第14話 移ろう心


 母さんからの電話を切って、取るものもとりあえず聞いていた病院に急いだ。

受付で病室を聞き急ぎ足で急行した私を出迎えたのは、スマホゲームをピコピコしてる誠だった。ってどゆこと?


「あれ、真希?どうしたそんなに慌てて」


「誠……あんた大丈夫なの?」


「ああ、情けない話だけど盲腸だった……いやーなんか昨日から腹がムカムカしてて、今日の朝くらいからそれが痛みに変わってたから嫌な予感してたんだわ」


「盲腸……良かった……馬鹿!倒れたって聞いたから危ない病気かと思ったのよ?」


「そりゃあ悪かったな。とりあえず2〜3日の入院だってさ。てかおばさんには盲腸だろうって言っといたぞ?」


 え?聞いてないんですけど?……あー!母さん謀ったわね!


「はぁ~もう!それで入院の手続きとか終わったの?」


「いやまだだけど」


「やっといてあげるから。あと部屋の鍵貸して、荷物持ってきてあげる」


 どうせ暇だしそれぐらいは今までのお礼も兼ねてやってあげたい……いえ!やってあげたい、じゃなくてやってあげるだから!


「そうか?なら頼んでいいか?ありがとな」


 ニヘラッと笑う誠が可愛くてちょっとキュンとしてしまう。ってさっきから私なんか変よ……そう吊り橋効果!安心して吊り橋効果で変になってるだけだから!





「なんかおかしいわよ私……病院に駆けつけるわ入院手続きやってあげたり、荷物まで準備してあげるとか。わたしゃあいつの彼女か嫁さんか?」


 誠の部屋でバッグに着替え等を突っ込みながら、自分の行動にもツッコむ。

 しかも言った言葉に自分で赤面してるし……


「みどりが余計な事言うから意識しちゃうのよ!」


 ここに居ないみどりのせいにして気持ちを切り替える、まだ浮かれちゃ駄目!伸吾との話し合いも終わってないんだから。

 

 はぁ~誠も待ってるだろうし病院に戻ろう……






◇ 結城 誠 Side ◇


 なんか真希が優しいんですけど……


 おばさんに知らされて病院に駆け付けてくれた真希が、俺の無事を心底喜んでくれたように見えた。

 入院手続きをやってくれ、わざわざ荷物を取りに行ってその後も甲斐甲斐しく世話をやいてくれる。


 え?もしかして盲腸って嘘で不治の病だったりする?


「すまねぇな迷惑かけて……」


「おとっつぁんそれは言わない約束よ?」


 やっぱりだ!こんなサムいノリに乗っかってくれるなんて重病患者への憐れみ以外にはありえない!

 ほらぁ、真希も恥ずかしさで真っ赤になってるじゃんか!


「真希よ」


「なによ?」


「俺は死ぬのか?」


「は?」


「だってさお前やたら世話してくれるし、さっきの笑顔なんかすげぇ優しくて綺麗だし、あんなもん死者への手向け以外にありえないだろ!」


「なに言ってんのよ、というか笑顔が綺麗ってホントになに言ってんのよバカ……」


 なに照れてんだこいつ?本題はそこじゃないんだよな〜、俺の寿命なんだよ本題は……


「で?俺はいつまで生きられる?」


「さあ?70くらいまで生きるんじゃない?」


「せめて平均寿命まで生きさせて?」


 厚生労働省の発表では、令和4年の男の平均寿命は81.05歳である。


「さっきからなにバカなこと言ってんのよ?」


「いや〜割とマジで心配してるんだけどな……お前さ今俺のところに居て良いのかよ?」


「居ちゃ迷惑?」


「バーカ、ありがたいさ。でも今はお前の人生がかかってる。迷惑はかけたくない」


「迷惑じゃないなら居させてよ……なんでかしらね?あんたの側だと落ち着くのよ」


 うわぁ、そんな顔されたら断れねぇ。それとさっきから扉の影でニヤニヤしてる人居るし……


「おばさん、いい加減入ってきてよ……」





◆ 東 真希 Side ◆


「おばさん、いい加減入ってきてよ……」


母さん来てんの?


「いや~ね!バレてた?なんかいい雰囲気だから入りづらかったのよ!」


「母さん!なんて嘘つくのよ!」


「母さん嘘ついてないよ?誠くんが倒れたのはホントだし〜、ただ盲腸って言ってないだけだもん!」


言うに事欠いてこのオバはん……


「なにが「もん」よ!いい歳して!でなんの用よ?」


「そうそう、本山弁護士さんから連絡有ったわよ?なんかあんたに繋がらないって」


「あっホントだ、マナーモードにしてて気付かなかった……それで本山さんなんて?」


 ありゃりゃ不味いなぁ、この大事なときに誠の前だからって気を抜いちゃ駄目じゃないの……


「あんたと伸吾くんとの面談日が決まったって、問題なかったらその日にするけどってさ」


「それっていつ?」


「今度の日曜日だから3日後だね」


「分かった問題ないからその日にする。今から電話してくる。誠……ちょっと行ってくるね?」


「おう、がんばれ」


「うん」


「あらあら、まあまあ。もう!甘酸っぱいわね〜」


「母さん!うるさいわね!」



 本山弁護士の話では弁護士事務所での協議になるとのこと、その際には浮気相手の敷田 梢も同席するとか。

 あの可愛らしい顔をまた見なきゃいけないのかぁ〜、結構コンプレックスなんだけどなぁ。






◇◆◇◆


お読みいただきありがとうございます。


殆ど話が進んでない字数制限あるのに……

でもこの話は入れなきゃだし……


次回も読んでいただけると嬉しいです。




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