第6話 魔法学校での生活

朝になり今日も昨日と同じく寮内に鳴り響くガンガンとしたけたたましい音。

僕はたまらず目を開ける。


どうやらこの音は寮管の一人が起こしている魔法らしい。音を拡張する魔法なのだろう。


それにしても....この音はどんな目覚ましよりも強いな。


今日も同じように兄さんと一緒に朝を食べた。


そうして兄さんと別れた後僕はユージと合流した。ユージは隣の寮に住んでいる。


今日から授業が始まるので一緒に行こうと昨日約束したのだ。


「おはようユージ」


「おう、それじゃあ行くか」


「うん」


この学校も一応クラスというのはあるらしい。嬉しいことにユージと僕は同じクラスなのだ。


その後たわいもない話しをしながら僕達は教室へと向かった。


───ゲッ。何でコイツが....


教室に入った瞬間このクラスにしてきた教官達を恨みそうになった。


何でこいつとこのイカれた赤髪と一緒なんだよ。


そう昨日殺してやるとか言っていたあの赤髪と同じクラスになってしまったのだ。


すると赤髪は急に僕の方を向いて来た瞬間表情が変わった。


「てめぇ昨日の」


すると顔をニヤリとさせ近づいてくる。


「そうかそうか俺と同じクラスなのか」


「そうみたいだねぇ」


僕は苦笑いをしながらそう言った。それがこいつを刺激することぐらいわかっていたが

昨日の事でムカついていたのでその腹いせだ。


すると赤髪が僕の肩に手を置きギュッと握り耳元でこう言ってきた。


「お前はぜってぇ潰す。覚悟してろ」


そう言い赤髪は席に戻った。


何なんだほんとこいつ狂犬じゃん。後にわかった事だがこの赤髪の名はウルフと

言うらしい。ほんとお似合いの名前だ。


それからしばらくユージと話しているとクラス内がザワザワとしだした。

何かと思い周りを見渡す。教室に入ってくる一人の女子、亜麻色の癖のない

髪を肩ほどまで伸ばし髪と同じ色のつぶらな瞳。入学式の新入生代表のアイだった。


周りから見られていることに気がついたアイは一瞬「えっ」という顔をした後

笑顔を見せ「みんなおはよう」と言った。その可愛らしい笑顔にクラスの全員

顔を赤らめ彼女に視線を吸われる。


すると女子達はアイに興味深々になり

「あなたがあのアイ?」とか「七つも魔法使えるってほんと!」とか質問攻めにあっていた。その姿はまさに転校生が来たクラス、そんな風貌を見せていた。


「おいシン、あの子めちゃくちゃ可愛いな」


ユージが変な笑みを見せながらそう言った。


「確かに可愛いね」


そうだ僕も男だあんな子みたら心が揺れないわけが無い。だけどまぁ僕みたいなモブが彼女に関わることなんて多分ないだろう。

見られるだけましそう思っていた方が楽ってもんだ。


そんな感じで彼女を横目でチラチラと見ていた。その時一瞬だけ目があったような気がした......。


まっ、気のせいか。


そうしてしばらくすると教室に教官が入ってきた。帽子を被っているせいで髪が見えないが何となく分かる修羅場を乗り越えた人ってこんなに感じ何だろうとそう思えるほどに

周りから出るオーラが違うかった。傷だらけの顔に鋭い目付き。


「今日からしばらくお前たちの教官を務めるグレイだ」


名をグレイと呼ぶらしい。この学校はクラス単位で何かするなんて事は今はしないらしい

四年ほど経てば新たにクラスを設置する。カイトの言っていた黒騎士のクラスだ。

そうなればクラスで皆団結する。クラスでやる気がないところに黒騎士は来ない。

その中で選ばれるとしてもほんの数人だけだが。まっ僕には関係ない事だ。


授業の中身は剣の鍛錬に模擬戦、体力作りに外を走ったりだ....。


き、きつい....なんで....初っ端から.....10キロも....。


本当に死ぬかと思った。


走り終わった後体力の限界で僕は一歩も動けずにいた。


「シン体力ねぇんだな」


苦笑いをしながらそう言うユージ。


「逆に.....なんで.....そんな元気.....なの?」


10キロ走っても息一つ上げないユージ。


「え、そんなにしんどいかこれ」


冗談抜きで不思議そうな顔をするユージ。


はは、本当バケモンだよ。


アイさんも全くしんどそうにして無いし。

彼女の周りにはいつも人が集まる。人気で運動神経も良く、魔法からも愛されるそして超絶可愛い。彼女ほどの完璧人間はおそらくいないだろう。


うん、尊い。僕はそう思った。


この学校の授業は嫌なものだけでは無い。なんてったって魔法を学べるのだから知識を習う座学そして実技もある。女性教官のエリスという人がこの授業の担当だ。


最初の授業なので座学がメインだったがとても勉強になった。僕の知らないことがたくさんだ。


実践もなかなかだ少し教えてもらうだけで前よりも魔法が使いやすくなった。


今日1日通して分かったが前世の学校みたいに子守唄のような授業はなくそこそこ楽しかった。まぁウルフがずっと僕を睨みつけてくる以外は.....。





入学してから二ヶ月ほどたった。カイトもその友達のマルタとケイジ皆無事に特待生になることが出来たらしい。僕は大いに喜んだ。そうしてカイトたち三人は正規では無いものの魔法軍の小隊に入いったらしい。実践経験がないやつに招待を任せるわけにはいかないしな。なのでカイトはここ数日量に戻ってきていない。それが少し寂しくもあった。


学校には徐々に慣れてき、新しく友達が出来た。青髪に青い瞳、優しく穏やかな声を持つ男、ハルだ。


最近はユージとハル二人で過ごしている。友達がいるだけで学校が、こんなに楽しいとは思ってもみなかった。

前世の僕に教えてやりたいところだ。そんな事を一人考えている時だった。


「.....ねぇ....ねぇねぇ」


誰かが僕の肩を叩いた。僕のその方に振り返る。


───っえ。僕は目の前に広がる光景に目を疑ってしまった。、


だって...なの美少女アイがあるのだから。


「どうかした....ア、アイさん」


コミュ障の僕にはレベルが高すぎる。見事な虚取りを見せ僕は恥ずかしくなった。


「私の名前覚えててくれたんだ。ありがとシンくん」ど笑顔でそう言う。


まぁクラスの人気者だし嫌でも覚えてしまう。それより.....シンくん。

なんで彼女が僕の名前を.....覚えててくれてるんだぁ!!変に嬉しい気持ちになった。


「アイさんこそ僕の名前....」


「そんなの当然だよ。クラスの仲間なんだから」


へぇーこの世界にもクラスを大事にする人いるんだ。


「で、アイさん僕に何か用事でも?」


ここで自分に興味があると思ってしまうやつは現実を知らない男だ。僕はそんなやつと同じにはならない。内心そうであって欲しいと思ってない事をないが....。


するとアイは疑問そうな顔をした。


「用事....特にないなぁ」


小さな声でそう呟くアイ。


───今なんて言った。用事は無いって言わなかったか。


「ずっとシンくんのこと気になってたんだ」


笑顔でとんでもないことを言い出すアイ。


クラスの全員が目を途端に見開きこっちを向いてくる。徐々にその目を細めていき僕を睨みつけてきた。


「気になってたって....」


僕の心臓はバクバクとうるさく鳴っていた。

こんなモブでも彼女に.....美少女に好かれていいのか....。そんな単純な思考になっていた。


「シンくんのその髪色が」


「えっ....」


僕がそう言うと


クラス中で笑いが起きた。


恥ずかしい....絶対そんなわけないのに信じてしまった。あぁー死にたい。


「シン焦ったぜいつの間に彼女と仲良くなってたんだってな」


ユージが駆け寄ってくる。


「僕もドキドキしたよあのシンくんがそんな事できるだって」


続けてハル。


「アイ最高すぎ」


一人の女子が笑いながらアイにそう言う。


当の本人は首を傾げて「何のこと?」と言っていた。


何だ....天然なのか?


僕は天然の怖さを思い知った。


「ユージ、ハル僕を殴ってくれ今の記憶を無くしたい.....」


冗談抜きでこの時の僕はそう思った。


さっきから首を傾げたままのアイに笑いながらその女子は言った。


「何のことって今すごい告白みたいになってたよ」


「───えっ、こ、告白!」


アイは顔を赤らめた。


「わ、私何て言ってた」とアイ。


その女子は「ずっと気になってたんだ。そう言ってたよ」と面白がってニヤリとした顔で言った。


「えぇ....わ、私....うぅ〜」


そう唸りながら真っ赤になった顔を隠すアイ。


「アイさん....大丈夫?」僕はそう聞いた。


「ご、ごめんね.....シ....」


真っ赤になった顔を僕に見せそう言うアイ。

恥ずかしすぎて言い切る前に教室の外に逃げてしまった。


何あの子、めっちゃ可愛いじゃん。僕は素直にそう思った。


(は、恥ずかしい〜。でもこの世界にも黒髪居るんだ....)教室の外で蹲りながらそう思うアイ。


こんな感じでと言っても今日はまさかのイベントがあったが今のところ楽しくやっている。「絶てぇ殺してやる」と言っていたウルフも今のところ何もしてこない。それだけが少し疑問だ....。

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