第3話 復讐執行

「あの子の悪者は、僕が全員消してやる」


 彼女の家に行ってから3日後、休日の日に学校に行った。でも僕は入っていた部活動には行かず、すぐに体育館の裏に向かった。そこにはすでに、哲矢とその仲間たちがたむろして待っていた。それもそのはずだ。僕が彼らを呼んだからだ。


「おいおい、てめぇ呼んどいてあとに来るとか何ぬかしてんだコラァ?」と仲間の一人の広谷ひろたにが声を荒らげてやってきた。この男はすぐにカッとなるせいで前に暴行事件を起こし、数ヶ月の停学になったことがある。僕は広谷に初めてそこで会ったが、まぁ正直眼中に無かった。

「まぁいいだろう、あの弱虫が逃げずに来たんだからよ。」と僕を嘲るように言いながら、哲矢は広谷をセーブした。

「ごめんね、少し準備に手こずっちゃったんだ。」僕は笑顔でそう言って返した。


 この3日間、僕はどうやって彼らを殺すかを秘密裏に考えた。残念だが、自分には能力はおろか、魔力すら上手く使えない。そのため彼らには武力行使をするしかないが、それ以前に殺害の動機が彼女の復讐であることを隠蔽するために工作をする必要があった。幸いにも、僕には彼らを殺すには十分な理由があった。今までの僕へのイジメの証拠を集め、あとは復讐するための計画書を適当に書けば、彼女に捜査が行くことがなくなる。これで彼女は、絶対に助かるはずだ...!


 「んで、なんで俺を呼んだわけ?そんなに暇じゃないんだよ。」と哲矢は眉を傾けて僕に聞いてきた。どうやら自分たちが、何を犯したのか分かっていないらしい。本当に幸せな奴らだ。見ているだけで吐き気がしてきた。

「なに、そんなに時間はかからないよ。お前ら、未江野凪って子を覚えてるか?」僕は直球で投げかけた。

「未江野?あぁ〜、最近学校に来てないあの女か。それがどうしたよ?」と、満更でもなさそうに彼は答えた。僕はふつふつと湧き上がる怒りを抑え、必死に冷静を装った。

「ちょっと前に彼女の家に行ったんだ...どうやら、君たちが彼女を傷つけた本当の犯人らしいね?お前ら...どういうつもりなんだよ?」と聞いた。すると仲間の細川がドキッとして、焦った口調で言った。

「はっ...はぁ?な、何いってんだよお前。そんなのは知らねぇよ。別に...」すると、後ろで座っていた哲矢がゲラゲラと笑い、憎たらしい声でこう言いやがった。

「ハハハ...!!だったらなんなんだよ?別にそうだとしても、俺はあの女が嫌いだったからせいぜいするぜ。大体な、俺はお前らよりもず〜っと偉いんだよ。お前らみたいなゴミをわざわざ俺の娯楽に使ってやって、綺麗に掃除してやってんだ。それの何が悪い?それであの女が鬱になろうが自殺しようが、俺には関係ねぇんだよ。」


 僕は言葉を失った。いや、これ以上話しても無駄だと言うのに気づいた。こいつは根っからのクズ、自分の為なら相手がどうなってもいいと思っている生粋のクズだ。こんな奴に丁寧に質問するのは、騒ぐ近所の犬を諭すのと同じぐらいだ。早く終わらせよう...もう、いい。僕の頭の中は、どす黒いに埋め尽くされた。

「なんかヒーローみたいに気取ってるけどな、お前が今更なにしようがもう変わんないんだよ。まぁいいや、丁度いい。俺らに反抗したらどうなるか教えてやるよ。なぁ、広谷?」というと、やつは広谷にニヤついた目線を送った。それを受け取った広谷は不敵な笑みを浮かべてこっちにのそのそと歩いてきた。

「へへっ...恨むんじゃねぇよ?これはお前が俺等に歯向かってきたのが悪いんだぜ。じゃあな、このポンコツ!」と言って大きな握り拳を振り上げたその瞬間、僕は自分のカバンに入っていた狩猟用のナイフを持ってやつの腹についた。その時、広谷の服と僕の手が赤く生ぬるい液体で染まる。


 「...お前も、邪魔だ。死ね。」

「...はっ?て、てめぇ...」やつがそのまま次を言う前に、僕はナイフを持っていた手を返して上に振り上げた。すると、やつは腹から噴水の様に血しぶきを上げながら後ろに倒れた。そのまま広谷は、白目を向きながら地面に倒れてた。

「は...嘘、だろ...!?」

細川と哲矢は驚いたように僕を見ていた。まさか人を殺すとは思っていなかったらしい。どこまでおめでたい奴らなんだか...正直呆れた。

「ま、まじかよ!や、やめてくれ〜!!」細川は叫びながら逃げようとする。それを見逃す訳はなく、僕は細川を近くの花壇に押し倒して喉にナイフを突き刺した。やつは人の声と言えないような悲鳴で、血を吐きながら泣き喚いていた。とその時、腰を抜かしていた哲矢が僕に突然、命乞いをし出した。


 「ま...待ってくれ!お...俺が悪かった。今から警察に自首するから、俺の命だけは助けてくれ!も、もちろんタダでとは言わねぇよ!たんまり金も出すから、いくら欲しいんだ?親父に頼んでやるから!ほら、いくら欲しいのか言えって!」僕は必死に命乞いをするやつに近づいてこう尋ねた。

「そのお金は、お前が奪った物と同価値なのか?」

「は...?な、何言ってんだよ。そりゃあお金は大事だろ?」

「お前が奪ったのはな...そのお金じゃ買えない、大事な大事な物だったんだよ。」そういってやつの腹に赤く濡れたナイフを躊躇せずに刺した。

「がっ...!!」

「...おい、聞いてるのかよ?彼女の人生はな、お前みたいなのがヘラヘラと笑って奪って良い物じゃねぇんだよ。...おい何寝てんだよ。おい、起きろよ。おい...おい...」腹を刺した時痛みのせいか、やつは既にそこで気絶してしまっていた。だがそんなことを気にもとめず、僕はやつに馬乗りになってナイフで滅多刺しにした。何十回、何百回と、肉を刺す生々しい感覚は僕の手にジワジワと鮮明に染み付いていった...


 気がつくと僕は、顔も分からないぐらいになった死体の上で警官に捕らえられていた。誰かがこの現場を見て通報したのかと思ったが、彼らの死体の腕輪が点滅してるのを見て不意に思い出した。

「(そうだ...思い出した。この腕輪は、持ち主の生命反応がなくなった際に自動で警察に通報が入る仕組みになっているんだった。社会の授業で昔習ったな。でもいいや、どうせ捕まるのは僕一人なんだ。初めから全て、計画どおりだ...)」

すると、悲惨な現場を見た一人の警官が僕にこう聞いてきた。「お前...一体何をしたんだ!!」


僕は涙目で警察官に答えた...「僕は、同級生を殺しました」

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