一撃で貫いて見せますよ」


「うーん、なんか悔しいから考えさせて」


 その後、凪さんはありとあらゆる手段を使い様々な魔道具を生成しましたが、2時間の死闘の末。凪さんは穴から出る事を諦めてしまいました。


「もう! むり! この穴作ったやつ後で覚えておきなさい!!!」


 一方、主人様とイデアを探している三人組は豊穣の森の探索をしていた。


「紫水! そっちに主人様はいなかったのですか!」


「緑癒〜。空から主人様見つけられないの〜」


「僕は頑張って探してますよ! もしかして、主人様はここには来ていないのではないですか」


「そんな事はないと思うのですが、ちょっと6層目の方達と話を聞いてきますね」


 藍介は6層目に住む人達から主人様の情報を得ることに成功した。


「なんだよ〜。主人様来てないじゃん〜。そりゃあ〜、あれだけ探しても見つからないわけだよ〜」


「最後は豊穣の森でイデアさんだけ落とし穴に落ちてもらう予定だったのに狂ってしまいました。そういえば、何度も主人様を探していましたが、緑癒に頼んで蝋梅妃さんに落とし穴を作ってもらったのですが落とし穴はどこにあったのですか?」


「そういえば、見かけませんでしたね?」


「もしかして〜、お願いした場所間違えたんじゃない〜」


「そんな事ありませんよ。僕は豊穣の森の湖の前に作って欲しいと伝えたんですから」


「蝋梅妃さんって〜豊穣の森の事知ってるのかな〜」


「なんか、嫌な予感がしてきましたね。一度主人様の家に戻ってみましょう!」


 3人は主人様の家へ向かいました。そして、3人もまた、深い穴へと落ちてしまったのです。


「緑癒〜! これどうなってるんだよ〜!!!」


「どうして、私達が落とし穴に落ちてるんですか!」


「あれ? おかしいですね。まぁ、僕は先に上がってますね」


 緑癒は羽を羽ばたかせ穴から出ようとしたが、不可視の壁に阻まれた。


「痛いです! えっ、なんですかこの壁!!! 僕こんなの頼んでないですよ!」


 上から蝋梅妃の声が聞こえた。


「おや、主人様が我の落とし穴に引っかかったと思ったら依頼主達も引っかかっているではないか」


「蝋梅妃さん! 助けてください!」


 すると、蝋梅妃の他に違う声がした。


「蝋梅妃から聞いたわよ! 貴方達! 落とし穴はやりすぎよ!!! 今日はそこで反省してなさい!!!」


 そう、それは蝋梅妃に助け出された主人様の声だったのです。


「主人様!? そんな、助けてください」


「イデアさん、この子達助けて方がいいかしら」


「そうですね。今日はこのままで、明日助けてあげることにしませんか」


「そうよね。という事で、藍介! 緑癒! 紫水! 3人は明日になるまでここで反省してなさい!」


「そんなぁ〜」


「私達は主人様を見守っていただけです!」


「そうです! 僕達は主人様を守るために」


「イデアさんがいなかったら私は穴に落ちて怪我をしていたかもしれないのよ。そもそも、この高さなら死んでたかも知らないんだから、反省しなさい!」


 そして、3人は夜が明けるまで言い争いをしていたのでした。

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