第10話
思えば当時から不思議に思っていた。
世界には「言葉」があるのに、どうしてそれが通じないのか。
空を飛ぶ鳥も、水の中を泳ぐ魚も、4本足の鹿でさえ、言葉を持たない。
森の中で彼らに話しかけたんだ。
全く、同じ姿になって。
だけど言葉は通じなかった。
相手が何を思っているのかもわからなかった。
私は見た目を変えることができても、その変身した本体の細胞や仕組みを完全に理解しなければ、“完全にコピーした”とは言えない。
鳥になろうが魚になろうが、それはあくまで表面的な外見だけで、内臓や血管、生物学的な仕組みは、全く異なるものだった。
私は絵本の中でしか彼らを知らなかった。
テレビの画面の中でしか、彼らについてを観察することができなかった。
今となっては幾分かマシにはなったけど、それでもまだ、よくわからないことだらけだ。
当時は分別さえできなかった。
「種族」という概念でさえ、知らなかった。
目の前にへたれ込んでいる少女が、「子供」であるということでさえ。
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