第12話
思えば、この時が初めてだったかもしれない。
誰かと同じ目線に立って話をしたことも。
「人間」の姿に化けて、地面の上に立ったことも。
「…嘘」
アカネは呆気に取られていた。
体を分解し、再構築する。
その時私は一度液体に戻り、色も形も持たない“超流動状態”に移行する。
外から見れば、異様な光景だったに違いないだろう。
2mはあった狼の体はバターを熱で溶かしたように崩れ、霧のような微分子の塵となって、空間の中に融け出す。
私は体の質量と密度を、自由に操作することができる。
もちろん上限があるが、外からの物質原子を利用して、ありとあらゆる状態に移行することが可能だ。
狼からミクロな状態に移行した私は、見よう見まねで、彼女の「姿」に化けた。
アカネの姿に。
麦わら帽子を被った、1人の少女の姿に。
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