第198話 偽ダンジョン作り開始!

 紅姫の子供達はイデアさんに任せて私達は洞窟の外へ向かっていた。


 私はクティスに乗り、右隣を花茶、花茶の頭の上に藍介、花茶の背にはライネルが乗っていた。そして左には紫水、紫水の背にはネルガルが乗っていた。


「凪さん、どうやればイデア様があんなに機嫌良くなるんですか?」


 一緒に同行していたネルガルが私に話しかけてきた。何故、ネルガルとライネルが同行しているのかというと、イデアさんが2人を連れってくださいとお願いされてしまったからなのよね。


「この2人は体力と筋力だけが取り柄なのでどうぞ、使い潰してください」


「どうして、使い潰されなきゃいけないんだよ!」


「俺はこれからサーフィンやろうと思ってたのに」


 ネルガルとライネルは抗議したが、イデアさんの一言で黙ってしまった。


「私に言われた任務、放棄していますよね」


「くっ、俺はちゃーんと情報集めてますよ」


 ライネルは目を泳がせながら否定した。


「すみません」


 ネルガルは観念して頭を下げていた。


「なら、私が凪さんの偽ダンジョン作りにお手伝いできないので、私の代わりに貴方達が手伝いに行ってきなさい!!!」


「はいっ!」


 そして、今、私は一緒に森へ向かっているネルガルの質問に答えていた。


「子供達のお守りしてくれたらデートしてあげるって約束したのよ」


「デート!!! それはイデア様があんなに喜んでるわけだ。あんなに拒絶してたのに、凪さんイデア様に気があるんじゃないですか」


「このデートは藍介に言われたから仕方なくよ。まぁ、デートプラインも藍介が考えてくれるから大丈夫よ」


「えっ、藍介さんがデートプラン考えるのですか?」


「私、デートなんて一度もしたこと無いからどんな事やるのか決まらないと思うから、藍介に任せたのよ」


「イデア様、可哀想」


「いいじゃない、ちゃんとデートはするつもりだから」


「主人様! デートって何するの!」


 隣にいた花茶がデートについて気になるみたい。そうよね。花茶も恋とか気になるお年頃なのよね。


「それは、えーと、あれよ」


 私は人生で一度もデートをした事がない。うん、デートって何すればいいんだろう? 乙女ゲーなら何度もデートした事あるけど、ゲームの中のデート言えばいいっか。


「遊園地行ったり、相手の家に行ったり、一緒に公園に行って遊んだりすることよ」


「遊びに行く事をデートって言うんだね! それなら、花茶、ライネルお兄ちゃんといつもデートしてるね!」


「おい、俺を巻き込むなよ!」


「ライネルお兄ちゃん、花茶と遊ぶの嫌いなの?」


 花茶は少し悲しそうにしていた。


「いや、花茶と遊ぶのは楽しいけどな、デートって言うのは惹かれあっている男と女が遊ぶ時に使う言葉なんだよ」


「そうなんだ! それなら、ライネルお兄ちゃんと遊ぶ時はデートじゃないね!」


「おう! そう言う事だ!」


「この頃、花茶がライネルさんと遊んでいるので、私は少し寂しいですよ」


「え!? そうだったの! お兄ちゃん今度いっぱい遊ぼう!」


「えぇ、一杯遊びましょう」


 そして、1時間の雑談をしながら私達は洞窟を出て、森へ偽ダンジョンを作る予定地に向かった。


 予定地を決めてくれたのはもちろん藍介が事前に地盤などを下調べをして決めた。


 洞窟の入り口にそって左に500メートル離れた場所に『偽ダンジョン予定地』と書かれた立て看板が置かれていた。蝋梅妃は蟻達を引き連れて、私達よりも先に着いていた。


 私はクティスから降りた。


「藍介! 本当にいい場所見つけてくれたわね!」


 藍介の頭を沢山撫でてあげた。


「そんな褒めなくても」


「いいな〜、俺も手伝ったのにな〜。俺〜、大変だったんだよ〜、ネルガルが波たてて欲しいってお願いされて〜、遠くの水を操りながら〜、藍介の手伝いしてたんだよ〜。主人様〜俺も褒めてよ〜」


「紫水も偉いわね!」


「主人様、我等はここを掘ればいいのか?」


「うん、立て看板がある所から少しずつ下に向かって掘って欲しいわ」


「承知した。皆の者! 掘り始めよ!!!」


 蝋梅妃の一言で蟻達は穴を掘り始めた。


「藍介、洞窟の構造図出してくれない」


「かしこまりました」


 藍介は洞窟の構造図を取り出して立て看板に貼り付けた。


「えーと、一旦下に向かって掘ったら、次は左に少しずつ曲がりながら、上に向かって掘るのね」


「えぇ、洞窟の出口はこちらから300メートル離れた場所が出口の予定地となる予定です」


「U字型の洞窟ってことね」


「ゆー字型?」


「アルファベットUってこの文字なんだけど、これから作る洞窟の形に似てるでしょ」


「本当だ!」


「侵入者は偽ダンジョンに挑み、そして、クリアしたと思ったら同じ森に出てしまうという努力が水の泡となる方式ですね!」


「侵入者が欲しがる宝なんてあげるわけないじゃない。そもそと、人様の物を勝手に盗むのは泥棒なのよ!」


「そうです! 泥棒はいけませんよね!」


「俺たちは別に盗みはしてないよな」


「貴方達は人を殺しているじゃない」


「いや、あれは襲いかかってきたから」


「ネルガルとライネルは自分の家に知らない人が勝手に入ってきたらどうする」


「そりゃあ、俺ならぶん殴るな」


「俺は使用人を呼ぶ」


「はっ、出たよネル坊っちゃま」


「坊っちゃまっていうなよ!」


「ネルガル〜、坊ちゃまなの〜?」


「坊ちゃまなんていうな!!!」


「ガルグルガルガ?(ここ掘ればいいの?)」


 クティスは蟻達を指さしていた。


「クティスどうしたの? そうよ。そこを掘ってくれないかしら」


「ガウ!(分かった!)」


 クティスは蟻達よりも先陣を切って掘り始めた。


「クティスさんのおかげで予定よりも早く洞窟を作れそうですね」


「土を運ぶの疲れてきたぜ」


「花茶はもっと運べるよ!」


「ふぁ〜あ、眠くなってきちゃった〜」


「おい! 土を運んでる途中で寝るなよ! おい! 起きろよ紫水!」


「今日はここで仕事やめにしましょうか。家に帰るの面倒だから、ここに家建てちゃいましょうか」


「それもいいですね! ですが、一度顔出さないとイデアさんが暴れ始めるのではないでしょうか」


「それもそうね。私は一旦クティスと家に戻ることにするわ。その時にイデアさん説明してくるわね。藍介料理手伝えなくてごめんなさい」


「いえいえ、紅姫さんと菊姫さん、百合姫さんが料理作りを手伝ってくれるみたいなので大丈夫ですよ」


「クティス家に戻るわよ!」


「ガウ!(分かった!)」


「あっ、その前に土まみれだから体を綺麗に洗いましょうね。紫水! クティスに水かけて!」


「ガルグゥ(分かったよぉ)」


 クティスは体を洗われて尻尾が地面につくくらい下がり、テンションがめちゃくちゃ下がった。

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