第19話 浮気夫の凋落 終

♤東 伸吾 Side ♤


 真希との離婚が成立した。「財産分与」なんかでガッポリ持っていかれたが、これであの弁護士と縁が切れたんだから安いもんだ!おっかねーよあいつ……


 そして辞令が下りて俺はヒラに降格した。降格した俺に皆は優しい言葉をかけるが、目が笑ってるし実際に影では笑ってるんだろう。まあ俺でもそうするだろうから文句は言わないが……

 それよりも、直接の上司になったのがかわいがっていた結城なのが心に来るものがある……

 これであいつが不慣れで失敗とかしてくれれば溜飲も下がるというものだが、卒なくこなしやがるから腹が立つ。


 こんなときは梢でも抱けば気が紛れるのだが、ここ最近は用事があるらしく偶にしか会えない。まあ会ったときはとことん溺れさせるので、その時は気が紛れるが……せっかくずっと一緒に居られるのに、事が済めばそそくさと帰るのが気に入らない。


「おい、今日は泊まっていけよ」


「ごめんなさい、明日朝から友達と約束があるの〜」


「チッ、ならもう1回だ」


「あん……もう、だ〜め明日朝早いの!だから今日はここまでよ?もう帰るわね〜」


 離婚してから、なんだかやることなすことが上手くいかない。酒を飲む時間が増えていった……


 そんな鬱々とした日々を過ごしていると、ある噂を聞くことになった。なんでも梢と藤井が付き合っているというのだ。藤井といえば、あの役立たずの木偶の坊……そんなバカなと思いながらもその事を梢に問い詰めたら、


「あら、バレちゃいました?」


「お前……どういうつもりだ?俺達付き合っているだろうが!」


「あははは、伸吾さんがそれ言います?ウケるんですけど」


「どういう意味だ!」


「伸吾さんだって不倫してたよね?自分はされないとでも思ってました?」


「ぐっ……」


ぐうの音も出ないとはこの事だな……


「それに藤井くん伸吾さんよりエッチ凄いし?それにあの藤井コンツェルンの御曹司なんですよ?もう落ち目の伸吾さんとは比べられませんよ〜」


 なんでそんな奴がこんなところで働いてるんだ!自分のところで働けや!


「なんでも後継者は修行のためにグループ外で働かなきゃいけないんですって。ホントに偶然その事を知ったときにはこのチャンスは逃せないと思っちゃった♡それにみんなは知らないからライバル居ないし?」


「それで俺とはセフレってか?」


「私の話を聞いてました?藤井くん伸吾さんよりエッチ凄いんですよ、セフレ要らないでしょ?それにバレたときのリスクってあるじゃないですか?伸吾さんにはよく分かると思うんですけどね。なので今日でお別れです。大好きでしたよ?絶好調のときはね」


「待てよ、それはないんじゃないのか?」


「え?なんでですか?ただ男女が付き合って別れだけですよね?よくあることですよ〜」


 そう言い残すと振り返ることなく帰って行った。俺は梢の最後の一言が耳にこびりついて離れなくて、呼び止めることも出来なかった……


「俺がそこら辺のただの男だってのか?」




 遂に何もなくなった俺に、追討ちをかけるような出来事が起こる……人事課長に呼び出され、


「稚内支社ですか?」


「そうだ、そこに係長として赴任して欲しい。これは君の今までのキャリアを考慮した栄転だよ?」


「ちなみに断ることは?」


「出来ると思うかい?思うならやってみると良い」


「分かりましたお受けします……」


「そうか!受けてくれるか!良かった良かった!」



 そうして俺は、金も地位も名誉も将来も女も無くして誰も俺を知らない北の地へ行くことになった……


なにが悪かったんだ?教えてくれ……






◇◆◇◆


お読みいただきありがとうございます。


これで伸吾くんシリーズは完結です。

伸吾くんも新しい地で1からやり直せるし、私もなんとかNTRタグを回収できましたし。WIN WINですね!


次回も読んでいただけると嬉しいです。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る