第17話 浮気夫の凋落 2
♤東 伸吾 Side ♤
真希との協議も俺が頑なに情報の開示を拒否したため、真希側からみたら不調に終わった。
「なんだ、ゴネたらこんなに簡単にいくのか……これがゴネ得というやつか?」
あの弁護士も梢相手には強気で当たっていたが、俺が相手になると急に弱腰になりやがった。
事後の気怠さを感じながらベッドから降りて独り言ちると、あられもないかっこうで息を整えていた梢が、
「上手くまとめてくださいよ?残ったお金で私達結婚するんですからね!」
「任せろ!あんな腰抜けとチョロ女どうとでもしてやる!だから景気付けにもう1回だ!」
ベッドへダイブする、
「やーん!もう主任ってばぁ……アン」
1週間後に再度行われた協議には、真希は出てこなかった。あいつなに大物ぶってるんだ?
前回同様に向こうの開示要求を全て拒否してやったうえについでに慰謝料の支払いも拒否してやったら、次回の協議の日程だけ決めてスゴスゴと帰っていきやがった。
気分を良くして会社に出勤、いつものようにメールチェックをする。始業時間になった途端に業務用のスマホに着信……部長からだった。
「はいお疲れ様です、東です。はい、はい会議室ですね。はい、今からすぐ参ります」
いきなりの呼び出し?なんかしたかな……覚えがないな?
「失礼します」
「東くんご苦労、座り給え」
えらく高圧的だな?あまり良い話題ではないらしい……
「君に来てもらったのは、こういう物が送られてきたからだ」
「拝見します」
眼の前に出されたものに目を通す。
「「弁護士法23条の2に基づくご照会」ですか……これがなにか?」
弁護士?なんか嫌な予感がするな……
「それは端的に言うと君の情報を寄越せと言ってきてる」
「私の情報ですか?」
「そうだ、君の約2年間の給与明細及び給与の振込先の情報だ」
「なんですって……あの……これを拒否することは?」
「基本この照会がなされたら公開するのが義務になる」
あの弁護士の野郎こんな隠し玉用意してやがった!
「基本ということは拒否することもあるんですよね?」
ここに一縷の望みを掛けてみるしかない……
「そのケースもあるにはある。今回は求めに応じる事になると思うがな?」
「そんな……」
なんてこった守ってもらえないのか……
「なぜなのかは、これの照会理由にある」
「理由ですか?」
「そうだ、「東 伸吾氏の不貞行為に伴う慰謝料算定、同氏と妻 真希の離婚協議における婚姻費用及び財産分与算定のため」だそうだ。君は不貞行為をしたのかね?」
部長は苦虫を噛み潰したような顔をしたまま、笑顔になるという離れ業を演じてくれている。
俺は眼の前が真っ暗になるもなんとか踏みとどまり、この窮地を乗り切るために頭を働かせる。
あの弁護士野郎!全部バラしやがった!!
駄目だあの弁護士に対する恨みつらみしか出てこない……
「いえそんな事は!」
「ないのだな?ならば照会は拒否し、その弁護士に対して名誉毀損で損害賠償請求をしなければな?」
そんな事しても勝てるわけがない……
「いえそんな事は……」
「なんだね……不貞行為は有ったのかね?無かったのかね?」
「……有りました」
認めざるを得ない……
「そうか……相手は?まさか社内の人間ではなかろうな?」
「事務の敷田 梢です」
「はぁ……君も上を目指してたのなら少しは考えて行動し給え。この会社で不倫をするとは、しかも社内の人間相手に……」
うん?なんか今の言い回し気になるな……
「あの……どういうことでしょう?」
「君の係長昇進、あれね今流れたから」
「はい?」
「今回の件で君の人事部内での覚えもめでたくなってな?ウチの会社がそういう事に厳しいのは知っているだろう?今君の昇進取りやめが確定した」
「そんな……」
俺の昇進が未来がパァ?嘘だろ?
「もちろん異議申し立てする権利が君にはある……お勧めはしないがね?」
「はあ……」
「うん頭が働かないか……無理もない……ゆっくり考えて、上を目指すならまた下から這い上がって来るんだね?」
なんだよ?まだなんか有るのかよ?
「まだなにか?」
「分からないかね?まあ今はさすがに察しろと言うのは酷か……君の降格が決まった。これは決定事項だ」
「なんですって!?今回の件で昇進取りやめの上降格処分と言うのは厳しすぎませんか?」
「ああ、勘違いしないように。昇進が流れた事と降格処分は別だから。君も結構無茶してたようだね?下請けと子会社、あと不正規の社員から連名でパワハラの訴えが来てるよ?」
あの底辺どもか!群れたからってイキりやがって!
「どうも君は勘違いしてるみたいだな?私達が上を向いていられるのも、彼らが下から支えてくれているからなんだよ?まあ君には分からないかな……」
部長がなにか言ってるが頭に入ってこない。
つまり、俺は昇進が流れたうえに降格してヒラになって、さらにパワハラと不倫で人事に目を付けられたと?そのうえ、給与明細を見られるということは、第2口座もバレるから「財産分与」と「婚姻費用」をガッポリ持っていかれるという事か?
なんでだ!俺がなにか悪い事したか?ちょっと女と遊んで、底辺どもにしっかりと仕事をさせただけじゃないか……
それだけのことでここまでの報いを受けなきゃならないのかよ?
◇◆◇◆
お読みいただきありがとうございます。
伸吾くんが実績を上げることが出来た理由です。下請けや子会社、非正規社員を使い潰してました……
しかし天罰覿面ですね!
本編に絡むことでここまで筆がノッたのは初めてかもです。
もうひと山ありますのでお楽しみに!
次回も読んでいただけると嬉しいです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます