第18話 離婚


 本山弁護士から離婚協議の立ち会いの話が来た。どうも「弁護士会照会」の回答が想定外に早く来たそうよ?

 しかも何故か伸吾の態度が軟化というか覇気がないというか?協議にも協力的というか投げ遣りというかそんな感じでもう早く終わらせたいみたい。


「さあ今度こそ決着つけるわよ!」


「そ~ね、早く決着つけて誠さんとラブラブしたいもんね?」


 みどりが茶々を入れてくる。なんでここで誠の名前が出るのよ!


「誠は関係ないでしょ!」


「はあ?まだそんなこと言ってんの?さっきの電話のやり取りなによ、甘々だったじゃないの!あんたの声で砂糖吐くかと思ったわよ」


 そんな事ないわよ!ちょっとあいつが病み上がりだから気を使ってるだけだもん!ただの盲腸だけど……


 そんなことより、今は眼の前の協議の事に集中よ!さっさとケリを付けて新しい人生を生きるのよ!待っててね誠……って違うから!




 以前と同じ相談室に入ると、ずいぶんと憔悴している伸吾が座ってる……背中が煤けてるわね……


「伸吾……」


「真希か……とんでもない弁護士を雇いやがったな……えらい目にあってるんだぞ?こんな事なら最初っから素直に開示しとけば良かった……」


 なに言ってんのかよく分からないけど、どうやら相当堪えてるようね?


 協議自体はすこぶるスムーズに進み、「婚姻費用」も「財産分与」もこちらの言い分をほぼ飲む形で決まった。ホントに早く終わらせたいという気持ちが垣間見える。

 「離婚協議書」と「公正証書」の作成を済ませて、最後に離婚届に双方の署名捺印、ちなみに証人欄には母さんとみどりに署名捺印してもらっている。


「これでもうすぐ他人だな……」


「そうね、すぐにでも提出するから、明日には間違いなくそうなってる……私はね伸吾?」


「なんだよ」


「マイホームの夢はふたりのものだと思ってた。それが違うとあなたに突き付けられたのが許せなかった」


 あれ?こんな事いまさら言うつもり無かったのに言葉が止まらない。


「あなたに騙されていたけど、少ない給料でも夢さえあればふたりで乗り越えていけると心底思ってた……なのに、なのに!」


「すまなかった」


「ふん!敷田さんとお幸せに!」


「そうだな……もうあいつしか残ってないから……」


 そう呟いて伸吾は部屋を出て行った……ずいぶんとあっさりしてるわね。私も伸吾も……どこで道が離れていったんだろう?

 ずっと寄り添っているつもりだったのに、私が面倒なことから目を背けて全部伸吾に任せてしまってた。ちょっとでも関心を持っていたら未来は変わっていたのかしら?

 ん?でもあいつ浮気はしてたよね?なら結局こうなってたわよ!うん仕方ない!


 最後にちょっとおセンチになったけど、よく考えたらどっちみちこうなってたのが分かってスッキリしたまであるわね!

 さあ役所に行って「離婚届不受理申出」を解除して、さっさと「飯島 真希」に戻るわよ!




 離婚届を受理させて役所から出る。大分涼しくなってきたわねもう秋かしら、そろそろ秋冬物出さないとってもう主婦じゃないのよ!思考を変えなきゃ……

 そうだ、終わった事を報告しなくちゃ、スマホを取り出し電話を架ける。


「もしもし、うん終わったよ……」










◇◆◇◆


お読みいただきありがとうございます。


遂に離婚が成立しましたね。

何気に本山弁護士が豪腕でした。


次回も読んでいただけると嬉しいです。

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