第7話 許せないなぁ 2


「ふたりともお願いがあるの……聞いてくれる?」


「そうくると思ったよ……」


「なになに?」


 第2口座の件だけでも、妻である私に対するはっきりとした裏切り行為だと思う。

 

「私はもう伸吾を信じることが出来ないわ……多分離婚することになると思うの。だけど、このまま泣き寝入りなんて絶対に嫌よ!復讐したいの……手伝って頂戴?」


 結婚してから私は伸吾と力を合わせて頑張っていると信じて生きて来たのよ?そのまごころを踏みにじられた……とうてい許せるものではない。


「東主任のやった事はさすがにやり過ぎだ。まさか半分以上も懐に入れて、嫁さんに残りの金で生活させてたなんて。しかもそこから小遣いまで貰うか普通?なに考えてるんだ、あの人は!」


「誠……」


「復讐って犯罪は嫌だよ?てか、さすがにあの給料は少ないって疑わなきゃ」


「みどり……あんたって子は」


空気くらい読みなさいよ……


「俺は全面的に手伝うよ。なにさせる気だ?」


「私は……どうしよう?まあできる範囲で?」


「みどり、あんた手伝うって言ったじゃない」


誠を紹介したでしょうが!自己紹介だったけど……


「手伝わないとは言ってないじゃない、でもまあ出来る範囲でね?」


「まったくこの子は適当なんだから……」


まあいいや、やってもらう事もそんなに多くないし。


「誠にやって欲しいことは、伸吾の状況報告と給料明細の確保よ。一番は有給を使うタイミングが分かったら教えてほしいの。それと伸吾の給料明細を確保して欲しいかな。出来そう?」


「報告の方は余裕。明細の方はやってみるけど職務規定に引っかからないかな?てか犯罪じゃね?なので当てにしないでくれ……」


 協力者に危ない橋を渡らせるのは気が引けるから、無理はさせたくないかな?


「報告だけでもありがたいから大丈夫!浮気が確定したら興信所と弁護士にでも依頼して証拠集めて裁判よ!」


「分かった、あとなにか気になることとか有ったら随時連絡入れるわ」


「お願いね?あとみどり!」


「はい……もう最初っから興信所で良くない?」


「お金かかるんだから確信が欲しいのよ!」


「せこいなぁ。それで、私はなにするの?」


一言余計よ!


「誠から報告が有ったらその日に伸吾の追跡をして欲しいの。そして相手の写真とかなんか決定的なやつ撮ってきて!」


「なんかフワッとした指示ね?」


「なに言ってんのみどりの役割が大切なのよ?あんたの働きにかかってるんだからね?」 


 この子が決定的な写真を撮ってきてくれたら、興信所代が浮くかもしれないしメチャ大事!


「まあそれくらいならやるけど。真希はなにすんの?」


 よくぞ聞いてくれました!いっちばん大事なお仕事をしますよ!


「私は普段通りの生活を送るわ!」


「はい?なによそれ?」


「だから、普段通りの生活よ。私達が何かに勘付いてるってバレないように、普段通りの生活を送るの!大変なことだと思うのよ?絶大な演技力が求められるわ。それに気持ちが離れた相手と一緒に生活しなきゃいけないのよ?多大なストレスを抱えるかもしれないわ。でも私負けない!全ては復讐のためによ!それにこの仕事は私しか出来ないから仕方ないのよ……」


 ここまで一気にまくし立てた。その勢いに呑まれたみどりは、


「は、はぁ……頑張って?」


 と呆けてしまったようね?チョロいわね、大丈夫かしらこの子。変なオトコに引っかからないかしらってもう遅いか……


「ということで二人ともよろしくね!」





◇◆◇◆


お読みいただきありがとうございます。


真希さんは手駒2を手に入れました。

なんだかんだ言ってもまだ心のどこかで、伸吾くんを信じたい心が有るんでしょう。だから決定的な何かを欲しがってるって感じですかね?


次回も読んでいただけると嬉しいです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る