第10話 疑惑が確信に

 前方に誠を発見、向こうも私を見つけたみたいで小さく手を挙げて知らせてくれる。


「おはよう誠、それで伸吾は?」


「喫茶店に入った、相手はまだ来てないな」


 今日はスーツのままで着替えてない。というか前回はどこで着替えたのかしら?まさか女の家に着替え置いてるの?


「東さん良いスーツ着てんなぁ」


「そりゃそーよ、貯金おろして買ったスーツだもん!せっかくマイホーム貯金したのに……スーツ貯金じゃないのに……」


 買うなら第2口座のお金で買いなさいよ!私はユ◯クロなのに〜


「あれ?あの娘、敷田さん?」


 誠が喫茶店の方に向かって歩いている女の子の方を見ながら呟く。


「凄く可愛らしい娘ね?あんた知り合い?」


「まあ同僚だな……主任とやたら仲悪い」


 その娘、敷田さん?は喫茶店に入ると迷わず伸吾の座っているテーブルへ向かい笑顔で手を振っている。


「めっちゃ笑顔で伸吾のテーブルに座ったんだけど?」


「あんな顔主任に見せたことねーぞ?どゆこと?」


「まさかあの娘が浮気相手?みどりも可愛らしい娘って言ってたし、髪型もあの写真と同じだし」


「会社ではメチャ仲悪いんだけど……まさかカモフラージュ?」


 少なくとも今見た印象は仲のいいカップルのそれ、ってムカつくわね……でも、あの娘すっごい可愛い笑顔でおしゃべりしてるし?多分伸吾も同じような感じだろうし。そうとしか見えないじゃない……

 服も凄くオシャレよね……伸吾のスーツとつり合うくらい。私はユニ○ロなのに……


「おい、真希?大丈夫か?おいって」


「はっ……ゴメン聞いてなかった……なに?」


「いや、大丈夫か?なんだったら俺が尾行するからお前は帰るか?」


 心配そうに誠が私を見てるから、ちょっと挫けそうになる……でも負けるもんか。


「大丈夫、ここまで来たんだから最後まで行くわよ」


「そうか……あっ出てきた」


 喫茶店からふたりが出てくる、まるで恋人同士のように腕を組みながら私達とは反対方向に歩き出す。


 私達は頷き合って後を尾ける。素人尾行でいつバレるかヒヤヒヤしながら着いていくと、ふたりはやたらケバケバしい一角へ入っていく。


「あーこれは確定で良いんじゃないか?」


「まだよ、入るまで見るわ……」


 ただ通り抜けるだけかもしれないわ。というかそうであって、お願いよ伸吾!

 でもその私の祈りも虚しくふたりはやたら可愛らしい建物に入っていった……

 

「真希……大丈夫かって、大丈夫なわけねーか。スマン」


「大丈夫よ?それで誠、1つお願いが有るんだけど」


「なんだ?」


「ホテルに一緒に入ってくれない?」


「は?なに言ってんだお前は?」


「だから一緒にホテルに入ってくれない?」


「内容を繰り返せと言ってるわけじゃねぇよ!とち狂って馬鹿な事言ってんじゃねぇ!!」


 失礼ね私は冷静よ?冷静にあんたに抱かれようと思ったのよ。


「女に恥かかすんじゃないわよ……こんなユニク○着てる女じゃ嫌かもしれないけど抱いてよ……」


「どうしたよ?いくらショックだったからって自暴自棄になるな」


「なによ私はそんなに魅力が無いっていうの?」


「そうは言って無いだろ。だけどそんなので良いのかよ……」


そんなのってなによ?


「お前はいい女だよ。そんなお前を蔑ろにして好き放題しまくってる、あいつと同じような事して良いのかよ?」


「そんな……いい女なんて、照れるわ……」


「今の本題はそれじゃねぇよ!あいつと同じ穴の狢になりたいのかってことだ!」


「同じ穴の狢?」


「そうだ!こんなに出来た嫁がいるのに、他の女に手を出すような男と同じような不貞を働くのか!?」


出来た嫁って……さっきから何なのこいつ口説いてんの?


「ならどうしろってのよ……」


「復讐するんだろ?」


「復讐?」


「そうだ復讐!お前自分で言ってたじゃないか、やろうぜ!しかも合法的にだ。お前さすがにもう離婚する気だよな?」


「そりゃあもう無理だよ。これは許せない……」


「なら、あいつから奪えるもんは全部奪おう」


「全部?」


「そう全部、金、地位、名誉、将来」

「まず金、あいつには第2口座の件の恨みもあるから取れるだけ取る」    

「次に地位、実はあいつは昇進が内々で決まってる」


「えっ?聞いてない……」


「やっぱりな、とことん舐めてんなあいつは……係長に昇進するんだ。だけど、自分の浮気で離婚となったら、うちの会社ならほぼ間違いなく取りやめになる。下手したら左遷だな」

「そんで名誉、まあ浮気男のレッテルは会社内での名誉を傷つけるよなぁ?しかも相手が社内の女だ」

「最後に将来、ぶっちゃけ出世コースからは外れる。それにさっきも言ったが左遷もありえる。それに耐えられるメンタルを持ってるとは思えないから、もしかしたら退職も考えられる」


「ゴクン」


「そこまで……やれるか?」


「やるわよ!私は妻としても女としても尊厳を踏みにじられたのよ?許せるわけない!」


 私の愛を、二人の夢だと思っていたものを、全て踏みにじったあいつから逆に全てを奪ってやる。


やってやるわ。









◇◆◇◆


お読みいただきありがとうございます。


真希さんが全てを知りました。

そして手駒2が復讐のパートナーに繰り上がりました。

ここから復讐の準備が始まります。


次回も読んでいただけると嬉しいです。 



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