第5話 魔法学校入学式と初めて友達
カーテンの隙間から入ってくる光から目を背ける。すると寮内の廊下に響くけたたましい音で強制的に目が覚めた。
何この音。
僕は体を起こし背伸びをした。
「やっと朝か」
僕はそう漏らした。案の定楽しみすぎて少ししか寝られなかった。
何でこう言う時、朝になると眠たくなってくるんだろう。二度寝の誘惑が僕を襲い。またベットに横たわろうとした時ドアを叩く音が聞こえた。
「シン起きたか」
カイトの声だった。
僕はドアに向かい少し開けた。するとカイトが覗き込んできた。見た感じもう制服に着替え用意周到な感じだ。
「早く準備しろよ。朝飯食べに行くぞ」
笑顔でそう言うカイト。
「うん、少し待ってて」
そう言い僕はドアを閉めた。
目を覚めさせるため冷たい水で顔を洗い眠気を飛ばす。寝癖をなおし、制服を着て僕は部屋を出た。
「お待たせ兄さん」
「よし、じゃあ行くぞ」
そう言ってカイトは歩き始めた.
僕も兄さん着いて行く。階段を降り一階の食堂に着いた。
なんかすごい視線を感じるなぁ。僕はそう思い周りをキョロキョロとした。
するとそれに気がついたのかカイトが口を開いた。
「黒髪が二人揃って歩いてるからな珍しいんだろ」
「そんなに特別なんだこと髪色」
街中に出たら稀に見るくらいだと思ってた。
地元でここまで視線を感じなかったのは母さんと父さんが前から住んでて馴染みがあったってだけか。
「それもあるけど単純に俺の弟が来たからだと思うぜ」
「兄さんそんなに有名人なの?」
「ああ、なんたって俺は今特待生候補者に選ばれてるんだ」
カイトは誇らしげにそう言った。
特待生候補者?
「兄さんそれってすごいの?」
「ああ、この学校は13歳になったら軍人になるか他の職業に就くかによって習うことが変わってくる。兄さんが軍人コースに行ったのは知ってるだろ?」
「うん」
確か家でそんな話してたような。
「そこから数人選ばれた生徒だけ黒騎士に直接教えて貰えるんだ」
「黒騎士?」
「この国最強の騎士団、黒の騎士団の隊員だ。よっぽどの事が無いと前線に出ることは無いからこうして教官となってるんだ」
「強いなら戦ったらいいのに...」
「もしもの事が起きた時いなかったら困るだろ」
それもそうか。
「黒騎士に直接教えられそこで認められたら兄ちゃんみたく候補生になる。これがその証だ」
そう言うと兄さんは制服のえりに金色のバッチが着いていた。
「これを一年付けていられたら特待生になれる。後二ヶ月ぐらいで兄ちゃんは特待生だ」
ドヤ顔でそう言うカイト。
ちなみに特待生になったら黒色のバッチを貰えるみたいだ。
「特待生になったらどうなるの?」
「正式に軍人となった時小隊長から始められるんだ。それに特待生を取れればもしかしたら黒の騎士団に入れるかもしれないからな」
「兄さんは黒の騎士団に入りたいの?」
「ああ、そりゃな。今の俺の夢だ」
ほんと父さんと似てるなぁと思った。特待生の凄さは今の僕にはあまり分からない。でも多分相当大変だったんだろう。だってカイトは前よりたくましくなってるのだから。
朝ごはんを食べている時に言っていたのだが昨日会った二人も候補生らしい。つまり僕はなかなかにすごい人たちと昨日会っていたことになる。
朝ごはんを食べ終え、僕はカイトと別れ入学式の会場に向かった。
ちなみに朝ごはんだが美味しかった。でも母さんの作るご飯の方が美味いと思った。
入学式の会場は体育館のような場所でたくさんの生徒が椅子に座っていた。中に入ってわかったが建物が魔力で覆われていた。
恐らくここは訓練場として普段使われてるのだろう。多分強化系の魔法がかかってるのだろう。魔道具も武器とは限らないという事を知った。
そしてこの視線はなんだほんと....。会場に入った途端に痛いほど感じる周りからの視線
その中でまれに聞こえてくる「特待生候補者の弟らしいよ」とか「あんな奴に特待生は譲りたくねぇな」と勝手にライバル意識が芽生えている奴もいる。
この世界の学校もしかして前世よりやばいのか.....。先が不安になってきた。
運のいい事に座る席は自由みたいだ。僕は端の席に座った。
すると横の席から声を掛けられた。
「大変だなお前」
声のする方を見るとそこには同い年とは思えないほどにでかいからだの男がいた。
茶色の短髪に鋭い黒の瞳。声はまだ子供っぽさが残っていた。
「.....うん、ほんとだよ」
僕は少しこの男を警戒した。だって急に話しかけてきたんだ何か企んでるかもしれないだろ。
「そんな警戒しなくても俺は何もしねぇよ」
バレてたのか....。
「ごめん....」
「良いぜそれよりお前名前なんて言うんだ?」
笑顔でそう聞いてくる男。見た目ほど怖い奴じゃなさそうで安心した。
「僕はシン、よろしく」
「俺はユージだよろしくな」
ん?.....この流れはもしかして友達になれるのでは?
「ねぇユージ....」
「全員起立!」
教官だろうかそんな声が聞こえたと同時に全員が即座に席を立った。入学式が始まったのだ。
どんなタイミングだよ。もう少しで友達になれたかもしれないのに......。
「敬礼!」
やはり軍に入る生徒が多いからかここでは敬礼をするみたいだ。
「着席!」
全員が瞬く間に座る。
そうして入学式は始まった。中身はさほど前世と変わらなかった。校長の話しがあり、やっぱり長話だった、これは全世界共通なのか。でも一つ違うのは誰も寝ないのだ。姿勢を崩すものすら居ない。あはり軍隊に入る人間が多いからか入学式はすごく硬い雰囲気だった。
ほとんど変わり映えがないからそれくらいだ。だが一人気になる人物がいる。
入学生代表の挨拶をしていた女子だ。名前は確か....アイと言っていた。
亜麻色の癖のない髪を肩ほどまで伸ばし、髪と同じ色の瞳はつぶらですごく可愛らしかった。だがそんな瞳には誰にも負けない強さというか野心というかとにかく強さが宿っていた。気になったのはその整った見た目では無い.....。
心が揺れないことは無かったけど....。
当然入学生の代表だ。只者ではないだろうとは思っていたが彼女は予想を遥かに超えていた。本当かは分からない、彼女から聞いたわけじゃく周りの生徒のひそひそ声でだ。
何と彼女は七つの魔法を使う事ができるというのだ。正直驚いた、みんな一つが限界なんだんと思っていたから。彼女の強さがどれほどなのか一度見てみたいものだ。
※
入学式が終わりみんなぞろぞろと会場を出て行く。学校での授業が始まるのは明日からなので今日はこれで部屋に戻れる。
帰るか。僕は席をたち出口へ向かう。すると三人の男たちが僕の行く手を邪魔してきた。
「お前かぁ特待生候補者の弟ってゆうのはよぉ」
そう言う一人の男。赤髪の短髪に赤色の鋭い眼孔。いかにも暴力が好きそうなイカれた目をしていた。口には何かで切られたような傷跡があった
うわぁーやばそうなやつらに絡まれたなここは一旦....
「人違いじゃない。僕に兄はいないよ」
「そんな嘘通じるとでも思ってんのか。黒髪黒目間違えるわけねぇだろ」
ニヤリとした顔でそう言う男。
まっそうなるよね。もぉめんどくさいなぁ。
僕の中身の年齢比べると目の前の奴らは皆ただのガキに見えるのでさほど怖さはなかった。
「それで僕に何かあるの?」
そう言うと男はニヤっと笑い口を開けた。
「今のうちに脅威になりそうなやつを潰しておこうと思ってな」
うわぁチンピラじゃん。そう思った。
教官も忙しいのか既に会場からは居なくなっていた。
これは結構まずいな。
男は拳を出しもうやる気になっていた。
「ちょっと待って僕は別に....」
すると赤髪の男は僕に襲いかかって来た。
「おらよぉ」
僕に振るわれる拳。間一髪僕はそれをガードし防いだ。
何だこいつ結構パンチ強いじゃん....ほんとに同い年なのか。
「まだまだ行くぜ」
その後も襲いかかって来る赤髪、パンチの威力はそこそこあるが大振りなのもあり防ぐことは簡単だった。
前世で殴られすぎて振るう拳の軌道が少し掴めるようになってたんだよな。それでもあの時ガードなんてしなかったけど。
すると赤髪の男は攻撃をやめた。
よし、このまま立ち去れ。その願いはいとも容易く消え去った。
「拉致があかねぇ、お前らあいつ抑えろ」
さっきまで立っていただけの、茶髪と金髪の男が僕に近づいてきた。すると僕の腕のガシッと掴み動けないように押さえつけてきた。
「離せ」
僕は抵抗した。
「暴れるなよ」
金髪の男がそう言う。すると一瞬視界が真っ暗になった、と同時に頬にズキっと痛みが走った。
赤髪の男に殴られたのだ。
僕は赤髪を睨みつけた。ニヤつくそいつの顔にだんだん腹が立ってきたのだ。
「何だよその顔は」と赤髪。
「卑怯だぞ。こんな事しても僕は折れないからな」
ああ、そうだ。僕は決めたんだもう前世の自分にはならないって
「そうか。それはいつまで言えるんだろうなぁ。俺はやる時はとことんやるって決めてんだ。お前がそれを言えなるまでボコボコにしてやるよ」
暴力に満ちた目をする赤髪。ここまでイカれているやつを見ると年齢関係なく
恐怖を感じてしまう。
すると赤髪は拳をあげ僕の顔めがけ勢い良く振るう。反射で僕は目を閉じた。
「何してんだお前」
そんな声が聞こえた。少なくともここにいる三人の奴らの声じゃないのは
わかった。
僕は恐る恐る目を開ける。するとそこには見覚えのあるでかい男がいた。その男は赤髪が僕に振るった拳を横から握り止めていた。
「ユージ....?」
そうその男はユージだったのだ。
「何だてめぇ」
赤髪はユージの方を向きもう一方の手でユージを殴ろうとした。
するとユージはその手も取り....
「俺の友達に手ぇ出してんじゃねぇ」
そう言い赤髪を投げ飛ばした。
「ぐはぁ」
赤髪は近くの壁に激突した。
「クソがぁ」
痛みで立つことの出来ない赤髪。
僕を抑えていた二人の男はやばいと思ったのか急ぎ足で赤髪の方に行き引きずりながら逃げていった。
その時赤髪が「覚えてろよ、絶てぇ殺してやる」と叫んでいた。
「ありがとユージ助けてくれて。後、友達って...」
ユージは確かに言った僕を友達だと
「嫌だったか...?」
悲しそうな顔になるユージ。
「嫌じゃないよ」
僕は高速で首を振りそれを否定した。
「なら、これからよろしくなシン」
そう言い笑顔を見せながら僕の前に手を出すユージ。
友達....初めての───友達!僕はその手を強く握った。
「うん!よろしくユージ」
こうして僕は初めての友達が出来た。
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