第11話



 「…き、着ぐるみ…!?」



 私が喋ったことにかなり動転していて、“中に人がいるのか”と言い出した。


 もちろんいるわけがない。


 狼になりきっていた私は、「私が何に見える?」と聞いた。


 彼女は答えなかった。


 多分、化け物に見えていたんだろう。


 怖いものじゃないと伝えようとしたが、彼女にはもうそんな余裕はなかった。


 近づこうとしたんだ。


 そしたら、「近づかないで!!」と必死に訴えてきて。



 苦労したんだ。


 彼女を落ち着かせることも、私が「誰」かを伝えることも。


 狼の姿にビビっていること。


 それはわかっていた。


 ほとんどの生物は、「視覚」でモノを判断する。


 だから、彼女が怯えているのは、きっとこの姿のせいだろう。


 彼女が怖がらないように、どうすればいいかを考えた。


 彼女と同じ「視線」に立とう。


 そう思いながら。

 

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