第16話 協議
日曜日、伸吾と離婚の協議をする日……
弁護士事務所へ向かう前に、誠のお見舞いのために病院へ向かう。
「いよいよ今日だな?」
「うん、この後行ってくる」
「俺はこのあと退院でなにも出来ないけどがんばれ」
誠が勇気付けてくれる。ありきたりな言葉なのになぜこんなに元気が出るんだろうね?
「この件が片付いたらまた食事に行きましょう?」
「ああ、そうだな」
「じゃあ行ってくるね」
弁護士事務所に到着して相談室に通されると、そこには伸吾と浮気相手の敷田さんがすでに居た。
「真希……」
「この人が奥さん?へぇ綺麗な人じゃない」
ちょっと憮然とした伸吾と、何故か感心した様子の浮気相手。やっぱりこの娘声もかわいいわね。
「真希、いい加減に帰ってこい。今なら家事を放棄したことも不問にしてやるから」
「はあ?何言ってんの、置手紙見てないの?本山弁護士の話聞いてないの?」
「見たし、聞いた。反省している。これでいいだろ帰ってこい」
「はあ……話にならない……」
「伸吾さん、もういいじゃない。こんなに反省してる伸吾さんを見てもなんとも思わない奥さんなんかとは別れたら?」
どこが反省してんのよ!と言い返しそうになったとき、
「敷田さん、離婚の話は真希さんと伸吾さんで話し合う事です。まずお二人に関する慰謝料の話をさせていただいてもよろしいでしょうか?」
本山さんがたしなめ慰謝料の話が始まった。
「これって伸吾さんと奥さんの話で私は関係ないと思うんですけど?」
「これはあなたと伸吾さんが行った不貞行為で受けた、真希さんの精神的苦痛に対する損害賠償です」
「伸吾さんのこと最初は既婚者とは知らなかったもん、付き合い始めて知ったんだから私は被害者ですよね?」
「既婚者と途中から知っても関係を続けていますので、この場合は加害者という事になります」
などなど、敷田さんの言い訳?を淡々と論破する本山弁護士。伸吾はあいかわらず憮然とした表情で無言を貫いている。もう言い訳も尽きたのか、ちょっと不機嫌になって黙り込む敷田さん。
慰謝料の話はこの後スムーズに進みこちらが提示した額で双方了承。その際の敷田さんの弁、
「まあこの程度なら奥さんへの手切れ金だと思って出しますよ〜」
負け惜しみですか〜お疲れ様ですぅ〜
まあ話は済んだのでご退場いただいて、こっからは離婚の協議を始めましょうか?
「真希、本気で離婚する気か?」
「さっきからそう言ってるじゃない……あなたをもう信じられないから」
「浮気しただけでか?」
「だけですって?それだけでも十分よ」
そんなふうに考えていたなんて、分かってたけどやっぱりもう無理だ……こんなに考え方が違ってしまっていたなんて。ていうか、第2口座のことはこの期に及んでも黙ってる気なんだね。
協議に入って「婚姻費用分担」「財産分与」の話をしようにも、銀行口座と給与明細、源泉徴収票の開示を伸吾がひたすら拒否するため、協議にならず日を改めて再度協議することになった。
帰り際の伸吾のニヤニヤした顔が癪に障る。
「やっぱり先生がおっしゃる通り開示を拒否しましたね」
「ですね、では以前申しました通り「弁護士会照会制度」を申請しましょう」
「はい、お願いします。それで、期間的にはどのくらいかかるものなんですか?」
「そうですね……申請後だいたい1週間ほどで照会先、今回はご主人のお勤め先に届きます。そこから回答があるのは、概ね1ヶ月ほどとお考えいただければ大丈夫かと思います」
それだとすぐには決着しない感じなんだ……
「なので、制度を利用しながら協議も重ねて開示を働きかけましょう。こちらは私の方で進めておきます。東さんには開示されたらまたお立ち会いいただくことになるかと思います」
「はい、ではよろしくお願いします」
伸吾……往生際が悪いわね……でも次に会うときは決着をつけるわ!
◇◆◇◆
お読みいただきありがとうございます。
協議が始まりました。
伸吾くんが意地悪するので、真希側もいろいろ頑張ります。
次回も読んでいただけると嬉しいです。
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